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21話 舞踏会の後で その1
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「本日は楽しい舞踏会でしたわ……まあ、実際の踊りよりも、王子殿下達のやり取りが最高に面白かったわけですけどね」
「エッセル公爵。そのようにおっしゃっていただき、光栄でございます。またのお越しをお待ち申し上げております」
「また、主催されたその時は、来させていただきますわ。それでは、アルゼイ王子殿下、失礼いたします」
隣国の貴族を招いた舞踏会は終了の時間になり、なんとか大きなトラブルもなく過ぎて行った。アルゼイ様は現在、ファブナー・エッセル公爵に別れの挨拶をしているところだ。隣国との友好の架け橋になる、シリカと婚約関係になる可能性の高い相手だけに一番手厚くもてなしていたように思う。
今回、エラルド王国から来た貴族の中ではもっとも地位が高いのが彼だから。その相手が身内に近い存在だったので、緊張の緩和に繋がったのは良かったと思う。もっとも、エッセル公爵自身を完全に信用し切ってしまうのも危険ではあるんだけどね。
「ファブナー様、これで、しばらく会えなくなりますね……寂しいです」
「あははは、シリカ。嬉しいこと言ってくれるやん。いつでも、遊びに来たらええからな? 別にアポイントもいらんで、馬車で来たら、俺が不在の時でももてなすように話を通しておくからな」
「気持ちは嬉しいですけど、流石にエラルド王国の公爵様の屋敷にアポイントも無しに、行くのは無理ですよ」
「それもそうやな、まあ、適当に予約してから来たらええ。歓迎するで」
「ありがとうございます! 姉さま達も連れて行きますね!」
「おう!」
シリカとファブナー様との別れ際の会話。その様子を見ていると、本当にシリカは両国間の友好の架け橋になれるんだと確信してしまった。ファブナー様が既にシリカのことを相当に気に入っているようだしね。
「本日の舞踏会、父と母が来れなかったのは申し訳ない。本来であれば、出席の予定でしたが……」
「いえ、気になさらなくて良いですよ。3人の王子殿下の様子が見れただけでも、十分ですわ」
そういえば出席する予定だと聞いた気がするけれど、国王陛下や王妃様は居なかったわね。どうしてかしら……?
「それでは、失礼しますわ」
「お気をつけて、エッセル公爵」
ファブナー・エッセル公爵は、何人もの付き人と一緒に馬車で宮殿から離れて行った。今日は宿に泊まって、明日には本国へ帰るのだろう。
「ふう……ようやく、一段落と言ったところか。肩の荷が下りたよ」
「お疲れ様でした、アルゼイ様」
私はアルゼイ様に労いの言葉を掛ける。他の二人の王子殿下の姿はなく、近くにはシリカとマイケルのみ立っている状況だった。それだけに、ファブナー様を見送る時の心労は大きかっただろう。
「でも、不思議ですよね~~どうして、王様や王妃様はいらっしゃらなかったんでしょうか?」
「それに……他国の公爵閣下を見送るにしては、やや質素でございましたな」
シリカもマイケルも同じ感想を持っているみたいだ。アルゼイ様の護衛の姿はもちろんあるけれど、ファブナー様を見送る場合、ジェイド王子殿下やフリック様も来るべきでは? と思ってしまうし、国王陛下達が居ないのも気がかりだ。
「みんなの考えはもっともだが、まだエラルド王国との関係性はその程度だということだ」
アルゼイ様の重い一言……一体、どういうことかしら?
「エッセル公爵。そのようにおっしゃっていただき、光栄でございます。またのお越しをお待ち申し上げております」
「また、主催されたその時は、来させていただきますわ。それでは、アルゼイ王子殿下、失礼いたします」
隣国の貴族を招いた舞踏会は終了の時間になり、なんとか大きなトラブルもなく過ぎて行った。アルゼイ様は現在、ファブナー・エッセル公爵に別れの挨拶をしているところだ。隣国との友好の架け橋になる、シリカと婚約関係になる可能性の高い相手だけに一番手厚くもてなしていたように思う。
今回、エラルド王国から来た貴族の中ではもっとも地位が高いのが彼だから。その相手が身内に近い存在だったので、緊張の緩和に繋がったのは良かったと思う。もっとも、エッセル公爵自身を完全に信用し切ってしまうのも危険ではあるんだけどね。
「ファブナー様、これで、しばらく会えなくなりますね……寂しいです」
「あははは、シリカ。嬉しいこと言ってくれるやん。いつでも、遊びに来たらええからな? 別にアポイントもいらんで、馬車で来たら、俺が不在の時でももてなすように話を通しておくからな」
「気持ちは嬉しいですけど、流石にエラルド王国の公爵様の屋敷にアポイントも無しに、行くのは無理ですよ」
「それもそうやな、まあ、適当に予約してから来たらええ。歓迎するで」
「ありがとうございます! 姉さま達も連れて行きますね!」
「おう!」
シリカとファブナー様との別れ際の会話。その様子を見ていると、本当にシリカは両国間の友好の架け橋になれるんだと確信してしまった。ファブナー様が既にシリカのことを相当に気に入っているようだしね。
「本日の舞踏会、父と母が来れなかったのは申し訳ない。本来であれば、出席の予定でしたが……」
「いえ、気になさらなくて良いですよ。3人の王子殿下の様子が見れただけでも、十分ですわ」
そういえば出席する予定だと聞いた気がするけれど、国王陛下や王妃様は居なかったわね。どうしてかしら……?
「それでは、失礼しますわ」
「お気をつけて、エッセル公爵」
ファブナー・エッセル公爵は、何人もの付き人と一緒に馬車で宮殿から離れて行った。今日は宿に泊まって、明日には本国へ帰るのだろう。
「ふう……ようやく、一段落と言ったところか。肩の荷が下りたよ」
「お疲れ様でした、アルゼイ様」
私はアルゼイ様に労いの言葉を掛ける。他の二人の王子殿下の姿はなく、近くにはシリカとマイケルのみ立っている状況だった。それだけに、ファブナー様を見送る時の心労は大きかっただろう。
「でも、不思議ですよね~~どうして、王様や王妃様はいらっしゃらなかったんでしょうか?」
「それに……他国の公爵閣下を見送るにしては、やや質素でございましたな」
シリカもマイケルも同じ感想を持っているみたいだ。アルゼイ様の護衛の姿はもちろんあるけれど、ファブナー様を見送る場合、ジェイド王子殿下やフリック様も来るべきでは? と思ってしまうし、国王陛下達が居ないのも気がかりだ。
「みんなの考えはもっともだが、まだエラルド王国との関係性はその程度だということだ」
アルゼイ様の重い一言……一体、どういうことかしら?
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