器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔

文字の大きさ
34 / 41

34:こっそりステータス弄り

しおりを挟む
「はぁ……覗き窓越しからだと、やっぱり魔法攻撃出来ないのか」
「そりゃそうだろ。キリク、フロイさん手伝ってください。すこーしだけ扉開けるんで、念のため俺たち三人で抑えましょう」
「分かった」

 俺のプチ・ファイアストームで、扉前のモンスターを焼き払う。
 一発じゃ倒しきれないが、ここには他の魔法職もいる。彼らの範囲魔法も加わって、扉の前は確実に清掃が完了。

「行くぞ!」
「"プチ・ロックウォール"!」

 扉の前は、正面と左右に通路が続いている。
 三方向から攻められたら耐えられない。だから左側の通路をスキルで塞ぎ、正面、そして右側の通路にいるモンスターに全力攻撃をする。

「「"シールド・ディフェンス"」」
「"ビルドアップ"!」

 ジンさんやフロイさん、安全地帯にいた他のパーティーの戦士も、防御スタイルだ。
 ジンさんのパーティーメンバーであるキリクさんは、アタッカースタイルなんだな。

 ユニークモンスターだと思われる奴は、正面の通路の先にいる。
 こっちで騒ぎを起こせば、音に釣られてやってくるかもしれない。
 ただその道には他のモンスターが大量にいて、そいつらを倒さなきゃ奴もこっちへは来れない。

 だから俺たちは、奴の方から来て貰うために安全地帯付近のモンスターを倒す。

「ひけっ。限界だ!」

 フロイさんの号令で、後衛から順に安全地帯へと飛び込んだ。

「"プチ・ロックウォール"!」

 左の壁に追加を加え、逃げる時間を稼ぐ。ついでに正面のやや奥にプチ・ファイアストームだ。
 正面左右。一か所でも崩れれば、一瞬にして俺たちは死ぬ。
 背後に安全地帯があるんだ。無理して止まる必要はない。

「はぁ……安全地帯の中でずっと攻撃出来れば、スタンピード潰しも楽なのになぁ」
「全くだ」

 全員が無事に中へと入ると、一息つく。
 体力もそうだけど、精神的にかなりくるな。

「でも安全地帯からずっと攻撃していたら、モンスターが引き返し始めたからこうするしかないですし」
「安全地帯からのずる防止が、スタンピード中でもしっかり生きてるってなんだよまったく」
「にゃびちゃ~ん。肉球マッサージ頂戴ぃ」
「……おいにゃ、マッサージ店でも経営するにゃかねぇ」

 おいおい、お前には何か目的があったんじゃないのか?

 安全地帯から魔法で殲滅し続けられればよかったのだけれど、ダメだった。
 扉の前のモンスターを殲滅すると、後続が前進してくる。それをまた殲滅すると、後続が前進してくる。そいつらをまた殲滅すると……前進して来なくなった。
 回れ右してしまったので、慌てて部屋を出て、奴らを呼び寄せないと行けなくなったんだ。
 しかも次からは、最初の一発目のあとには回れ右するようになってしまったから出ていくしかない。

 何度も何度も繰り返し、そのたびに休憩を挟んだ。

 厄介なのは、倒した傍から湧いてくるモンスターだ。
 順番待ちの最後尾に湧いてくれれば問題はないが、割り込みで湧く奴もいる。
 十倒しても、結果的に捌けたのはその半分ぐらい。
 なかなかユニークモンスターの姿は見えなかった。

「でも続けるしかない」
「そうだな。どちらにしろ我々がここから脱出する手段はないんだ。僅かでも可能性があるなら、続けていくしかない」
「でもみんなお疲れだにゃあぁ」

 肉球もみもみは最初、魔術師、それと神官だけが必要としていた。
 だけど二時間も続けていると、前衛職の疲労も溜まって彼らにもにゃびはマッサージをするように。

「くそっ。ボクにもう少し火力があれば……」
「それを言うなら俺だって、モンスターの攻撃に耐えられるパワーがあれば」

 みんな同じ気持ちだろう。
 いくらマッサージを受けても、消耗した体力や魔力が一瞬で回復する訳じゃない。
 時間の経過とともに、通路で持ち堪えられる時間も短くなってきた。
 一度しっかり体を休めるべきか。

「おにゃか空いたにゃ~」
「ん? にゃびの腹時計が鳴ったのか」
「腹時計? あ……もう晩飯の時間だな」

 懐中時計を持った人が、時間を教えてくれる。

「こんな時ですが、夕飯にしませんか?」

 俺の提案は、満場一致で受理された。





「ルナ、にゃび。ちょっと手伝って欲しいんだ」
「なに?」
「にゃ?」

 このまま続けても、体力と魔力を消耗して動けなくなるだろう。
 安全地帯にいれば問題ない。
 だけど戦闘音がなくなれば、あのユニークモンスターが別の方角に行ってしまうかも。

「だからさ、みんなにはバレないように、彼らのステータスを弄ろうと思うんだ」
「だけどパーティーに入れなきゃいけないんでしょ?」
「バレるとダメにゃんか?」

 ステータスボードのことを知られれば、みんながこぞってパーティーに入れてくれと群がってくるだろう。
 中にはそれ目的で俺を脅し、囲う奴らも出てくるかもしれない。

 ここにいる人たちは悪い冒険者じゃないと思う。
 口止めをしたって、いつどこでポロっと口が滑るかも分からないんだ。

「試したいことは二つ。まず、パーティーを抜けさせた後にもボードが見えるかどうか」
「抜けられるの?」
「うん、ほらここ」

 今は俺たちにしか見えないステータスボード。
 ルナとにゃびのステータスが書かれている部分の右下に、小さな三画マークがあった。
 そこに触れると【パーティーから追放しますか】という文字が浮かぶ。

「つ、追放ってなんか……」
「嫌にゃあぁ」
「つ、追放する訳じゃないから。実験。ね?」

 にゃびが半泣き状態なので、ルナが検証してくれることになった。
 俺も正直心苦しい。でも戦力をアップさせなきゃ、スタンピードは乗り越えられない。

 ボードを操作して、彼女をパーティーから抜く。

「どう、見える?」
「ううん。急に見えなくなったわ」
「よかった。じゃあ再加入するね。ここでも検証したいんだけど」

 加入条件は相手に触れること。
 触れてパーティー加入の是非の文字が浮かんだ状態で接触を解くと、当たり前だけどステータスボードは消えてしまう。
 そこで、ルナの背後から触れてパーティーに加入させてみた。

「見える?」
「いいえ、見えないわ」
「じゃあ加入させてすぐにステータスボードを消すとして、次は隠れてボードを開いた時にパーティーメンバーに見えるかどうかだ」

 ステータスボードは小さくはない。両の掌を開いたのと同じぐらいかな。
 にゃびに部屋の隅に移動して貰い、俺はその向かい側の壁でステータスボードを開く──あぁ、見えてるのか。

「私が前を塞いだらどうかしら?」

 そう言ってルナが俺の前に立った。
 彼女の肩越しににゃびが走って来るのが見える。

「ルナがいたら見えなくなったにゃよ」
「障害物があれば見えないのか。そし、じゃあ二人とも、視界を遮るために俺の前に立っててくれるか?」
「分かったわ」
「オッケーにゃ」

 食事の準備をしながら、背を向けている人たちをそっとパーティーに入れていく。
 複数人同時にだと、視界を遮る面積も必要になるからひとりずつだ。

 習得しているスキルの中で、特に頻繁に使っていたスキルのレベルを二つぐらい上げていく。
 ステータスはその職業に必要なものに割り振った。
 ステータスポイントもスキルポイントも、全部は使わずに残しておいた。
 俺が勝手にやってることだし、悪い気がして……。

 食事を終えるまでに、なんとか六人ほど弄ることに成功。

「腹ごしらえもしたし、休む前に一度奴らをこっちに引きつけておきませんか?」

 休憩中も一瞬だけ顔を出して、モンスターの気を引きつけてはいた。
 だけど休んでいる時間が長くなると、モンスターは地上を目指そうとするので殲滅作戦を止める訳には行かない。

 まずはプチ・ファイアストーム。
 それから飛び出して行って左の通路をプチ・ロックウォールで塞ぐ。
 正面、そして右側通路に向かって全力で集中砲火を開始。

 攻撃して、攻撃して、攻撃して──フロイの号令がまだない。
 彼は最年長というのもあって、状況把握もしっかりした人物だ。
 その彼が、まだ行けると判断している。

 一分はとっくに過ぎた。
 そして二分が過ぎて、ようやくフロイから撤退の指示が出た。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

《無限倉庫》×10人の異世界転移者~倉庫x通販xガチャx魔獣x癒しx影支配x武装x召喚x情報x翻訳の力で異世界を支配しろ!

AKISIRO
ファンタジー
異世界オルバース 突如としてこの世界に召喚されたのは、地球から来た10人の男女たち──全員が“主人公クラス”の力を与えられた存在だった。 無限に収納可能な《無限倉庫》 現代の商品を取り寄せる《ネット通販》 伝説級の存在を呼び出す《ガチャ召喚》 モンスターを支配する《魔獣統率》 あらゆる病を癒やす《奇跡の治癒》 裏社会を牛耳る《影の支配者》、 武具を奪う《完全武装》 英霊を呼び出す《召喚術》 情報で支配する《情報屋》 神の言葉を操る《翻訳者》 地球の常識と異世界の魔法が交差するこの地で、彼らはそれぞれの目的を胸に覇道を歩み始める。 だがその裏で囁かれる一つの真実。 「この世界で最後まで生き残り、覇王となった者だけが元の世界に帰還できる」 友情か、裏切りか。 戦争か、共闘か。 10人の主人公がそれぞれの国家、仲間、そして信念を賭けてぶつかり合う。 欲望と戦略が渦巻く異世界で、真に“主人公”の座に立つのは誰だ──!? 全スキル・全能力・全ルールを統べる、異世界覇王バトル、ここに開幕!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ
ファンタジー
少年マキトは、目が覚めたら異世界に飛ばされていた。 野生の魔物とすぐさま仲良くなり、魔物使いとしての才能を見せる。 しかし職業鑑定の結果は――【色無し】であった。 適性が【色】で判断されるこの世界で、【色無し】は才能なしと見なされる。 冒険者になれないと言われ、周囲から嘲笑されるマキト。 しかし本人を含めて誰も知らなかった。 マキトの中に秘める、類稀なる【色】の正体を――! ※以下、この作品における注意事項。 この作品は、2017年に連載していた「たった一人の魔物使い」のリメイク版です。 キャラや世界観などの各種設定やストーリー構成は、一部を除いて大幅に異なっています。 (旧作に出ていたいくつかの設定、及びキャラの何人かはカットします) 再構成というよりは、全く別物の新しい作品として見ていただければと思います。 全252話、2021年3月9日に完結しました。 またこの作品は、小説家になろうとカクヨムにも同時投稿しています。

終末世界の解析者~現代ダンジョンに滅ぼされた世界で最強クラフトスキルを駆使して送る、快適楽園スローライフ!~

はむかつ
ファンタジー
目が覚めたら世界が滅んでいた!? 世界中に突如現れた現代ダンジョンにより、世界人口の大半が死滅した。 植物が侵食し都市機能がマヒした世界で、生き延びたわずかな人同士で物資を奪い合うディストピア。 研究施設で目覚めた朝霧ユウトは、そんな終末世界で生き延びるために最適なスキル『解析・修理・復元』が使えるようになっていた。 物資調達に来ていた美人姉妹との出会い。 極悪な集落との決別、新しい拠点づくり。 現代知識を駆使した快適なスローライフ。 次々に増える居住者(ハーレム要素あり) 極悪な元集落へのざまぁ展開。 そしてダンジョンの謎、この世界の行く末は……。 個性豊かなキャラクターとともにサバイバルを生き抜いていく、時にシリアス、時にほのぼのなストーリー、ここに開幕。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...