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6話 氾濫と水没 その1

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 その日、バラン様は血相を変えてラタトスク男爵家にやって来た。その焦り方は尋常なものではない。


「これはこれはバラン様。いかがなさいましたでしょうか?」

「そういった世間話をしに来たのではないのだ、アズール殿! 早急にメアリにお願いしたいことがある!」


 次期当主であるアズール兄さまが最初にバラン様をもてなした。でも、バラン様は私に用事があるようで。


「どうかなさいましたか、バラン様? バラン様がそんなに慌てているなんて……婚約中でも見たことがありませんわ」

「ふむ、そうなのかメアリ?」

「はい、フォール様。今まで見たことのないレベルです」

「お、王子殿下……? こんなところになぜ……?」


 フォール様も自然に姿を現している。バラン様は流石に驚いていたけれど。


「うん? 私がここにいるのはおかしいかな?」

「いえ、決してそういうことでは……とにかく、私の話を聞いて頂きたい!」

「どうやら急を要することのようですね。わかりました、お伺いいたします」


 私達はそのままバラン様を連れて、兄さまの部屋へと入った。使用人達には入って来ないように指令を出しながら。


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「非常に申し上げにくいことなのですが……我が領地の田畑が水没したり、河川が氾濫しているようでして……」

「そんなことが……」


 聖女の祈りに関する要求だとは思っていたけれど、事態は想像以上だった。田畑の水没と河川の氾濫……? まさか、そんなことが起きているなんて。

「水没に河川の氾濫が起きるなんて……」

「ふむ、そういうことか。ヴィレッジ家としてはどういう対策を練るおつもりなのかな?」

「はい、フォール殿下。我々としては土嚢を積んだりなどといった対策を取っております。ですが、局所的な豪雨が予想以上の規模でございまして……」

「ふむ、なるほど」


 フォール様も予想以上だったのか、険しい顔つきになっている。私もフォール様から聞いていたより、大変なことを聞かされて表情が強張ってしまう。


「それでバラン殿。メアリの元に来たのはどういうワケがあるのかな?」

「うっ、それは……メアリの祈りでなんとかならないかと思いまして」

「私は話に聞いただけだが、聖女の祈りを信じず、彼女を理不尽にも追放したのではないのか?」


「……そのとおりでございます……!」


 バラン様は反論することも出来ないでいた。まあ、当たり前と言えば当たり前なんだけど。


「申し訳ございません! 謝罪につきましては後日、必ず致します。なんとか、聖女の祈りで助けて貰えませんでしょうか? このままでは私だけでなく、領民達にも大きな被害が出てしまいます」

「と、いうことらしい。メアリ、どうする?」

「フォール様、私はバラン様の領民に被害が行くことは望みません」

「君ならそういうと思っていたよ。では、バラン殿の領地へ向かうとしようか。早い方が良いだろうし」

「そうですね。バラン様、婚約破棄の件については今は忘れます。それよりも祈りを必要とされているでしょうから、向かわせていただきます」

「おお! ありがたい! では、早速!」


 バラン様を許したわけではない。でも、関係のない領民に被害が出ているというなら話は別だ。私の祈りでどこまで抑えられるかは分からないけれど。やれるだけのことはやってみようと思う。
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みんなの感想(4件)

太真
2022.07.13 太真

領内が何とかなったらまた自負の対策の方が効果が有った‼️とか言い出しそう😓。

マルローネ
2022.07.13 マルローネ

それを言い出したならクズ以下ですね

解除
Vitch
2022.07.12 Vitch

バランは一族会議で当主不適合の烙印を押されるのかな。

マルローネ
2022.07.13 マルローネ

その可能性があるかと……

解除
太真
2022.07.12 太真

領内不作になれ❗後悔で泣くのだ❗😒。💢💢

マルローネ
2022.07.12 マルローネ

領内の不作……確かにそのようになりそうです

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