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12話

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(ウィンベル視点)


 私は大変なことをしてしまった……セリア様とフィリップ様にあらぬ疑いを掛けてしまったのだ。今、二人は学院内の教会に連行されたらしい。一度、その場から逃げたようだけれど、再び拘束されたと聞いた。


「そんな……私がレント様に屈しさえしなければ……こんなことには」


 私はレント様に言われたとおり、とある教室の一室に匿われている。もちろん拘束などされずに自由に動くことだってできるけど。警護と言う意味合いで特殊警棒を持った人が外に待機している。あの特殊警棒が私に振るわれる時があるのだろうか? 

 例えばセリア様とフィリップ様を解放してほしいと、レント様に言った場合はどうなるだろうか? 幼馴染の私の言葉だからレント様は聞いてくれる……? いえ、決してあの方は聞いてくれないと思う。


「レント様にとって……私はなんなんだろうか……」


 ただ頷くだけの人形……レント様はそのように思っているのかもしれない。よく可愛らしいとか清楚、健気、可憐などと言ってはくれるけれど。レント様に逆らった行動をした場合、彼は180度態度を変えてしまうのではないだろうか。

「今回の件も同じかもしれないわね……」


 今回の一件はレント様から相談されたものだ。セリア様と婚約破棄を確実にするために、いじめを受けていたと言え、と言われた。私は最初こそ戸惑ったけれど、レント様には逆らえなかったわけで……。


 私が頷くと彼は、「それでいい。君はいつもそうしていればいいんだ」と言って私の前から姿を消したのだ。

 これは愛されていると言える……ただ、都合よく利用されているだけのような……。私はどうすれば良かったのか……やはりあの時、頷くべきではなかった。レント様はバーナード王家に属している為、逆らうのが怖かったというのもあるけれど。

 私は間違いを起こしてしまった……この間違いを正せる時が来るなら……本当に正したい。レント様の恐怖から逃れられるかもしれないからだ。


「ん? なにかしら……なんだか、外が少し騒がしくなっているような?」

「おいおい、本当かよ……くそ、参ったな。まさかホルム様が来るなんて……」


 教室の外にいる警護の人達がそのように話していた。この学院内にホルム様が来ている? あの第一王子殿下のホルム様……? まさか、事態を把握してセリア様やフィリップ様を助けに来てくれたのかしら? それなら……私の証言は重要になるかもしれない。

「ウィンベル! ここに居たか……いいか、しばらくこの場所から出るんじゃないぞ?」

「れ、レント様……で、でも……」


 教室の扉をいきなり開けたのはレント様だった。

「いいから君は言われた通りにしていればいいんだ!」


 それだけ言うと、レント様はすぐに出て行った。なにやら焦っているようだったけれど……。
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