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4話

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「アニスがそうか……監禁されたというのか」

「はい、お父様。申し訳ありません、最悪の事態が想定できずに……」


 屋敷に戻った私をお父様は出迎えてくれた。妹のアニスを連れて行った件を心配してくれていたのだと思う。最悪の事態になってしまったけれど……こればかりは謝罪する以外になかった。

 フィレー伯爵家始まって以来の出来事かもしれない。


「心配はいらないさ、メリスよ。こういう事態になることも想定はしていた。ブルー様の性格的に、二人とも監禁されるのではないかとも考えていたからな」

「そうだったのですか?」

「ああ。メリスだけでも戻って来れて本当に良かった。しかし……今頃、アニスは……」

「うっ……」


 もぢかしたら、最悪の状態……ブルー様に無理矢理、犯されていることも考えられた。そんなことになったら……。


「申し訳ございません、ボルト様、メリス様! もしも、アニス様に何かあった時はこの腹を切る所存です……」

「私もです! それで許してもらえるなど、まったく思っておりませんが……」


 アニスの護衛達は非常に取り乱しているようだった。アニスのことが心配なのは分かるけれど。腹など切られたら非常に困ってしまう。


「馬鹿なことを言うな。それより、メリス。お前の幼馴染に連絡を取っておいたからな」

「幼馴染……まさか……」

「そうだ、ユアン・ハート王子殿下だよ!」


 ユアン・ハート王子殿下……私の幼馴染の名前だ。まさか、私とアニスがブルー様の屋敷に行っている間に、彼と連絡を取っていたなんて。流石はお父様といったところかしら?

「お父様……! それは非常に心強いです!」

「ああ! ブルー・シルヴィア侯爵に対抗するには、彼しかいないと思っていたからな」

「それでユアンからの返事はどうだったのです?」

「なにかあれば、一緒にブルー様の屋敷に乗り込んでくれるというものだったよ」

「そうですか! それは本当に心強いです!」


 ユアンは私の大切な幼馴染だった。そんな彼が味方についてくれる……これは非常にありがたいことだ。一気に強力な味方ができたみたいなものだし。私は嬉しくなってしまった。


「ただ、ユアン様と合流してブルー様の屋敷に行くまでには日数が掛かるだろう。その間のアニスが非常に心配だが……」

「それは……本当に申し訳ないです……」

「いや、その時のメリスでは限界があっただろうしな。仕方のないことだ。なんとか無事を祈るしかないな」

「そ、そうですね……」


 本当に妹の無事を祈るしかなかった。例え、王子殿下であるユアンと一緒に乗り込んだとして、もしも、妹の処女が剥奪されていたりしたら……私はブルー様を殺してしまうかもしれない。
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