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4話
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「私は不要な娘として育てられて来ました……それは事実です」
馬車でアーヴィン様の屋敷へと向かう途中、私は身の上話をしていた。本当は恥ずかしくて話せないことなのだけれど、不思議とアーヴィン様には聞いて欲しくなる。屋敷へ招待してくれると言われたからかもしれないけれど。
「不要な子として育てられていたか。いくら三女とはいえ、そんなことをして良い道理はないはずだが。アングラ家の噂は何年か前から流れていたな」
「そうですね。私が10歳くらいからなので、もう6年前になるかと」
「それほど前から流れ始めたのか。今では有名な話の1つとさえ言えるからな」
「アーヴィン様もご存知でしたものね」
「そうなるかな」
「でも……よろしいのですか?」
「ん? なにがだ?」
突然の質問にアーヴィン様は私を見た。これは聞いておかないといけない質問だ。
「私の噂をご存知なのに、アーヴィン様は屋敷へ招待してくれました。それは非常に嬉しいことなんですが……大丈夫なのでしょうか? アーヴィン様は公爵令息という非常に高い地位についておられます。妙な噂が流れたりしたら……」
「なんだそんなことか。気にする必要はないと思うぞ」
「そ、そうでしょうか……?」
アーヴィン様は私を招待することに何も気にしている素振りを見せていなかった。これには私の方が気にしていたくらいだし……本当に大丈夫なのだろうか?
「死んでしまうかもしれない令嬢を助けるのは、高位貴族としての義務にも近い」
「そ、それは……とてもありがたいことなのですが」
「いや、例え誰であっても助けないという選択肢はないさ。あのまま放置していては、我がオルカス家の名が廃れてしまうだろう。これでもオルカス家は王家にも連なる家系だからな。人助けをして当たり前なところはあるさ」
私にはとても信じられないことだったけれど、アーヴィン様の言葉は非常に勇気づけられるものだった。例え一瞬の助けだったとしても、私の味方をしてくれる人がいた……これだけでも十分だわ。
「さて、そろそろ我が家に着きそうかな」
見えて来たオルカス家の屋敷……流石に王家とのつながりがあるだけあって非常に大きいな屋敷だった。伯爵家の屋敷とは大違いだ。
--------------------------------
「遠慮なく寛いでくれて構わないぞ。今、メイドに飲み物を持ってこさせるからな」
「ありがとうございます……アーヴィン様」
私は応接室と思しき場所に通された。応接室も非常に豪華な造りになっている。まあ、国王陛下なんかが来たりもするだろうし、それなりの外見は必要なんだと思うけれど。なんだか恐縮してしまうわ……。
「あ、あの……アーヴィン様。本当にありがとうございます。このような場所に招待していただいて……」
「ふふ、気にすることはないさ。そんなことよりも、君の今後を話した方がいいだろう?」
「あ、そうですね。はい」
私の今後……どうなってしまうのだろうか? それは非常に気になるところではあった。一時は身体を売って生活したり、隣国へ逃げることも考えていたからだ。
「しばらくはゆっくりして行けばいいさ。父上も許してくれるだろうし……そして、慣れて来たらここで働いていかないか?」
「えっ、アーヴィン様の屋敷で働かせていただけるのですか? そんな……」
「まあ、任せたい仕事は数多くあるしな。最近は人手不足も感じるようになってきたところだし……ちょうどいいだろう。それなりの給金は約束しよう」
なんて慈悲深い人なのかしら……私の噂を気にすることなく、自らの屋敷に招いてくれて。それだけではなく仕事の斡旋までしてくれているのだから。どんな内容の仕事でも喜んでやらなくてはね。
「は、はい! ありがとうございます、アーヴィン様! 一生懸命働きますので……その」
「ははは、最初はそんなに気張らなくてもできる仕事を考えているよ。慣れてきたら複雑な仕事も考えてはいるが。まあ、我が家だと思ってゆっくりしてくれればいい」
「アーヴィン様……」
まさかこんな展開になるなんて思わなかったわ。廃墟の教会に居た時はどうすればいいのかと途方に暮れていたのに……。まさかこんなにも光明が降って来るなんて。私は今でも信じられなかった。
馬車でアーヴィン様の屋敷へと向かう途中、私は身の上話をしていた。本当は恥ずかしくて話せないことなのだけれど、不思議とアーヴィン様には聞いて欲しくなる。屋敷へ招待してくれると言われたからかもしれないけれど。
「不要な子として育てられていたか。いくら三女とはいえ、そんなことをして良い道理はないはずだが。アングラ家の噂は何年か前から流れていたな」
「そうですね。私が10歳くらいからなので、もう6年前になるかと」
「それほど前から流れ始めたのか。今では有名な話の1つとさえ言えるからな」
「アーヴィン様もご存知でしたものね」
「そうなるかな」
「でも……よろしいのですか?」
「ん? なにがだ?」
突然の質問にアーヴィン様は私を見た。これは聞いておかないといけない質問だ。
「私の噂をご存知なのに、アーヴィン様は屋敷へ招待してくれました。それは非常に嬉しいことなんですが……大丈夫なのでしょうか? アーヴィン様は公爵令息という非常に高い地位についておられます。妙な噂が流れたりしたら……」
「なんだそんなことか。気にする必要はないと思うぞ」
「そ、そうでしょうか……?」
アーヴィン様は私を招待することに何も気にしている素振りを見せていなかった。これには私の方が気にしていたくらいだし……本当に大丈夫なのだろうか?
「死んでしまうかもしれない令嬢を助けるのは、高位貴族としての義務にも近い」
「そ、それは……とてもありがたいことなのですが」
「いや、例え誰であっても助けないという選択肢はないさ。あのまま放置していては、我がオルカス家の名が廃れてしまうだろう。これでもオルカス家は王家にも連なる家系だからな。人助けをして当たり前なところはあるさ」
私にはとても信じられないことだったけれど、アーヴィン様の言葉は非常に勇気づけられるものだった。例え一瞬の助けだったとしても、私の味方をしてくれる人がいた……これだけでも十分だわ。
「さて、そろそろ我が家に着きそうかな」
見えて来たオルカス家の屋敷……流石に王家とのつながりがあるだけあって非常に大きいな屋敷だった。伯爵家の屋敷とは大違いだ。
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「遠慮なく寛いでくれて構わないぞ。今、メイドに飲み物を持ってこさせるからな」
「ありがとうございます……アーヴィン様」
私は応接室と思しき場所に通された。応接室も非常に豪華な造りになっている。まあ、国王陛下なんかが来たりもするだろうし、それなりの外見は必要なんだと思うけれど。なんだか恐縮してしまうわ……。
「あ、あの……アーヴィン様。本当にありがとうございます。このような場所に招待していただいて……」
「ふふ、気にすることはないさ。そんなことよりも、君の今後を話した方がいいだろう?」
「あ、そうですね。はい」
私の今後……どうなってしまうのだろうか? それは非常に気になるところではあった。一時は身体を売って生活したり、隣国へ逃げることも考えていたからだ。
「しばらくはゆっくりして行けばいいさ。父上も許してくれるだろうし……そして、慣れて来たらここで働いていかないか?」
「えっ、アーヴィン様の屋敷で働かせていただけるのですか? そんな……」
「まあ、任せたい仕事は数多くあるしな。最近は人手不足も感じるようになってきたところだし……ちょうどいいだろう。それなりの給金は約束しよう」
なんて慈悲深い人なのかしら……私の噂を気にすることなく、自らの屋敷に招いてくれて。それだけではなく仕事の斡旋までしてくれているのだから。どんな内容の仕事でも喜んでやらなくてはね。
「は、はい! ありがとうございます、アーヴィン様! 一生懸命働きますので……その」
「ははは、最初はそんなに気張らなくてもできる仕事を考えているよ。慣れてきたら複雑な仕事も考えてはいるが。まあ、我が家だと思ってゆっくりしてくれればいい」
「アーヴィン様……」
まさかこんな展開になるなんて思わなかったわ。廃墟の教会に居た時はどうすればいいのかと途方に暮れていたのに……。まさかこんなにも光明が降って来るなんて。私は今でも信じられなかった。
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エレンが最悪な結末を迎えなくて良かった。
アーヴィンはノブレスオブリージュがきちんと身に付いている人なのですね。
二人が偶然出会えて幸運だっけど、アーヴィンは何故あの廃墟にいたのでしょうね。
2人の距離がどのようになっていくのか楽しみです。
ありがとうございます
読んでいただいて嬉しいです