妹が婚約者を奪いました。後悔してももう遅いですよ?

マルローネ

文字の大きさ
6 / 7

6話

しおりを挟む
「ま、待てよミカエル……話し合おうじゃないか……な?」

「話し合うだと? 一体、何を話し合うんだ?」

「ミカエルさんも落ち着いてよ。昔はそんな人ではなかったでしょ?」


 ニエルはミカエルのことを「さん」付けで呼んでいる。昔からそうだった。


「ニエルも見損なったよ。君がそんな人間だとは思わなかった。確かに当時から我が儘だとは思っていたが、大きくなってもそれは変わらなかったんだな。非常に残念だ。セラの妹をこんな風に罵倒しなければならないなんて」

「ミカエルさん……そんな」

「それでだ、オルテガ。国王陛下の下に行くのがそんなにマズイのか? ん?」

「い、いや……それはだな、その……」


 オルテガ様からすればマズイに決まっている。王家には良いように取り繕って婚約破棄を承諾してもらったんだから。そのおかげで、私は精神障碍者というレッテルを貼られることになったけど。


「お前は現状では国王陛下に嘘を吐いたことになるからな。陛下の前に行くのはマズいだろうよ。そこに、精神科の医師からの診断結果がプラスされれば、お前の言っていることは真っ赤な嘘ということになるさ」

「ま、待て……! ミカエルは何が望みなんだ? 精神科の医師の診断とか、随分と飛躍しているじゃないか」


 さっきまでの自信はどこに行ったのだろうか? なんだか今のオルテガ様は小動物のように思えてくるわ。


「私の望みだと? そんなことも分からないのか、オルテガ」

「あ、ああ。出来れば教えてくれないか? 可能な限り従うからさ」

「いいだろう、教えてやる」


 ミカエルは自分が有利になっていると悟ったみたいだ。事実、オルテガ様は完全に負け組になっている。


「この場で今すぐ、セラに謝れ。そして、自分の行ったことが全て嘘だったと認めるんだ。そうすればセラに対する不名誉な噂も終息するだろうからな」

「な、なんだと……? セラに謝罪しろだと……?」

「嫌ならお前を国王陛下のとこに連れて行く。逃げられると思うなよ? 国王陛下の耳に入れば、お前は終了だ。そのくらいは分かっているだろう?」

「くっ……!」


 オルテガ様は歯を食いしばらせていた。そこまで謝罪をしたくないということかしら。まあ、見下していた相手に謝罪をするのは屈辱的だろうけれど、自業自得だしね。それで破滅を免れるなら、むしろ安い方じゃないかしら。


「す、済まなかった……セラ。精神異常者だということの噂を流したのも私だ。申し訳ない……」


 でも、意外なほどにオルテガ様は素直だった。これなら許してもいいかもしれないわね。

「セラ、しっかりと謝罪は聞いたか?」

「ええ、聞いたわ」

「こ、これで許してくれるんだな?」


 本来ならそうなんだろうけれど……ミカエル様は不敵に笑っていた。

「さて、私は国王陛下に直談判してくる。オルテガとニエルは帰ってもいいぞ」

「な、なんだと……!? 話が違うぞ……!」

「そ、そうですよ……ミカエルさん、どうして……!」

「お前達は私の大切なセラを侮辱したんだ! 謝罪程度で許されると思うな! 謝罪をするのは最低条件でしかない! 覚悟しておけ……相応の罰を課してやるからな!」


 ミカエルの激昂はパーティー会場全体に響いていた。こんなに怒った彼を見たことがない。ちょっと怖かったけれど、ここまで私のことで怒ってくれる彼に、少しだけときめいてしまった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する

下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。 ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄したいって言いだしたのは、あなたのほうでしょ?【完結】

小平ニコ
恋愛
父親同士が親友であるというだけで、相性が合わないゴードリックと婚約を結ばされたキャシール。何かにつけて女性を見下し、あまつさえ自分の目の前で他の女を口説いたゴードリックに対し、キャシールもついに愛想が尽きた。 しかしこの国では制度上、女性の方から婚約を破棄することはできない。そのためキャシールは、ゴードリックの方から婚約破棄を言いだすように、一計を案じるのだった……

伯爵様は、私と婚約破棄して妹と添い遂げたいそうです。――どうぞお好きに。ああ、後悔は今更、もう遅いですよ?

銀灰
恋愛
婚約者の伯爵ダニエルは、私と婚約破棄し、下心の見え透いた愛嬌を振り撒く私の妹と添い遂げたいそうです。 どうぞ、お好きに。 ――その結果は……?

婚約者が義妹と結ばれる事を望むので、ある秘密を告白し婚約破棄しようと思います─。

coco
恋愛
私が居ながら、義妹と結ばれる事を望む彼婚約者。 醜い化け物の私は、気色悪いですって…? では、あなたにある秘密を告白し、婚約破棄しようと思います─。

(完結)私は一切悪くないけど、婚約破棄を受け入れます。もうあなたとは一緒に歩んでいけないと分かりましたから。

しまうま弁当
恋愛
ルーテシアは婚約者のゼスタから突然婚約破棄を突きつけられたのでした。 さらにオーランド男爵家令嬢のリアナが現れてゼスタと婚約するとルーテシアに宣言するのでした。 しかもゼスタはルーテシアが困っている人達を助けたからという理由で婚約破棄したとルーテシアに言い放ちました。 あまりにふざけた理由で婚約破棄されたルーテシアはゼスタの考えにはついていけないと考えて、そのまま婚約破棄を受け入れたのでした。 そしてルーテシアは実家の伯爵家に戻るために水上バスの停留所へと向かうのでした。 ルーテシアは幼馴染のロベルトとそこで再会するのでした。

婚約破棄ですか? それはこれから、私が貴方に行うものですよ?

柚木ゆず
恋愛
 嘘を吐いている、私の婚約者様へ。  皆様の前で婚約破棄を行うのは、貴方ではありません。この私です――。

我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。 そこで目撃してしまったのだ。 婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。 よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!  長くなって来たので長編に変更しました。

私を婚約破棄させる事に執着した義妹は、愛する人からすっかり嫌われた上に幸せを逃しました。

coco
恋愛
私を目の敵にしている義妹。 彼女は、私を婚約破棄させる事に執着しているようで…?

処理中です...