錬金術師だったけど、婚約破棄されました~屋敷の前で店を構えたら大成功した伯爵令嬢~

マルローネ

文字の大きさ
3 / 9

3話 錬金術のお店 その1

しおりを挟む

「あ、アリアンヌ姉さま……この機材は一体……」

「ふふふ、これだけあれば、調合も可能だしお店の経営に支障はないでしょう?」

「た、確かにそうかもしれませんが……」


 アリアンヌ姉さまの提案からわずか1週間。屋敷の前には仮設の店舗が建てられ、必要な機材も揃えられた状態になっていた。仮説の店舗とは言っても、大き目のテントだけれど。

「この機材は……」

「ちゃんと許可は取ってあるから、心配することはないわよ」

「は、はあ……それはありがとうございます……」


 全て姉さまが準備してくれたようなものだ。私がしたことと言えば……錬金術師として、再びアイテムを作る心構えを持つように、心の調整していたことだけかな?


「大体分かるとは思うけれど、スターク様の協力があってのことよ」

「あ、やっぱりそうなんですね……」


 スターク・カンナバウ公爵……アリアンヌ姉さまの婚約者である。流石に姉さまだけでは、ここまでの用意は不可能だから、スターク様が関与しているとは思っていたけれど。ということは、出店の許可についてもスターク様から王家に行った形なのかしらね。


「これは……なんて感謝すれば良いのか、分かりません……」

「スターク様は感謝に来る必要はないとおっしゃっていたわよ。メドロアが元気にお店の経営をしてくれればそれで良いってね」

「そ、そうなんですか……」

「ええ」


 本当に感謝しか出来ない……まさか、私の為にここまでのことをしてくれるなんて。姉さまにもスターク様にも、頭が上がらなかった。

「お父様とお母様も言っていたでしょう? とりあえず始めてみなさいってね」

「そういえばそうでしたね」

「お父様達も分かっているのよ。貴方の中にある悲しみを消す……少なくとも紛らわせるには、このくらいのことが必要だってね。幸いにも、貴方は錬金術師なんだし丁度良いじゃない」

「確かに……そうですね」


 婚約破棄の悲しみを消す為には、それ以上のインパクトで覆い隠せば良い。凄い力技だけれど、確かに効果的かもしれない。何よりも、私の為に用意してくれたことが本当に嬉しかった。

 成功するかどうかはともかくとして、お店経営を頑張ってみよう。私はそう決意することが出来た。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

「無能な妻」と蔑まれた令嬢は、離婚後に隣国の王子に溺愛されました。

腐ったバナナ
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、魔力を持たないという理由で、夫である侯爵エドガーから無能な妻と蔑まれる日々を送っていた。 魔力至上主義の貴族社会で価値を見いだされないことに絶望したアリアンナは、ついに離婚を決断。 多額の慰謝料と引き換えに、無能な妻という足枷を捨て、自由な平民として辺境へと旅立つ。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...