婚約者と妹が酷過ぎるわけでして……

マルローネ

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19話

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 半ば自暴自棄になっている妹のリシェルを連れ、私とバルサーク様はデナン・モルドレート様のお屋敷を訪れることになった。


 目的はもちろん、リシェルがローザハウスを奪うという人格的にあり得ない行動に出たことへの総責任を追及してのことだ。実行犯はリシェルではあるけれど、彼女のあり得ない行動は全てデナン様が元になっている。それを証明するかのように、彼の執事がリシェルの部下として使われているのだから。

 総合的な責任はむしろ、デナン様にあると言えるだろう。その考えに行きついたからこそ、私もバルサーク様も彼の屋敷に入っていた。ついでに、スパイ活動が素晴らしかったバーンさんも同行している。


 私達はデナン様に会うと、略式的な挨拶の類いを交わし、そのまま応接室へと招かれた。私だけだったらおそらくは、門前払いになっていただろうけど、バルサーク・ウィンドゥ大公殿下が一緒だと明らかにデナン様の態度は異なっていた。

 まあ、彼よりもはるかに格上の貴族なのだし当然だけれど。貴族というよりはむしろ、国王陛下代理みたいな立ち位置のお方だしね。政治情勢によってはバルサーク様が国王陛下になっていたかもしれないのだから……。


「それで、バルサーク様……」

「うむ、どうした? デナン・モルドレート侯爵?」


 答えは分かり切っている質問だけれど、バルサーク様は容赦がなかった。あくまでも、デナン様が主体でしゃべらせようとしている。彼の近くに立っているリシェルは生気を失っているような顔色だった。

 これもひょっとして、私への想いの裏返しなのかな……だとしたら相当に嬉しいかもしれない。護衛であるヨハンさん達は苦笑いになっているけれど、私にとっては勇者様みたいな存在だ。ローザハウスとそっくりな屋敷を作っていた事実には少しだけ引きそうにはなったけどさ。それもまあ……愛の成せる業ってことで。

「一体、本日はどのようなご用件なのですかな?」

「そっくりそのままお返ししたい気分だな。本当にその文言で切り抜けられると思っているのか?」

「いえ……本当に良く分かりませんな。そちらにいらっしゃる、ローザ嬢との婚約破棄の件を言っているのであれば、しっかりとした慰謝料はお支払いいたします……それで何も問題はないでしょう?」


 どうやらデナン様は本気で切り抜けられると思っているみたいね……信じられない。私への婚約破棄の慰謝料の件は今回のバルサーク様の訪問とは何も関係がない。それだけに、バルサーク様は本気で溜息を吐いているようだった……。ラタナトイ王国の行く末を案じているのかもしれないわね。
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