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7話
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「デナン・モルドレート……なかなか、面白い男だな」
「そうですね、バルサーク様。デナン・モルドレートの件をお任せしてもよろしいでしょうか?」
「それはもちろんだ。ブライアン殿の頼みとなれば断るわけにもいかない。それに、私個人としても是非、任せてもらいたいからな」
突然現れたバルサーク・ウィンドゥ様。その登場にも驚いたけれど、お父様と通じているところがさらに驚きだった。
バルサーク様が当たり前のようにお父様と話しているのが、なんとなく面白かった。なんだか不思議な雰囲気だわ。
「さて、ローザ嬢。以前に君のローザハウスに行った時にも言ったが……よければ、私に任せてくれないか」
「バルサーク様……ありがとうございます」
あの時、訪れてくれたのはこの時のためだったのかしら……なんだか運命的なものを感じるわ。私は嬉しさのあまり、涙が出てきてしまっていた……。
「おいおい、大丈夫か? いきなりそんなに涙を流すことではないだろう」
「そんなことありません……私は、本当に嬉しくて……!」
私は涙が止まらない……なぜなら、さっきのお父様の助けられない発言で、絶望してしまっていたから。まあ、お父様が助けられないと言ったのは、バルサーク様に依頼していたがゆえのことなんでしょうけど。
「リシェル・クラウドの行っていることは決して許されることではないな。しかも、デナン・モルドレートの配下で
執事たちによる強制連行……常軌を逸しているな」
「はい、私は妹に……私から全てを本当に全てを持っていかれました……」
本当に悔しい……あの屋敷はお父様からプレゼントされた大切な私の居場所だった。中に飾っていた家具や照明、装飾品なども必死で選んでいただいたものなのに。もちろん、私が個人的に購入した物だってたくさんあった。いくら妹とはいえ……限度というものがある。
そして……今回の件は明らかにその限度を超えていた。そもそもの問題として、デナン様を奪った時点で限度を超えているといえるのだけれど。
どちらも大目になど見れない理不尽な行為だけれど、私は特にローザハウスが奪われたことが我慢ならなかった。あの場所には物だけではない……私を慕ってくれていた使用人達との思い出だってあるんだから。
時間のある時に料理の指導をしてもらったり、お掃除の手伝いをしたりと、普通は貴族令嬢ならば体験しないことを教わったりもしていた。そういった貴重な体験の思い出がある場所なのだ。それを全て踏みにじられた……許せるはずはない。
それにしても……腑に落ちないことがある。どうしてバルサーク様は私に加担してくれるのだろう?
「バルサーク様、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「どうした?」
「はい……なぜ、バルサーク様は私を助けてくれるのですか?」
「それは……」
バルサーク・ウィンドゥ様は仮にも大公殿下だ。私との接点なんてほとんどないはずなのだけれど。年齢は確かに近いけど、それが理由だとは思えないし……。バルサーク様は先ほどから言葉を濁している。それと同時に彼のお付きの方はニヤニヤと笑みを浮かべていた。前にもあった光景ね……。
「ローザ嬢のことが……まあ、なんだ。個人的に気になっているからだ……」
「えっ……?」
よく聞き取れなかった……ええと?
「殿下っ! とうとう言ってしまわれましたね! おめでとうございます!」
「いやぁ、いつおっしゃるのか冷や冷やしていましたぞ。助ける理由が不明瞭なままでは、ローザ様もご不安でしょうからな。これも愛の成せることかと思われます」
「くっ、お前達……黙れっ」
バルサーク様のお付きの男女二人は、妙なテンションになっていた。彼の言葉に告白に感激しているようだ。完全に私は置いてけぼりを喰らっている。しかし、バルサーク様の助けてくれる理由は分かった。
そういうことだったのね……思ったよりもシンプルな理由だ。でも、なんて返せばいいんだろう……。私の心臓は恐ろしい程に高鳴っていた。
「そうですね、バルサーク様。デナン・モルドレートの件をお任せしてもよろしいでしょうか?」
「それはもちろんだ。ブライアン殿の頼みとなれば断るわけにもいかない。それに、私個人としても是非、任せてもらいたいからな」
突然現れたバルサーク・ウィンドゥ様。その登場にも驚いたけれど、お父様と通じているところがさらに驚きだった。
バルサーク様が当たり前のようにお父様と話しているのが、なんとなく面白かった。なんだか不思議な雰囲気だわ。
「さて、ローザ嬢。以前に君のローザハウスに行った時にも言ったが……よければ、私に任せてくれないか」
「バルサーク様……ありがとうございます」
あの時、訪れてくれたのはこの時のためだったのかしら……なんだか運命的なものを感じるわ。私は嬉しさのあまり、涙が出てきてしまっていた……。
「おいおい、大丈夫か? いきなりそんなに涙を流すことではないだろう」
「そんなことありません……私は、本当に嬉しくて……!」
私は涙が止まらない……なぜなら、さっきのお父様の助けられない発言で、絶望してしまっていたから。まあ、お父様が助けられないと言ったのは、バルサーク様に依頼していたがゆえのことなんでしょうけど。
「リシェル・クラウドの行っていることは決して許されることではないな。しかも、デナン・モルドレートの配下で
執事たちによる強制連行……常軌を逸しているな」
「はい、私は妹に……私から全てを本当に全てを持っていかれました……」
本当に悔しい……あの屋敷はお父様からプレゼントされた大切な私の居場所だった。中に飾っていた家具や照明、装飾品なども必死で選んでいただいたものなのに。もちろん、私が個人的に購入した物だってたくさんあった。いくら妹とはいえ……限度というものがある。
そして……今回の件は明らかにその限度を超えていた。そもそもの問題として、デナン様を奪った時点で限度を超えているといえるのだけれど。
どちらも大目になど見れない理不尽な行為だけれど、私は特にローザハウスが奪われたことが我慢ならなかった。あの場所には物だけではない……私を慕ってくれていた使用人達との思い出だってあるんだから。
時間のある時に料理の指導をしてもらったり、お掃除の手伝いをしたりと、普通は貴族令嬢ならば体験しないことを教わったりもしていた。そういった貴重な体験の思い出がある場所なのだ。それを全て踏みにじられた……許せるはずはない。
それにしても……腑に落ちないことがある。どうしてバルサーク様は私に加担してくれるのだろう?
「バルサーク様、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「どうした?」
「はい……なぜ、バルサーク様は私を助けてくれるのですか?」
「それは……」
バルサーク・ウィンドゥ様は仮にも大公殿下だ。私との接点なんてほとんどないはずなのだけれど。年齢は確かに近いけど、それが理由だとは思えないし……。バルサーク様は先ほどから言葉を濁している。それと同時に彼のお付きの方はニヤニヤと笑みを浮かべていた。前にもあった光景ね……。
「ローザ嬢のことが……まあ、なんだ。個人的に気になっているからだ……」
「えっ……?」
よく聞き取れなかった……ええと?
「殿下っ! とうとう言ってしまわれましたね! おめでとうございます!」
「いやぁ、いつおっしゃるのか冷や冷やしていましたぞ。助ける理由が不明瞭なままでは、ローザ様もご不安でしょうからな。これも愛の成せることかと思われます」
「くっ、お前達……黙れっ」
バルサーク様のお付きの男女二人は、妙なテンションになっていた。彼の言葉に告白に感激しているようだ。完全に私は置いてけぼりを喰らっている。しかし、バルサーク様の助けてくれる理由は分かった。
そういうことだったのね……思ったよりもシンプルな理由だ。でも、なんて返せばいいんだろう……。私の心臓は恐ろしい程に高鳴っていた。
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