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クリフォードの未開封の記録
クリフォードの未開封の記録⑦
しおりを挟むそれは唐突に現れた。
ある夜の事。
就寝前に本を読んでいると、突然窓の外が明るくなった。
カーテンを開くと、巨大な火柱が立ち上っている。
私はリンゴの木が燃えたと思い、直ぐに外に飛び出した。
だが違った。
それは業火を纏った、巨大な鳥だった。
私はその場にへたり込んでしまった。
だが同時に私は実感した。
フェニックスが顕現したのだと。
フェニックスは巨大な翼を幾重にも折り畳み、リンゴの木の天辺よりも高い位置に在る首をこちらに伸ばしてきた。
そして私の顔を暫く観察すると、今度は庭を眺めた。
やがて木からリンゴをくちばしでもぎ取ると、丸ごと食べてしまった。
「相変わらずここのリンゴは美味い。だが先ずは、この美味さを維持している優秀な番人に敬意を表すべきだろう。初めまして、クリフォード」
フェニックスが喋った。
だがくちばしは動いていない。
もしかしたら他に誰かが隠れて喋ったのではないかと思い、庭を見渡した。
「喋っているのは私だよ、クリフォード。このままじゃ面倒だな。そうだクリフォード、君の後ろに生っているブドウを一つもいでくれないか」
私は言われるままにブドウを一房枝からもぎ取り、振り返った。
するとそこには、燕尾服にシルクハットを被った紳士が立っていた。
「この方が話しやすいだろ、クリフォード。何だ、そんな顔をして。もう驚く事には慣れてるだろうに。まぁ立ち話もなんだから、中で話そう。君のハーブティーをご馳走してくれないか」
男はそう言うと、勝手に小屋の中に入ってしまった。
※ここからは会話を主体に記す事にする。
私の主観で書くよりも、より分かり易いと思う。
男は小屋に入ると、先ずドロップを見た。
丁度ドロップは眠っていたので、男の出現には気付いていなかった。
男は暫くドロップを見ていたが、やがてソファーに腰を下ろした。
「あ、あなたは一体…」
「クリフォード、この世界には話す時間は無限に在る。だから先ずはお茶を淹れてくれないか」
「無限に…」
「そう、無限に」
私は様々な想像で頭が一杯だったが、取り敢えず彼の要望通りにお茶を淹れた。
「有難う。うん、いい香りだ」
男は一口啜ると、背もたれに深く仰け反った。
「あの本は何かな?」
男は私のベッドに臥せてある本を指差して言った。
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