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東堂京介

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第1章

第2話 革新執行役員室

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東堂の突然の発表に記者は面食らった様子だがそれでも続ける。


「対応策を伺ったら社内起業始めます。
これじゃあ何も答えてもらえてないんですがこの後お答え頂けるということで良いんですよね?」


「ええ、ご満足ご納得頂けると思いますよ」
 涼やかな微笑で記者に答える東堂。


「さて、では次のご質問のご回答なんですが、
これまでにあった内部通報の件数と扱いの公表ですね。

こちらは勿論行います、今詳細の調査と検証を社内そしてInovexで行っておりますので最も効果的で意味のあるタイミングで公開することをお約束しますよ。」


「なるほど、それは具体的にいつぐらいになりますか?わかる範囲で良いので教えていただければ幸いです。」


「そうですね、この会見終了後に予定しています新番組で幾つかはお伝えする予定になっていますよ。」


「え?そ、そうなんですか?」


「はい、ああ、すみませんまだこれは伝えちゃいけないんでした、後で色々叱られるかもしれないんでオフレコでお願いしますね。」

そういうと少し難しい顔になる東堂。


「いや、社長オフレコって貴方これ生放送ですし配信もしてるでしょう。」


「そうなんですよね、まあ記者さんも視聴者の皆さんも誰にお伝えされても構わないですがオフレコでお願いしますよ。

 とまあ、冗談はさておき内部通報者の方々への配慮無い処遇やその経緯に関しては随時公表させて頂きますのでよろしくご確認お願いします。」


そういうと頭を下げた東堂は又マイクに向かう前に少しペットボトルの水を口に含む。


その様子に記者たちも釣られた様に自らの飲料に口を付ける者もちらほらと見える。


無理もない、18:00定刻に開始されたこの会議も既に2時間を経過しているのだ。


室内の空調は最適を保っているはずだが、記者たちと東堂から発せられるエネルギーが空間を満たしていた。


司会を任された沢木真帆は、その熱を肌で感じていた。


「社長乗ってきたなあ」

真帆も自らの水ペットボトルに唇を近づける。
こくり、喉の奥に常温に近い水が滑り込む。


「そして、第三者機関の設置に関してですがこれこそ先ほどの革新執行役員室、Inovexがその任にあたります。」


東堂の回答に質問した記者が反応する。


「そうですか、ではそれも後ほどって訳ですね」


「そうなりますね、申し訳ありませんが暫しお待ちください。」


息を呑む音が聞こえてくるような静寂の後、それでも幾人かの手が上がる。


司会者が次の記者を指名すると、その記者は即座に立ち上がり、冷徹な眼差しで東堂を見据えた。


「東堂社長、前任者が退任したこの状況で、あなたが新社長に選ばれた理由として、異例の大抜擢という声が上がっています。

ですが正直に言って、世間ではあなたがいわゆる、

人身御供

として選ばれたのではないかという疑念もあります。

いわば、この混乱を収拾するための

生贄

としての立場ではないかと。」


記者の言葉に、会場の空気が一瞬で凍りつく。


「それについてどうお考えですか?」


東堂はこの会見で初めて記者の質問に対して間を取った。

それはほんの些細な間だったが記者たちには、そしてオンラインで視聴する視聴者にとっても東堂が初めて答えに窮したように見えた。
 

しかし、東堂はにこりとほほ笑むと記者に答える。


「生贄、ですか。それはいい。

確かに私は生贄としてこの場に差し出されたのかもしれませんね。」


会場内で、静かなざわめきが広がる。


「ですが、この生贄は

牙を持っています。

爪をもっています。

そして、意志を持っています。

私はこの両手とこの魂をもって改革を成し遂げ既存の体制を、
堕落しきった太った豚の腸を食い破って見せましょう。」


そう言い終えると東堂は今度は


獰悪に笑った。


その一言に、会場は再び静寂に包まれた。記者たちは息を呑んでその言葉の意味を噛み締める。まるで一つの宣言のように、東堂の言葉は空気を支配していた。ここは違う、記者たちがそう感じる。

今までの企業のスキャンダル会見であった予定調和でやり過ごす、逃げ切ろう。それとは全く異なる「意志の発露の場」としての会見であることが明確になったからだ。


狩られるのは誰だ?
記者たちは目の前にいる男の意思に吞まれていく。


ああ、巻き込まれる。


東堂はゆっくりとマイクを置き、深く息を吸い込んだ。その笑顔には一切の揺らぎがない。冷徹な決意が込められている。

彼の背後に広がるスクリーンに映し出された大和テレビのロゴが、まるで新たな時代の幕開けを告げる鐘のように感じられた。


そんなやり取りの後一人の記者の挙手を沢木が拾う。

「そちらのグレーのスーツの方どうぞ。」


頭をボリボリと搔きながら記者が立ち上がる。


「あーどうも堀口です。フリーです。A氏の内部告発に関連してですが、一部報道では、関係者の中に精神的に追い詰められ、自ら命を絶った方がいるとの情報も出ていますよね。これもし事実であれば、A氏の告発が結果的に人命に影響を与えたことになると思うんですが、この件について御社としてどのように認識されているのでしょうか? また、実際にそのような事実を把握されてます?」

抑揚のない早口で、聞き取りにくい発声で堀口が質問する。



「撤回。」

東堂が小さく呟く。


「はあ?」

堀口が場違いな発声で聞き返す。



「撤回していただきましょうか、堀口、さん」

東堂は表情を変えることもなく堀口に応える。


「はあ、撤回て何をです?」


「そうですね、まず我が社の社員の中に悲しいとても悲しい結果になった者がいることは事実です。

しかし、その因果関係や詳細はいまだ明らかになっておらず現在も配慮に配慮を重ねた上で調査中です。

そのような非常にデリケートな問題を、


無責任な報道に名を借りた無粋な連中の記事を元に、

Aの告発が原因だと決めつけるかのような発言をされたこと。その事を撤回してほしい。

そう言っているんですよ、

堀口、さん。」


堀口は少し目を見開き、沈黙した後、わざとらしく肩をすくめながら答えた。


「いやあ、これはまたご丁寧なご指導で。

なるほど、つまり私の発言が軽率だったと、そういうことですね?」

彼は少し笑みを浮かべながら、しかしどこか挑発的な態度を崩さずに続ける。

「ただねえ、東堂社長。世間はそんなに丁寧に事実を待ってくれますかね? 実際に亡くなった方がいる以上、それが何によるものなのか、皆が知りたがるのは当然でしょう。あなた今、因果関係は不明だ。と言いましたが、それってつまり、A氏の告発とは無関係とも断言できないってことでもありますよね?」

堀口は会場を見回し、記者たちの視線を確かめるようにしてから、東堂に視線を戻す。

「撤回を求めるのは結構ですが、私としても報道に名を借りた無粋な連中なんて言われたまま黙っているわけにはいきません。では逆にお聞きしましょう。東堂社長、現時点で御社が確認している事実を、公の場で言える範囲で構わないので、具体的に説明していただけますか?」


「これはこれは、私も言葉が過ぎたようで申し訳ありません。
確かに報道に名を借りたというのは些か失礼だったかもしれませんね、ならば

私は撤回しましょう。

そして私が言っているのは真実の追求をするなと言っているのではありません。
Aの告発が原因で誰かが自らを殺めたのだと言う。
そういう根拠のない批判を撤回してほしい。そう言っているんです。

そんなのは誹謗中傷です。

我々、報道に携わる者は根拠の無い憶測で発言してはならないのです。

あなたの、

そして我々の言葉は記事になり、電波に乗り誰かの元に届くのです。

そこに嘘や憶測や恣意的な想いをのせてはならないのですよ。
 

そしてそれを踏まえて堀口さんの問いにお答えしましょう。

私はね、堀口さん。
因果関係が不明だとは言っておりませんよ。調査中だと申し上げたのです。

調査中であるが故にまだ確定していないこと、
関係者で証言がとれるか交渉の段にあることもありますので具体的なことはまだ言えません。

言えませんがね堀口さん、私はこの件闇に葬らせたりはしませんよ、その点だけは貴方にお約束しましょう。」


東堂は堀口をじっと見つめ約束を告げる。

堀口はしばし沈黙し、顎に手を当てながら考え込むような素振りを見せた。
そして、小さく息をつくと、ゆっくりと口を開く。


「なるほど、確かに、今の私の言葉は少々踏み込みすぎたかもしれませんね。撤回というのは癪ですが、訂正はしましょう。」

そう言いながらも、堀口はまだ納得しきれないような表情を見せる。


しかし、東堂が決して挑発に乗らず、あくまで理性的に話を進めたことで、これ以上の強硬な追及は得策ではないと悟ったようだった。


「ただ、真実を追求するのが我々の仕事であることも、ご理解いただきたい。
私は憶測で話すつもりはありませんが、貴社の調査の進展については、厳しく見守らせていただきますよ。」

そう言ってから、堀口は東堂をじっと見つめる。探るような視線だったが、それは先ほどまでの挑発的なものとは少し違い、わずかに興味と警戒の入り混じったものへと変わっていた。


「ありがとうございます、堀口さん。

なら見守るだなんて言わず一緒にこの件やりませんか?

それなら私も後半部分も撤回しますよ?」


東堂の発言に面食らう堀口。


それは堀口だけでない、他の記者の面々も、そして沢木真帆も又その一人だった。


東堂は少しだけ周囲を見渡し満足げに口元を引き締め、
ゆっくりと次の言葉を口にした。


「さて、皆さん。長い質疑応答にお付き合いいただき、ありがとうございます。お待たせしましたが、ここで新たに設立された

革新執行役員室Inovex、

についてご説明させていただきます。」


東堂の背後で、沢木真帆が資料を配布し始める。彼女は冷静に、だが確かな意志を持って、会場の各記者に配布していた。


「さて、資料をお配りしました。」

東堂はテーブルに置かれた資料を指さしながら続けた。


沢木真帆が記者に資料を手渡すと、彼女もまた口を開いた。

「Inovexは、内部不正の徹底調査と公表、従業員の労働環境の改善、そしてジャーナリズムの独立性を守るために活動します。

これらはすべて透明性を持ってオンラインで公開され、常に社会と共有されることをお約束します。」


資料に目を通した記者たちは、感情の無い文字の羅列にしかし、視線を奪われる。

表紙には太字で


「大和テレビ革新執行役員室【Inovex】設立趣意書」
と記されている。


内容は以下の項目に整理されていた。


【設立目的】
・内部不正の徹底調査と公表
・透明性あるガバナンス体制の構築
・報道の独立性確保

【主な活動内容】
・過去の内部告発案件の再調査
・不正行為に関する第三者検証
・従業員の労働環境改善策の実施

【組織体制】
・独立法人としての位置づけ
・透明性確保のための監視体制
・外部有識者の参画

【今後のスケジュール】
・調査結果の定期公開(週次/月次)
・改革プログラムの実施時期
・中長期的展望(6カ月/1年/3年)

「私たちの目標は、単なる調査にとどまらず、その結果を社会に還元し、改善へと導くことです。」

沢木真帆が続けた。

「そして、すべてのデータと結果は皆様と共有し、監視していただくこと。
そのことにより強固なガバナンスが成り立つと信じています。」


資料を手にした記者たちは、その内容に驚きつつも、次の質問を準備し始める。





 
部屋の中、パソコンの画面に映るのは東堂勝吾の記者会見。画面の向こうで、彼は冷静な口調で記者たちの質問に答え続けている。


「いや、これ普通にヤバくない?」

大学生くらいの青年が、隣に座る友人に話しかけた。
手に持ったスナック菓子をひとつつまみ、もう片方の手でスマホを操作している。


「亮さ、こういうの好きだよな。俺はまだ信用してないけど」
 
懐疑的な表情で腕を組み、画面をじっと見つめる友人が言う。


「でもさ、今までの社長とは全然違うじゃん?
 ああいう定型文みたいな会見じゃなくて、ちゃんと正面から答えてるし。」

亮と呼ばれた青年はそう返答する。


「まあ、それはそうだけど、上手いこと言ってるだけかもな」


「吉弘は相変わらずだな、でも、それでもワクワクしない?
 これ、ネットでも結構盛り上がってるし」

亮はスマホを吉弘に見せた。タイムラインには、続々と投稿が流れていく。


【なんか大和テレビの会見、めちゃくちゃ白熱してるんだが】
【東堂社長、ガチでやる気っぽいな】
【Inovexって何? これ革命的じゃない?】
【ここ数年の会見で一番ウケるかも】


「見てみろよ、もうトレンド入りしてる」


「確かに、ここまで話題になってるのはすごいな。でも、本当に変わるのかな」


タイムラインには賛否両論が渦巻いてい




【言うだけタダだよね。何回大和テレビに騙されたと思ってるんだよ!】
【熱いなアイスマン】
【アイスマン?】
【最初だけ盛り上がって終わりだよ】
【あの強い言い方、嫌いじゃないけど、行動が伴わなきゃ意味ない】
【東堂の若いころのあだ名、それを知ってるお前何者?】
【いや、お前もな】
【綺麗事言う前に先ず被害者に土下座して来いよばーか】


「結局、みんなが言ってることだけど、行動が伴わなきゃ意味ないんだよな」


二人はしばらくスクロールしながらSNSの反応を見続け、再び画面に目を戻した。

東堂は次の質問に対して答えている。


会見は続き、SNSでは反応が止まることなく続々と更新されていった。






記者の手が挙がる。

指名されたのは、若手の男性記者だった。彼は少し戸惑いながらも、質問の内容を整理してから口を開く。


「東堂社長、改めてお伺いしたいのですが、Inovexという組織についてです。
今回の改革の中で、Inovexが果たす役割は非常に大きいとおっしゃっていましたが、実際にInovexとは一体何をする組織なのでしょうか?
そして、今までの改革とはどこが違うのか、具体的に教えていただけますか?」


記者が言い終えると、部屋の空気が一瞬静まる。東堂はゆっくりと目を閉じ、改めて回答を準備するように思案した後、静かに言葉を発する。


「Inovexは、ただの調査機関ではありません。

もちろん、内部の不正や問題を明らかにする役割はありますが、それだけにとどまりません。私たちはこの組織を、従来の改革が失敗した原因を根本から見直し、具体的な行動に結びつけるための新たな挑戦と捉えています。

Inovexは単なる外部からの目ではなく、内部から変革を引き起こすための推進力です。
私たちは、この組織を通じて、社内の透明性を確保し、実行力のある改革を進めていきます。」


 記者はさらに鋭く切り込む。


「ですが、これまでの改革も『透明性』や『実行力』を掲げてきたはずです。
それでも結果として、進展がなかった。Inovexは、その点でどのように違うと考えているのですか?」


東堂は一呼吸置き、再び答える。


「良い質問です。確かに過去の改革は、言葉だけに終わってしまった部分が多かった。
しかし、Inovexはその全てを実行に移すための機関です。私たちは、改革を進めるために必要な資源や支援を得るための方法を、透明かつ具体的に示し、それを実行する力を持った組織として機能させます。

従来の改革と決定的に違うのは、Inovexが社内に深く関わり、そこで得た知見を外部と共有し、最終的には社会全体に対して改善を促進する点です。」


記者たちは次々にメモを取り、会場の緊張感はさらに高まる。

記者がさらに手を挙げ、その声に会場が反応する。
今度は中堅の女性記者が質問を投げかけた。


「東堂社長、Inovexの透明性についてですが、組織の公共性を担保するために、外部からの協力者を仰ぐという点について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?

また、視聴者にもその透明性を感じてもらいたいというお考えがあるのでしょうか?」


東堂は少し間を取った後、しっかりとした口調で答え始める。

「非常に重要なポイントですね。Inovexは、その透明性を何よりも重視しています。だからこそ、先ほど堀口さんをお誘いしたでしょう?」


そういうと東堂はちらりと堀口に視線を投げる。


ほかの記者からも視線を向けられた堀口は驚いたように眼を2、3度瞬いた。

その様子を見た東堂はくすりと微笑むと言った。


「堀口さんだけではありません。Inovexは外部の専門家、即ちあなた方記者さんやその他熱意ある改革者の協力を歓迎いたします。

今の会社に所属して頂いたままで構いません。嘘のない正しい情報を他者に伝えたい、その熱意と誠意があるならば我々Inovexはあなた方を歓迎し許可証を発行します。


Inovexの公開基準については、すでに社内で運用ガイドラインとして文書化されています。
ご希望があれば後ほど、許可証発行者には共有いたします。


万が一許可証の発行されない方がいましたらどうぞ声をお上げください。


その理由、公開致します。」


東堂がそう言うと記者たちは互いに顔を見合わす。

東堂は続ける。


「そして外部の目が入ることで、私は我々の活動がより公正で信頼性のあるものとなると確信します。

皆さんにはその過程を参加して見守っていただきたい。

私たちはInovexの議決に関して、可能な限り公開する方針です。
ただし、プライバシーや企業の損益に関わる情報については当然、慎重に扱います。」


会場は静まり、記者たちはメモを取りながら次の言葉を待った。


「さらに、私たちは議事録を公開致します。議論の過程や意思決定の背景を明らかにするためです。

もちろん、誰でも彼でも議事録を閲覧できるわけではありませんが、Inovexに関わる主要な会議の内容については、責任を持って公表していきます。

この決定は、透明性を担保し、私たちの改革が本物であることを示すための重要な一歩だと考えています。」


東堂が言い終わると、会場の空気が一変した。記者たちが次々に目を見張り、ネット上ではその発言が瞬く間に広がり、議論を呼び起こす。





SNSには次々とコメントが投稿され、タイムラインが急激に賑わう。


【これ、今までのテレビ業界にとって革命的じゃないか?】
【社長、言うだけじゃなくて実際にやってる感がある】
【このおじさん、かっこええなあ】
【え、ヤバイ俺男だけど惚れちゃう】
【今の時代えんやで】
【とうどっ!とうどっ!】
【議事録公開って、企業としてはかなり珍しい試みだな】
【でも、それってプライバシーや損益の部分は大丈夫なのか?】


一方で、疑念の声も当然、存在する。


【これで本当に変わるのか?過去にも同じような言葉を聞いてきたけど】
【胡散臭い、胡散臭過ぎるぞ】
【俺たちは教祖の誕生を目撃している】
【議事録公開なんて言っても、実際にはどこまで透明になるのかが分からない】
【どうせ最初だけ盛り上がって終わるんだろうな】


東堂の言葉に対する反応は賛否両論で、ネット上でも大きな議論が巻き起こることになった。
 

記者が手を挙げ、もう一度質問を投げかける。


「社長、先ほどInovexの透明性についてお話しされましたが、もう一つ気になる点があります。

もしInovexの舵取りも東堂社長が行うのであれば、それは結局社長個人の私的な機関になってしまうのではないでしょうか?

透明性を確保するとはいえ、もしも全てが大和テレビの社長である東堂さんの意向に基づいて行動するのであれば、たとえ外部との協力があっても結局は独立性に疑問が残るのでは?」


その質問に対して、東堂は静かながらも確信を持って答える。


「素晴らしい質問です。

先ず私個人はInovexの株式を1株たりとも保有していませんしするつもりもありません。

まあそれは大和テレビでも同じなのですが。

そして、とはいえ「現状ほぼ全ての株式を所有する」大和テレビの社長である私が中心となりInovexを牽引する

となれば、そのように疑問を抱かれるのも無理はありません。

しかし、私たちが目指しているのは、私個人の意向ではなく、組織としての透明性と公正さを追求することです。

そして、そのために私たちはInovexに、外部の視点と新たなリーダーシップを取り入れることに決めました。」


一度、東堂はしっかりと視線を巡らせてから、さらに続ける。


「この度、Inovex初代室長として、沢木真帆が就任することになりました。

彼女は大和テレビにて広報部の課長として数々の実績を上げ、組織内外で信頼を得てきました。

私たちの改革において、彼女の冷静な判断力と人を引き寄せる力が欠かせません。」


その言葉を受け会場はざわめく、カメラのフラッシュが瞬き乾いた機械音が繰り返す。


記者たちの反応が一斉に変わる。


「沢木さんがInovexを指揮するということですね?
それでは、東堂社長が全てを握っているのではなく、実際に独立したリーダーシップがあると考えてもよろしいでしょうか?」


東堂は自信を持って答える。


「もちろんです。私たちの目標は、Inovexを単なる私の私的機関にすることではありません。

沢木真帆が室長として、私たちの改革の実行に監視と批判の目を持ち、外部の協力者との連携を強化していく。

私はあくまで、Inovexが適切に機能するためのサポートを提供する立場です。

彼女には私たちのビジョンを実現するために必要な権限が与えられています。」


再び記者たちの反応が飛び交う。






【Inovex初代室長、沢木真帆!社長が支えるとはいえ、実行力が重要だな】
【あ、あの司会の姉ちゃんやんけ!】
【かわいいと思ったのになあ、残念】
【おばちゃんじゃん】
【最終的には東堂社長が支配しているんじゃないかって気もする】
【それな、生贄の操り人形】

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