優等生は夢を見る

稲橋 ラナ

文字の大きさ
2 / 4

あの頃の『ワタシ』と今の私

しおりを挟む
「あーもう!なんでこんなに頑張って書いてるのに1回もいい賞が取れないの!」
小説を書き始めて早4年。私は1回も銅賞より上位の賞を取れていない。それ以上にストレスをためる要因は、
「ここに書いてあるじゃん。内容にオリジナリティーがないって。」
私の幼馴染の久戸瀬真都(くどせ まなと)だ。いつも返って来た作品についてる評価に落ち込んでいるとき追い打ちをかけてくる。ちなみに真都の成績はいつもしたら数えたほうが楽になる。私は…言うまでもないよね。まあ兎にも角にも真都はうざい。
「なんでいつも落ち込んでいる時に追い打ちかけてくるの?人なの?」と文句を言うと
「だからお前にもっといい小説を書いてほしんだって」と返される。こいつこういう時だけ頭の回転速いんだよね…
「なぁ安音、お前なんで賞も取れてないのに小説を書いてんだ?」
不意に真都が聞いてきた。
「そんなの決まってるじゃない。私は…」そこで言葉に詰まってしまった。(あれ?なんで私こんなに必死になって小説を書いてるの?…ダメだ思い出せない…)
「やっぱり忘れてたか。」と真都は哀れむような呆れたような顔をして見つめてくる。そのことに気づいたとき私は驚いた。あのテストでどんなに酷い点をとってもどんなに酷いことが起きてもいつもケロッとした表情の能天気さを見せていたのにこんな表情を見せたことに私は意外に感じたからだ。
その後気まずくなり、いつもは真都と一緒に帰っていたのに今日は一人で早く帰っていた。小説を書いてる理由すら言えない自分に強い失望感を憶えながら。
「おーい、安音ー」その時急に名前を呼ばれた。振り返るとそこには友人の加瀬羽美(かせ うみ)が走ってきた。…やたらと重そうなカバンを背負いながら。ちなみに彼女もアイツと同じように成績は下から数えたほうが早い。どうしてそんなに走っていたのかを尋ねると、「もうすぐテストでしょ?…だから勉強を教えて、ってどうしたのその顔!?」彼女に指摘されてその時初めて私は泣いていたことに気づいた。彼女にもなんで賞も取れないのに小説を書いてるのかの理由が思い出せないことを話した。彼女は黙って話を聞いてくれた。
すると彼女は突然立ち上がり私をギュッと抱き締めた。そして泣きそうになりながら
  「ちょっとずつ思い出そうね。」
と優しく私に囁きかけてきた。
(記憶喪失じゃないんだから)
と思いつつも彼女の優しさに心が少し楽になった。

あれから暫くして美羽に勉強を教え始めてから1時間が経った頃未だに私は理由が思い出せないことが気になっていた。
「ねえ。聞こえてる?」
「あっごめん。」
私はさっきからこんな具合で勉強に集中出来ていない。すると彼女は
「集中出来ないなら今日はもうお開きにしようか。」と言ってきた。ここで普段の私なら「サボりたいだけでしょ」と言えるのに今日は頷いてしまった。

彼女を見送った後部屋に戻った私は今日の出来事を思い出していた。真都のあの表情と言葉、言葉に詰まってしまった私の事等々を考えていたらまた涙が出てきた。この事を忘れたい思ってまたノートを開いた。ノートの最初のページには破り捨てられた跡が残っていた、恐らくここになんで小説を書き続けているのかの理由が書いてあったのだろうと思ったが、思い出せない。むしろノートの破り捨てられた跡見たらより気持ちがぐちゃぐちゃになってよくわからなくなってきた。

ドウ…シ…テ?

え?

ナンデ…オモ…イダセナイ…ノ?

頭の中で誰かの声が聞こえてきた。私はもっとよく分からなくなってきた。

『思い出せないならやめちゃえばいいじゃん。楽になっちまえよ。』

 それだけがはっきり聞こえた私は


 







 小説家になりたいという夢を捨てた
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...