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12話 シードとの相対 その1
しおりを挟む「ん? そこに居るのはリーザじゃないのか? こんなところで何をしている?」
「い、いえまあ……観光と言うか何と言うか」
「観光だと……?」
シード様は明らかに怪訝な表情になっていた。シード様の軍は大半が森の外で待機しているようで、中に入って来たのは、シード様を含めて少人数のようだ。
それにしても、流石に観光という言葉はわざとらしいかしら……。
「世界樹の森を一人で観光とは……危険なことをするものだな」
「アスタルも一緒ですけれどね」
「ど、どうも……アスタル・フォーミラです」
シード様に軽く挨拶をするアスタル。あんまり歓迎しているような雰囲気ではない。私に行ったことを知っているので、彼なりに怒ってくれているのかもしれないわね。嬉しい対応だった。
「アスタル・フォーミラ……伯爵家の者か。リーザと一緒にここに来たのか?」
「ええまあ、そういうことになります。リーザとは幼馴染ですので」
「ふん、そうだったのか。まあ、今はそのことはどうでも良い」
一瞬、アスタルに興味を示したシード様だったけれど、すぐに私に視線を合わせて来た。なんだか威圧感を感じるんだけれど……。
「リーザよ、そちらに居る白い狼はなんだ?」
「グルルルルル……!」
シロウはシード様を敵と認識しているのか、大きく唸っていた。その唸り声にシード様や護衛の兵士達は驚いている。
「お、おい……! あの狼が襲ってきたら、しっかりと私を守るのだぞ!」
「か、畏まりました、シード様!」
明らかに敵意を剥き出しにしているシード様達。逆に言えば、シロウを相手にビビっているということね。
「シロウという森に住む狼ですよ、彼は。人間に襲い掛かったりしませんし、凄く賢いんですから。シード様を襲わないようにね、シロウ」
「ワウッ!」
雄叫びと共に私の右手を舐めてくれた。理解してくれたってことかな。
「リーザには懐いているようだな……それなら安心か」
「それよりも、なぜ世界樹の森に来たのですか? シード様は見る限り、軍の一部を引き連れているように感じるのですが……」
「あ、ああ……そのことだったな。私の領地が現在、原因不明の嵐が続いていてな……この世界樹の森にその要因があると聞いて訪れたのだ。なんでも大地の精霊か何かがいるとの噂があってな」
うわぁ……やっぱりその噂は知れ渡っているのね。やっぱり、シード様はクリファに用事があって来たのか。
「お前達は世界樹の森に詳しいようだし、何か知らないのか? 知っていることがあれば話すのだ。嘘を吐いても良いことはないぞ?」
「……」
シード様に話す義理なんてこれっぽっちもないけれど……嘘を吐くのはマズいわね。でもクリファを売るなんてしたくないし。どうしようかと考えていると……。
「私に何か用事かな~~?」
「むっ! なんだあいつは!?」
「シード様! お下がりください!」
クリファ本人が空から降って来たのだ。まさに精霊らしい登場の仕方だけれど……大丈夫なのかしら? 最初は姿を現さないように言ってあったんだけれどね……。
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ネタバレになりますけど、無関係の民への配慮はされていますね
局所的な嵐という感じです
ご指摘ありがとうございます
今回の件について検討させていただきたいと思います
シードについては父親が王家に報告はしている流れにはなります
まあ、通常では大きな問題になりそうですが……
シードの罪はかなり重いですね