8 / 54
8:もしかしてーってことも……あるかなぁ?
しおりを挟む
伯爵家はこの時期、王都の別邸で暮らしている。
そしてうちは王都の外れに住んでいる。領地が王都に接しているから、本邸を王都に構えているって訳。
そんなに遠くもないし、彼女を馬車で送ってあげることにした。
これにはちょっとした意図もある。
私、ルシアナ・デュール・カイチェスターがエリーシャのバックに付いているのよ!
というのを、彼女の義母と姉に見せつけるため。
そうすればお屋敷内での虐めも、少しは減るんじゃないかなって思って。
「エリーシャさんには、お屋敷内で誰かひとりぐらい味方になってくれる方はいまして?」
「味方に? あ、はい。私の専属メイドのソーニャさんがいます」
ソーニャね。あー、いたいた。
ちょっと年のいった恰幅のいいメイドさんだったはず。
「じゃあ私に連絡するときは、その方に手紙を持たせてね」
「は、はい。それで、どこにお手紙を出せばよいのでしょうか?」
「ローラ」
「はい、お嬢様。エリーシャ様、こちらにご連絡ください」
ローラが名刺を差し出す。
名刺には名前しか書かれていない。それで十分。
カイチェスターを名乗れるのは、我が家の人間だけ。
間違って別のところに届くことはない。
「ルシアナ・デュール・カイチェスター様……宛名にそう書けばいいのですね」
「えぇ。それで必ず届きますわ」
名刺を握りしめ、エリーシャが微笑む。
ほんと、可愛い笑顔ねぇ。
「私、今からパーティーに行くのが楽しみです」
「ふふ、私も楽しみだわ」
出来れば皇子と運命的な出会いを果たすあのパーティーより先に、彼女と楽しめるパーティーに参加したいわね。
なんて考えながら窓の外を見ていると、真っ黒い人を発見した。
「止まって!!」
慌てて御者に呼びかけると、馬車が急停止。
「エリーシャさん、少しお待ちになってて。知っている方を見つけたの」
「わ、分かりました」
「ナッシュ卿付いてきて。ローラは彼女と一緒に」
「承知しました、お嬢様」
走りながらナッシュ卿に、探したい人物の容姿を伝えた。
「全身黒づくめで、髪も黒。瞳の色だけ金色の背の高い男よ。昨日、スリを捕まえてくれた人なの」
「了解しました。この通りで見かけたのですか?」
「路地の方に入っていくところだったわ。この辺りよ」
だけど路地を通る人は多い。いくら目立つ容姿だといっても、何百人の中からたったひとりを見つけるのは難しい。
私より背の高いナッシュ卿もあたりを見渡すけれど──
「見当たりませんね」
「はぁ、やっぱり王都でたったひとりを見つけ出すなんて、無理があるわよねぇ」
「見つけてどうなさるのですか?」
「んー、昨日ね、助けて貰ったのにお礼を言えなかったのよ」
「なるほど」
ま、これからは町に出る機会も増えるだろうし、もしかしてーってことも……あるかなぁ?
そしてうちは王都の外れに住んでいる。領地が王都に接しているから、本邸を王都に構えているって訳。
そんなに遠くもないし、彼女を馬車で送ってあげることにした。
これにはちょっとした意図もある。
私、ルシアナ・デュール・カイチェスターがエリーシャのバックに付いているのよ!
というのを、彼女の義母と姉に見せつけるため。
そうすればお屋敷内での虐めも、少しは減るんじゃないかなって思って。
「エリーシャさんには、お屋敷内で誰かひとりぐらい味方になってくれる方はいまして?」
「味方に? あ、はい。私の専属メイドのソーニャさんがいます」
ソーニャね。あー、いたいた。
ちょっと年のいった恰幅のいいメイドさんだったはず。
「じゃあ私に連絡するときは、その方に手紙を持たせてね」
「は、はい。それで、どこにお手紙を出せばよいのでしょうか?」
「ローラ」
「はい、お嬢様。エリーシャ様、こちらにご連絡ください」
ローラが名刺を差し出す。
名刺には名前しか書かれていない。それで十分。
カイチェスターを名乗れるのは、我が家の人間だけ。
間違って別のところに届くことはない。
「ルシアナ・デュール・カイチェスター様……宛名にそう書けばいいのですね」
「えぇ。それで必ず届きますわ」
名刺を握りしめ、エリーシャが微笑む。
ほんと、可愛い笑顔ねぇ。
「私、今からパーティーに行くのが楽しみです」
「ふふ、私も楽しみだわ」
出来れば皇子と運命的な出会いを果たすあのパーティーより先に、彼女と楽しめるパーティーに参加したいわね。
なんて考えながら窓の外を見ていると、真っ黒い人を発見した。
「止まって!!」
慌てて御者に呼びかけると、馬車が急停止。
「エリーシャさん、少しお待ちになってて。知っている方を見つけたの」
「わ、分かりました」
「ナッシュ卿付いてきて。ローラは彼女と一緒に」
「承知しました、お嬢様」
走りながらナッシュ卿に、探したい人物の容姿を伝えた。
「全身黒づくめで、髪も黒。瞳の色だけ金色の背の高い男よ。昨日、スリを捕まえてくれた人なの」
「了解しました。この通りで見かけたのですか?」
「路地の方に入っていくところだったわ。この辺りよ」
だけど路地を通る人は多い。いくら目立つ容姿だといっても、何百人の中からたったひとりを見つけるのは難しい。
私より背の高いナッシュ卿もあたりを見渡すけれど──
「見当たりませんね」
「はぁ、やっぱり王都でたったひとりを見つけ出すなんて、無理があるわよねぇ」
「見つけてどうなさるのですか?」
「んー、昨日ね、助けて貰ったのにお礼を言えなかったのよ」
「なるほど」
ま、これからは町に出る機会も増えるだろうし、もしかしてーってことも……あるかなぁ?
2
あなたにおすすめの小説
痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。
お嬢様の悩みは…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴッドハンドで世界を変えますよ?
**********************
転生侍女シリーズ第三弾。
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
この悪役令嬢には悪さは無理です!みんなで保護しましょう!
naturalsoft
恋愛
フレイムハート公爵家令嬢、シオン・クロス・フレイムハートは父に似て目付きが鋭くつり目で、金髪のサラサラヘアーのその見た目は、いかにもプライドの高そうな高飛車な令嬢だが、本当は気が弱く、すぐ涙目でアワアワする令嬢。
そのギャップ萌えでみんなを悶えさせるお話。
シオンの受難は続く。
ちょっと暇潰しに書いたのでサラッと読んで頂ければと思います。
あんまり悪役令嬢は関係ないです。見た目のみ想像して頂けたらと思います。
乙女ゲームに転生したので、推しの悲恋EDを回避します〜愛され令嬢は逆ハーはお断りです!
神城葵
恋愛
気づいたら、やり込んだ乙女ゲームのサブキャラに転生していました。
体調不良を治そうとしてくれた神様の手違いだそうです。迷惑です。
でも、スチル一枚のサブキャラのまま終わりたくないので、最萌えだった神竜王を攻略させていただきます。
※ヒロインは親友に溺愛されます。GLではないですが、お嫌いな方はご注意下さい。
※完結しました。ありがとうございました!
※改題しましたが、改稿はしていません。誤字は気づいたら直します。
表紙イラストはのの様に依頼しました。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる