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6話 二人の王子殿下 その2
しおりを挟むその後もガイア様、シュタイン様の二人は錬金術のお店の様子を見守り続けていた。勿論、他の貴族のお客様の邪魔にならないような位置に移動しながら。
「ガイア、かなりの盛況振りのようだが……正直、どう感じている?」
「まだ、なんとも言えない状況かとは思われます」
「ふ~む、なるほど。しかし、私個人の印象としては……」
やはり、視察に来たのは間違いないようね……昼休みが終わり、営業を再開してからも二人は隅の方で何かを話し合っているようだし。私のお店が売れているかどうかを判定に来ているのかもしれない。そうなると、なんだか緊張してしまうわ……。
「傷薬をいただけますでしょうか?」
「はい、畏まりました」
最後のお客様が帰っていくのを見計らい、本日の営業は終了となった。
その日は結局、ガイア様とシュタイン様は昼休みの時から夕刻の営業終了まで居たことになる。屋敷の前での仮設営業の関係上、お店の営業時間自体は短く設定しているのだ。私はともかく、手伝ってくれている使用人達は、別の仕事もしないといけないしね。
「お疲れ様。大した仕事量だったようなだな、メドロア嬢。正直な話、ここまで大盛況だとは思っていなかったよ。メドロア嬢の錬金術の腕の高さが窺えるな。まあ、その腕に関してはアイテムの品揃えの豊富さからも推測は容易だが」
「あ、ありがとうございます……シュタイン様……」
否定したい気持ちでいっぱいだったけれど、それは王子殿下に対して不敬に値するかもしれない。心の中では私はそんな凄い人間ではないことを連呼していたけれど……でも、素直に嬉しかった。
「メドロア嬢……流石だな」
「ガイア様……ありがとうございます」
ガイア様は一言、静かに褒めてくれたようだ。ガイア様の称賛の言葉も素直に嬉しかった。ハーヴェスト王国の王子殿下二人から同時に称賛の言葉を掛けられるなんて、ほとんどない事態だろう。これは自信を持っても良いことなのかもしれない。
「また、来させてもらう時があるかもしれないが……構わないだろうか?」
「あ、はい。勿論でございます、シュタイン様。よろしければ、ガイア様もいつでもお越しくださいませ!」
「ああ……わかった」
王子殿下の二人がまた来てくれるなんて、これ程嬉しいことはなかなかない。私は大きく頷いて歓迎することをアピールした。すると、シュタイン様は微笑んでくれる。ガイア様も微かに頬が緩んでいるように見える。二枚目なお二人のそんな表情を見せられては、こちらは頬を赤くする以外になかった。
「ふふ、メドロア嬢も元気そうで良かったよ。さて、私達も帰るとしようか」
「そうですね、シュタイン兄さま」
「あ、本日はありがとうございました! またのお越しをお待ち申し上げております!」
二人の王子殿下は私に手を振りながら、馬車へと入って行った。そのまま、馬車は高速で店の前から離れていく。
王子殿下二人との出会いは間違いなく最近では一番、インパクトが強い体験と言えるだろうか。
「驚きました……まさか、王子殿下がお越しになられるとは」
「本当ね、メアリー。私も同意見だわ」
驚き過ぎた一日ではあったけれど、それと同じくらい嬉しい一日でもあった。私の中での婚約破棄という悲しい過去の傷は、かなり癒され始めていた。
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