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8話
しおりを挟むコルデン様の屋敷での一件は終わった。幸いにも大きな事件にはならず、コルデン様も反省したのか慰謝料も素直に支払ってくれた。しかも、増額というサプライズ付きで。
私は今、姉さまと一緒にとあるパーティーに参加している。
「しかし、驚きました。コルデン様の屋敷での一件ですが……なんというか」
「そうね。お父様と相談して、情報がコルデン様に漏れないようにしていたから。コルデン様が予想通り、婚約破棄を言ったのは良かったわ」
「驚きと言えば、コルデン様の使用人の全てを味方につけていたのは驚きでしたよ……本当に」
「ふふ、ありがとう。褒め言葉として受け取っておくわ」
姉さまが怪しく微笑んでいた。いくら、ジョンから相談されたと言っても、使用人の全てを味方にするのは難しかったはず。どういう手段を用いたのかしら。その辺りは不思議というか……謎が残ってしまったわね。
「コルデン様は私達の予想通り、告発はできなかったし、領民達からの信頼も失われたからね。このまま、伯爵の地位の剥奪もあり得そうだわ」
「伯爵の地位の剥奪……」
そう、コルデン様は自ら起こした不祥事を議会からも糾弾されることになった。当然、領民や国王陛下にも伝わることになり……今は謹慎処分を受けている。伯爵でなくなる日も近いかもしれないわね。それはそれで自業自得だし、楽しみではあった。
私にもそのくらいワクワクする権利はあるはず。そして……。
「まあ、コルデン様のことはそのくらいで良いでしょう。それよりも、ローズ。今日の日は大切にしないといけないわよ? わかっているわね?」
「はい、姉さま。まさか、侯爵様からお呼び出しを受けるとは思ってもいませんでしたけれど……緊張します」
私をこのパーティーに呼んでくれたのは、グラーフ・サンドル侯爵だった。その理由はあまりよく分かっていないのだけれど、話してみたいのだそうだ。お父様もすぐに許可を出してくれた。
「ローズ、コルデン様との婚約は完全に終わったのだから、新しい恋に生きても全く問題はないわ。グラーフ様とのパーティーをしっかりと楽しんでね?」
「姉さま……分かりました。楽しんで参ります」
姉さまはまるで、私がお見合いに向かうような口振りだった。今日は単に会話をする程度なはずだけれど。お父様もそういえば、そんな感情を出していたかな? ふと見ると、向こうの方でグラーフ様が手招きしていた。どうやら、私の存在に気付いたようだ。
「ほら、ローズ! 行ってらっしゃい!」
「はい、姉さま。行って来ます!」
この出会いが私にどんな影響をもたらすのかまだ分からないけれど……願わくば、新たな恋の始まりであることを。私は姉さまに手を振りながら、グラーフ様の元へ走って行った。
おしまい
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