婚約者と妹が酷過ぎるわけでして……

マルローネ

文字の大きさ
25 / 27

25話

しおりを挟む
 私とバルサーク様の二人は数日後、第二のハウスに集合した。第二のハウスという呼称はどうかと思ったけれど、とにかくあのバルサーク様がローザハウスを模倣して建てた屋敷に集まったわけで。

 ローザハウス……違った、リシェルハウスに集まらなかったのには理由がある。単純にリシェルに力づくで奪われた屋敷には戻りづらかったわけで。私の世話を焼いてくれていたメイド達も本邸に戻っている。今はあそこには誰も住んでいない。




「さて、話を進めたいのだが、よろしいかな? ローザ嬢」

「は、はい……バルサーク様」


 内容については分かり切っている……既にバルサーク様からは告白を受けているのだから。その理由についても、教えてもらっている。とても嬉しいことだった。幼い頃の無駄だと感じていたこともある頑張り等で、彼を……バルサーク・ウィンドゥ大公殿下に希望を与えていたのだから。

 バルサーク様の護衛役である二人、エリーゼさんとヨハンさんも今回ばかりは笑っていなかった。私達の話を真剣な表情で聞いているようだ。

 思えばリシェルにローザハウスから強制的に退去させられた後、助けてくれたのはバルサーク様だけでなく、エリーゼさんとヨハンさんも含まれるのだった。直接的にというよりは、二人の雰囲気に和ませてもらった気がするわ。まだ、大して前の話じゃないのに、懐かしい気がしてしまう。


 それから……今回の件で一番お世話になったのは、お父様なのかもしれない。お父様がバルサーク様に連絡を取ってくれたおかげで、今回のことは無事に解決したのだから。私は部屋を自然と見渡していた。まあ、居るはずはないのだけれど……無意識に探していたようだ。


「ローザ嬢、ブライアン殿が居なければやはり、盛り上がらないか?」

「えっ? あ……いえ、そういうことではないですが……つい」

「そうだな。私としても礼儀を欠いてしまっていたようだ」

「バルサーク様……?」


 頭を抱えている様子のバルサーク様。別にそんなに落ち込むことではないように思えるけれど、彼は思いのほか悩んでいるようだった。


「しかし……いくら、大公という立場があるとはいえ……ローザ嬢のお父上の前で告白をし直すというのは、やはり緊張してしまうな。う~ん」

「いえ、バルサーク様! バルサーク様が望まれないのであれば、お父様を呼んでいただく必要は……!」

「いや……やはり、こんなところで逃げた態度を取ってしまっては、この先、ローザ嬢に顔向けが出来ない。それに……偉そうにデナンとリシェルの二人を叱責したことも意味が薄れてしまいそうだからな」

「バルサーク様……」


 それだけ私のことを本気で考えてくれている……そんな覚悟にも近い何かが私には感じられた。こんな、第二のハウスを大金を使って建てるくらいだものね。


「デナン様とリシェル嬢の件に関しては何ら、影響は与えない気がしますけどね」


 と、その後に呟かれた、エリーゼ様の静かな突っ込みが面白かった。


 バルサーク様は私のお父様を呼んでくれるということで、納得してくれた。いよいよ、決断の時ね……!
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

9時から5時まで悪役令嬢

西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」 婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。 ならば私は願い通りに動くのをやめよう。 学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで 昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。 さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。 どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。 卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ? なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか? 嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。 今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。 冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。 ☆別サイトにも掲載しています。 ※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。 これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。

望まない相手と一緒にいたくありませんので

毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。 一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。 私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

某国王家の結婚事情

小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。 侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。 王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。 しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。

やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。

あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。 そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。 貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。 設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。

【完結】完璧令嬢の『誰にでも優しい婚約者様』

恋せよ恋
恋愛
名門で富豪のレーヴェン伯爵家の跡取り リリアーナ・レーヴェン(17) 容姿端麗、頭脳明晰、誰もが憧れる 完璧な令嬢と評される“白薔薇の令嬢” エルンスト侯爵家三男で騎士課三年生 ユリウス・エルンスト(17) 誰にでも優しいが故に令嬢たちに囲まれる”白薔薇の婚約者“ 祖父たちが、親しい学友であった縁から エルンスト侯爵家への経済支援をきっかけに 5歳の頃、家族に祝福され結ばれた婚約。 果たして、この婚約は”政略“なのか? 幼かった二人は悩み、すれ違っていくーー 今日もリリアーナの胸はざわつく… 🔶登場人物・設定は作者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます✨

うまくいかない婚約

ありがとうございました。さようなら
恋愛
エーデルワイスは、長年いがみ合っていた家門のと結婚が王命として決まっていた。 そのため、愛情をかけるだけ無駄と家族から愛されずに育てられた。 婚約者のトリスタンとの関係も悪かった。 トリスタンには、恋人でもある第三王女ビビアンがいた。 それでも、心の中で悪態をつきながら日々を過ごしていた。

処理中です...