クリフォード文庫

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クリフォードの未開封の記録

クリフォードの未開封の記録④

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四肢が無いのならば、取り敢えずは掴まれたり引っかかれたりする恐れは無い。
しかし、この生物を手で掴む勇気はまだ無い。
私は転がった手籠を拾い上げ、火掻き棒で突っつきながら中に転がして入れた。
だが目とくちばしが下になってしまい、それは少し可哀想だと思った。
そこで毛布を床に敷き直し、その中央に目が上に来るように転がし、毛布の両端を持って改めて手籠に入れた。
私はそれをロッキングチェアーの上に置き、一旦ソファーに座った。
窓から外を見ると、庭に朝日が燦々と射している。
先程の回転で幾つか野菜や果物が実った筈だと思い、先ずはそれらを収穫しようと決めた。
なるべく普段通りの事をして、気持ちを落ち着かせようと考えたからだ。
鎌や枝切りハサミを持ち、扉に向かった。
振り返ると、球体は私を見ていた。


収穫を終え、小屋に戻った。
相変わらず球体は私を目で追っていた。
収穫物をキッチンに広げ、早速朝食の準備に取りかかった。


ここでついでに食べ物に関して記しておく。
収穫物は野菜と果物と穀物で、肉類と海産物と卵と乳製品は無い。
時々無性にカリカリに焼いたベーコンやフライドエッグが食べたくなるが、無い物はどうにもならない。

香辛料は主だった物は収穫出来るし、油はオリーブの実から抽出している。
収穫物の種類や油の抽出方法などは、この小屋に有る膨大な書籍から学んだ。
塩に関しては、小屋の地下室に何故か巨大な岩塩が有り、それを削り取って使っている。
私一人ならば、何百年も使える位の大きさだ。
砂糖は収穫した砂糖黍から抽出しているが、ここに生える果物はどれも非常に糖度が高いので問題無い。

お茶は大抵は野草を適当にブレンドしたハーブティーを飲んでいるが、コーヒー豆も穫れる。
だが私は天日干しして乾燥させたトウモロコシを煎って挽き、それをコーヒーとして飲んでいる。
それが美味いという訳ではない。
ほんの遊び心で試したらなかなか美味かったので、何となく気に入って続けているだけの事だ。
それにトウモロコシコーヒーにはカフェインが含まれていないので、体にも悪くないだろうし。

水は小屋の裏に湧き水が在り、今のところ枯渇する様子は無い。
だから料理や洗い物は勿論、風呂に入る事も出来る。
尤もボディソープは無いので、代わりに瓢箪で体を擦っているが。

衣は別として、食住は何とか揃っているのである。


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