女装と復讐は街の華

筆鼬

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女装と復讐 -憧憬編(序章)-

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季節は夏へと変わり…あの日は7月7日。今夜は織姫と彦星が一年に一度だけ逢うことのできる《七夕》の夜。


『…ということで、今日の"放課後課外授業"は、題して《小林織姫先生と彦星旦那さまがどう出逢い、素敵な結婚をしたのか》のエピソードをお話しします』

『…え、えぇ……』

『あらら?興味なさそうね?アハハハ』


小林先生は、そんな冗談はさておき《早瀬ヶ池で体験した自身の中学生の頃の話》について、そっと語り始めた…。


『…でね、初めて見る早瀬ヶ池という街は、当時13歳だった私にとって本当に《ここは夢の街》だと思えたの。周りの高校生や大学生のお姉さんたちが全員、テレビで見る芸能人やモデルさんやアイドルみたいに思えた…』


思い出を語るあの時の先生の表情は、当時の中学生の頃に戻ったかのように、純粋にとても若く、無邪気に見えた…。


『…だからお小遣いの無駄遣いを全部やめて、一生懸命ずーっと貯めてて…15歳の春の桜の咲く季節に、自分一人だけで早瀬ヶ池へ行って…とても可愛い白のふわふわのワンピースと、黒の革製のショートブーツと、春らしい水色に白のアクセントのハンドバッグを、勇気を出して買ったの…』


僕はウンウンと頷き、ずっと黙って聞いていた。


『…お財布を出して初めて一人で買うときは、それはもう心臓がドキドキして…凄く緊張したのを覚えてる。レジのお姉さんもお洒落で優しくて、スラッと背が高い、凄く綺麗な美人さんだったし。それで一年間貯めてたお小遣いは全部無くなっちゃったけど、でも嬉しかった…』


高校生になっても、アルバイトをしながら《瀬ヶ池通い》は続いたんだと語った小林先生。
早瀬ヶ池は行く度に、何度行っても目に映る女の子たちのお洒落な着こなしに刺激を受けて、着々と自身のファッションセンスが磨かれていくのを、肌身で実感することができたんだ…って。


『…そうやってね、早瀬ヶ池に集まる子たちみんなが、ファッションセンスを磨き合い、互いに刺激し合って、最終的にはそれが早瀬ヶ池の街全体のイメージを《女の子たち全員が可愛く綺麗になれるお洒落な街》に変えていったんだ、って先生は思ってる…んだけどね』


子どもの頃の早瀬ヶ池での自身の体験と、あの思い出の日の早瀬ヶ池への想いを、胸の奥から全部出して語り尽くした小林先生。
先生は今でも早瀬ヶ池のことが大好きだし、今でも先生にとっての憧れが褪せない街なんだということが、僕にもひしひしと伝わっていた。


『どうしよう…《いい歳》なのに、あの頃のことを思い出すと、先生泣きそうになる…あー。やだやだ』

『せ、先生は…』

『…えっ、何…?』


急に驚いて僕を見る小林先生。


『今は…早瀬ヶ池には行ってないんですか?』


先生は少し視線を落とし…頭を小さく上下に振った。


『うん…行ってないよ』

『えっ、何で!』

『だって…私、もう40を過ぎたオバサンよ…だから』


そう言って笑った先生の顔が、とても悲しく見えた…。
あの日の翌日から小林先生との《放課後課外授業》は…僕が放課後、先生を訪ねなくなったことが原因なんだけど…少しずつ減ってゆき、秋には課外授業は…もう行われることもなくなった…。






11月初旬のある日、高校の3限目が終わった休み時間…教室で、女子たちのこんな会話が聞こえてきた。


『…でね、12月の第2土曜日、お父さんがご褒美にって、早めのクリスマスプレゼントだけど好きな服を買っていいよって、私を早瀬ヶ池に連れて行ってくれることになったんだ』

『早瀬ヶ池かぁ。いいなー』
『いいなぁ七香、羨ましい…』


会話が聞こえるあっちを見ると、あの西森七香さんを真ん中に、他の3人の女子が西森さんを囲んでお喋りしてた。























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