31 / 50
元魔王は食堂を光で包む。
しおりを挟む
お昼の食堂にて――
「ルインさま、お隣いいですか?」
「やぁルイン。隣いい?」
「構わないぞ」
ぼくの右隣にフィリアが、左隣にラフィが座る。
二人が座ると同時に、周囲がざわめいた。
うむ。フィリア派、ラフィ派から嫉妬の炎がひしひしと伝わって来るな。
なんとも心地よい。
さて本日の給食は。
・ふわとろ卵のオムライス。
・大神殿裏の畑で採れた新鮮野菜の生サラダ。
・一本角ラビットのピカタ。
ここに来て一年以上になるが、相変わらず昼から豪華だ。
村でもこれぐらいの食事が出来るようになれば、みな幸せになれるのだろうな。
「いただきます」
「「いただきます」」
ぼくが手を合わせそう言うと、フィリアとラフィも同じように手を合わる。
が、食事に手を付ける前に、それを妨害する輩が現れた。
「そこ。邪魔ですわ」
「ふにゃっ!?」
左隣のラフィの椅子が突然引かれる。その拍子に彼女は後ろに倒れ――そうになるのを、ぼくが自分の方へと引き支えてやる。
「大丈夫かラフィ」
「う、うん。平気。あ、ありがとうルイン」
引かれた椅子を見ると、それを持っていたのはデリントン!
彼はぼくと目を合わせたくないのか、不自然なまでに明後日の方角を見ている。
「そこは私の席でしてやラフィさん」
「は? 食堂は誰が何処に座るかなんて、決まってないし」
「お黙りなさい。私が何処へ座るかは決まっていますの」
「……ルインの隣に座りたいなら、そう言えばいいじゃんか!」
「まぁ! 私がこの男の隣に座りたいですって? 違いますわよ。この男が私の隣に座りたがっているのです!」
何故そうなる?
「ふ、二人とも喧嘩は止めようよ。ラフィ、私の席に座って。ね? 私はルインさまのお向いに座るから」
「でもフィリア……」
「ね? せっかくルインさまとのお食事なのに、五月蠅くしたらルインさまに申し訳ないもの」
「賑やかなのは好きだが、確かに五月蠅いのは嫌だ。あとぼくはお前の隣に座りたいなんて一言も言ってない」
マリアロゼに反論したが、この女は聞いていないようだ。
何食わぬ顔でぼくの隣に腰を下ろし、デリントンが甲斐甲斐しく椅子を押す。
それから逃げるようにして食堂を出て行った。
彼の額に冷や汗が大量に浮かんでいたのは、ぼくに対する恐怖心が残っているからだろう。
だが思ったほど軽度のようだ。
「ふふふん。ルイン・アルファート。お前は南の辺境領主、アルファート男爵の次男でしたわね」
「それがどうした?」
「あなた。聖職者を目指しているのですって?」
「最強のスローライフを実現するためにな」
「さ、さいきょう? スローライフというのは、のんびりド田舎で暮らす的なものでしょう? え? どうして最強?」
ふん。その程度の事も分からないのか。
スローライフを送る為に邪魔になるもの共を、根こそぎ駆除するためだ。
「よ、よく分かりませんが、とにかく私の力で直ぐにでも聖職者にして差し上げてよ」
「は? お前の力?」
「えぇ。私、次期聖女に決まっていますもの」
椅子から立ち上がり、右手は口元、左手は腰に。そして高らかに笑いだす。
いつの間にやら出てきたデリントンが、女の座る椅子をタイミングよく引いたのは見事だと言ってやろう。
マリアロゼが高笑いを終えると、さっと椅子を差し出し、そして押す。
で、脱兎のごとく逃げる――と。
なんなんだあの男は。
が、それはそれ。
「お前、聖女にはなれないぞ」
「は? 何を仰っていますの。私、聖属性3ですわよ」
「本気でそう思っているのか?」
俺はマリアロゼの黒い瞳を正面から見つめ問う。
「なっ……なんですの? 何を言っているのかしら」
「ふん……しらばっくれるならそれでもいい。後々惨めな思いをするのは貴様だからな」
「そ、それはどうかしらね。だいたい貴方のほうこそ、治癒魔法すら使えないんじゃなかったかしら? 落ちこぼれ――そうなのでしょう?」
「な!? 何故それを――デリントンか!!」
得意げににやりと笑ったマリアロゼは、オムライスを一口ぱくり。
「あら。美味しいですわね。ま、それはそれとして。治癒魔法すら使えない貴方が、誰の後ろ盾も無しに聖職者――神官になれるとお思い?」
勝ち誇ったような顔。
何故だろう。
ぼく――私の下にやって来た勇者一行も、だいたいあんな顔をしていた。
そしてワンパンで私にやられていたわけだが。
流石にここでワンパンはしないが……ならば。
「ふっ。ぼくをいつまでも治癒魔法の使えない落ちこぼれと思いなよ」
「なんですってっ」
下級魔法は使えない。
だがぼくは下級ではない治癒魔法を知っている。
先ほど見たばかりだ。
「"善き者を癒し――」
クリフドー師匠から学んだのは攻撃系とサポート系のみ。
闇が聖を妨害する。
「邪悪を退ける白き――」
ここで失敗するのは恰好が付かないな。
ならばしっかり魔力を練ろう。
しっかり――がっつり――くくく。くははははははは。
「――聖域《サンクチュアリ》"」
椅子に座ったまま手を掲げ、光が収束して行くのを感じる。
集まった光を解放し、床に展開――
「まぶっ」
「きゃぁっ何!?」
「目があぁぁ、目があぁぁっ!」
「うわあぁっ」
「またなのおぉ!?」
食堂内に光が満ち、床一面に聖域を示す魔法陣が描かれた。
ふむ。ちょっと魔力を練り過ぎたか?
これでは食堂のある建物をすっぽり覆う範囲だな。
「ルインさま、お隣いいですか?」
「やぁルイン。隣いい?」
「構わないぞ」
ぼくの右隣にフィリアが、左隣にラフィが座る。
二人が座ると同時に、周囲がざわめいた。
うむ。フィリア派、ラフィ派から嫉妬の炎がひしひしと伝わって来るな。
なんとも心地よい。
さて本日の給食は。
・ふわとろ卵のオムライス。
・大神殿裏の畑で採れた新鮮野菜の生サラダ。
・一本角ラビットのピカタ。
ここに来て一年以上になるが、相変わらず昼から豪華だ。
村でもこれぐらいの食事が出来るようになれば、みな幸せになれるのだろうな。
「いただきます」
「「いただきます」」
ぼくが手を合わせそう言うと、フィリアとラフィも同じように手を合わる。
が、食事に手を付ける前に、それを妨害する輩が現れた。
「そこ。邪魔ですわ」
「ふにゃっ!?」
左隣のラフィの椅子が突然引かれる。その拍子に彼女は後ろに倒れ――そうになるのを、ぼくが自分の方へと引き支えてやる。
「大丈夫かラフィ」
「う、うん。平気。あ、ありがとうルイン」
引かれた椅子を見ると、それを持っていたのはデリントン!
彼はぼくと目を合わせたくないのか、不自然なまでに明後日の方角を見ている。
「そこは私の席でしてやラフィさん」
「は? 食堂は誰が何処に座るかなんて、決まってないし」
「お黙りなさい。私が何処へ座るかは決まっていますの」
「……ルインの隣に座りたいなら、そう言えばいいじゃんか!」
「まぁ! 私がこの男の隣に座りたいですって? 違いますわよ。この男が私の隣に座りたがっているのです!」
何故そうなる?
「ふ、二人とも喧嘩は止めようよ。ラフィ、私の席に座って。ね? 私はルインさまのお向いに座るから」
「でもフィリア……」
「ね? せっかくルインさまとのお食事なのに、五月蠅くしたらルインさまに申し訳ないもの」
「賑やかなのは好きだが、確かに五月蠅いのは嫌だ。あとぼくはお前の隣に座りたいなんて一言も言ってない」
マリアロゼに反論したが、この女は聞いていないようだ。
何食わぬ顔でぼくの隣に腰を下ろし、デリントンが甲斐甲斐しく椅子を押す。
それから逃げるようにして食堂を出て行った。
彼の額に冷や汗が大量に浮かんでいたのは、ぼくに対する恐怖心が残っているからだろう。
だが思ったほど軽度のようだ。
「ふふふん。ルイン・アルファート。お前は南の辺境領主、アルファート男爵の次男でしたわね」
「それがどうした?」
「あなた。聖職者を目指しているのですって?」
「最強のスローライフを実現するためにな」
「さ、さいきょう? スローライフというのは、のんびりド田舎で暮らす的なものでしょう? え? どうして最強?」
ふん。その程度の事も分からないのか。
スローライフを送る為に邪魔になるもの共を、根こそぎ駆除するためだ。
「よ、よく分かりませんが、とにかく私の力で直ぐにでも聖職者にして差し上げてよ」
「は? お前の力?」
「えぇ。私、次期聖女に決まっていますもの」
椅子から立ち上がり、右手は口元、左手は腰に。そして高らかに笑いだす。
いつの間にやら出てきたデリントンが、女の座る椅子をタイミングよく引いたのは見事だと言ってやろう。
マリアロゼが高笑いを終えると、さっと椅子を差し出し、そして押す。
で、脱兎のごとく逃げる――と。
なんなんだあの男は。
が、それはそれ。
「お前、聖女にはなれないぞ」
「は? 何を仰っていますの。私、聖属性3ですわよ」
「本気でそう思っているのか?」
俺はマリアロゼの黒い瞳を正面から見つめ問う。
「なっ……なんですの? 何を言っているのかしら」
「ふん……しらばっくれるならそれでもいい。後々惨めな思いをするのは貴様だからな」
「そ、それはどうかしらね。だいたい貴方のほうこそ、治癒魔法すら使えないんじゃなかったかしら? 落ちこぼれ――そうなのでしょう?」
「な!? 何故それを――デリントンか!!」
得意げににやりと笑ったマリアロゼは、オムライスを一口ぱくり。
「あら。美味しいですわね。ま、それはそれとして。治癒魔法すら使えない貴方が、誰の後ろ盾も無しに聖職者――神官になれるとお思い?」
勝ち誇ったような顔。
何故だろう。
ぼく――私の下にやって来た勇者一行も、だいたいあんな顔をしていた。
そしてワンパンで私にやられていたわけだが。
流石にここでワンパンはしないが……ならば。
「ふっ。ぼくをいつまでも治癒魔法の使えない落ちこぼれと思いなよ」
「なんですってっ」
下級魔法は使えない。
だがぼくは下級ではない治癒魔法を知っている。
先ほど見たばかりだ。
「"善き者を癒し――」
クリフドー師匠から学んだのは攻撃系とサポート系のみ。
闇が聖を妨害する。
「邪悪を退ける白き――」
ここで失敗するのは恰好が付かないな。
ならばしっかり魔力を練ろう。
しっかり――がっつり――くくく。くははははははは。
「――聖域《サンクチュアリ》"」
椅子に座ったまま手を掲げ、光が収束して行くのを感じる。
集まった光を解放し、床に展開――
「まぶっ」
「きゃぁっ何!?」
「目があぁぁ、目があぁぁっ!」
「うわあぁっ」
「またなのおぉ!?」
食堂内に光が満ち、床一面に聖域を示す魔法陣が描かれた。
ふむ。ちょっと魔力を練り過ぎたか?
これでは食堂のある建物をすっぽり覆う範囲だな。
1
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!
カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。
その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。
「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」
次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。
彼女は知っている。
このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。
未来を変えるため、アメリアは
冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。
これは、かつて守れなかった主人のための転生。
そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。
王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
挿絵はA I画像を使用
10/20 第一章完結
12/20 第二章完結
2/16 第三章完結
他サイト掲載
(小説家になろう、Caita)
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる