女装と復讐は街の華

筆鼬

文字の大きさ
9 / 491
女装と復讐 -憧憬編(序章)-

page.-7

しおりを挟む
小林先生は『今は、無理してでも目標を高く設定して頑張りなさい』と僕に言った。

『あの大学なら余裕で合格できるから、そこで決めていいや…なんて手を抜くようなことを言っていたら、余裕で合格するはずだった大学さえ行けなくなる』
『学力は、どれだけ磨いて身につけても無駄にはならない。他者に盗まれるものでもない』
『誇りに思えるいい大学に入り、学びなさい。その経験は必ず君の人生の糧になるから…』と。




『…それにね、頭のいい大学に入った方が、瀬ヶ池の女の子たち』

『あの、先生…小林先生!』

『…ステキ♪って言っ…えっ?あ…ごめんなさい』


先生は自身の語りに酔い、我を忘れかけていた?…それで僕の呼びかけで我に返った。


『じゃあ…僕は、とりあえず宮端学院大学を目標にしてみます』

『えっ…うん!岩塚くんならきっと出来る!…先生は信じてるよ』


先生はまたニコッと笑ってくれたけど…僕は…。


『だけど、本当にそこまでの学力を身につけることが出来るかは…』

『大丈夫よ。あくまでも"目標"なんだから』

『…はい』

『とにかく、今は計画的に勉強頑張ろう。それで来年、3年生の2学期にもう一度、学力と照らし合わせて目標とする大学の見直しをしても、必ず間に合うから』







…それから月日が経って…高校2年の夏休み。僕は中学の頃に増して勉強生活に励んでいた。
他の同級生たちは、田舎に家がある僕とは違い、進学塾に通っていた。

進学塾に通えない僕は…田舎のこの家の自分の部屋で独り…時間の許す限り勉強を頑張るしかなかった…。

ちなみに…あの西森さんは、一学期の中間テストの成績発表では、学年では14位。クラスでは相変わらず3位だった。
僕は学年で22位。クラスでは発表ランク外の6位…。




『母さん、冷蔵庫に何か冷たい飲み…?』


夏休みに入ってから僕は気になっていた。

毎日、お昼過ぎのこの時間…母さんはリビングでテレビに釘付けになっている。
テーブルに置いてある、母さんのマグカップに注がれたサイダーは、飲まれないまま生暖かくなり、炭酸の泡も四角い氷も、もう見えなくなっていた。


『母さん…熱心に、毎日何を観てるの?』

『東京純恋ストーリー…っていうドラマ』

『…?』


母さんは振り返らずテレビを観たまま答えた。


『このドラマを観てると瀬ヶ池に通ってた、若かったあの頃を思い出すの』


僕もテレビを覗き込んでふと観た。都会らしい高層ビル街が見えた。どうやら舞台は東京?たぶん…渋谷か六本木。知らないけど。


『…どんなストーリーなの?』

『とある県の片田舎から、初めて東京へ出てきた18歳の男の子が主人公なんだけど…東京の街のど真ん中で、キョロキョロウロウロしてパニックになっちゃうの』


ふむふむ…。母さんは相変わらず、テレビに釘付けのまま説明。


『…そしたら、ある謎の美少女が声をかけてくれたんだけど…そのわりに男の子を《田舎者》呼ばわりして、バカにするの』


あー。なるほどね…それで?


『…それで何度か口喧嘩するようになって、その言葉のイントネーションがきっかけで、彼女も男の子と同じ県の出身だってことがバレちゃって…』


ドラマがCMに入った。それでようやく、母さんは振り返った。


『…実は彼女もひと月前に東京に来たばかりの田舎者で、…それで今も都会生活に不安を抱えていた彼女と男の子が、お互いを励まし支え合って…絆が生まれて…段々と2人の心が重なっていって…恋…いやん♪』


……。

再び始まったドラマを、僕はまた観た…高層ビルから望む、東京の綺麗な夜景…互いを見合い、幸せそうに笑う2人…。

あんな綺麗な大都市の夜景に可愛い女の子と…。僕は《そんなシチュエーション》にも少し憧れた…。

























しおりを挟む
感想 224

あなたにおすすめの小説

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...