女装と復讐は街の華

筆鼬

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女装と復讐 -発起編-

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僕は急にコンビニから出てきたスーツ姿の男性と、ぶつかりそうになりながらも角を曲がった。
よく見ると…大きなビルが所狭しと並んでて、ここはオフィス街っぽい。

瀬ヶ池の高層ビル街ほどじゃないけれど、凄く高いビルとビルとの隙間に、アンナさんのお洒落な白い美容院《クローシュ・ドレ》がある。

今夜も明かりを路上に注ぐ、美容院の店内が隅々まで見える大きなガラス壁。
それを見上げながら玄関へと続く階段を静かに上がり、お店の扉をゆっくりと開けた。


『いらっしゃいま……えっと、お客さま…ご来店予約、入れられていましたか…?』

『えっ?よ、予約!?』


レジの傍にいた従業員のお姉さんに、僕はそう訊かれて驚き、返答に困った。


『あ、いいのよ。尚美ちゃん』


アンナさんは、高校生くらいの若い女の子の髪を、ドライヤーで仕上げている最中だった。


『尚美ちゃん、ちょっと代わって』

『はい』


アンナさんがお客様の女の子に軽く頭を下げ『申し訳ございません』と一言言うのが聞こえた。

尚美というお姉さん従業員と交代し、僕をチラリと見ると《どうぞ。こちらへ》みたいな身振りで、あの【V.I.P. ROOM】の扉の前でアンナさんが待ってくれている。

僕を素早く特別客室に誘い込むと、アンナさんもすぐに入って扉をパタンと静かに閉めた。


『じゃ、とりあえずそこに座って』


僕は特別客室の奥にある、あの椅子にまた座った。その僕の左横に立つアンナさん。


『まず…私、まだあなたの名前を聞いてなかったわ。教えてくれる?』

『はい。岩塚信吾です』

『…見掛けによらず、凄く強そうなカッコいい名前ね』


誉めたように聞こえるが、いかにも《名前負けしている》なんて言いたい気だ。
…気にしないけど。


『じゃあ、信吾くん。私に聞いてもらいたい話ってなに?』

『その前に…アンナさんにひとつ訊いてもいいですか?』

『……えぇ。どうぞ』


僕は小さく深呼吸し息を整えて…それから話し出した。


『…アンナさんは《瀬ヶ池のメダカ》を知ってますか…?』

『瀬ヶ池のメダカ?』


アンナさんは軽く腕を組み、少し考え思い出そうとしている素振りを見せた。


『…あ、それなら一度だけ聞いたことあるかな。私がからね。でも詳しくは…』

『僕のことです』





僕が《メダカ》と呼ばれ始めるまでの経緯を、順を追って説明を始めた…。

…田舎者の僕は中学生の頃から早瀬ヶ池に憧れ、瀬ヶ池の近隣に住みたいと思うようになり、藤浦市内のとある大学に入学した…思い描いてたような一人暮らしも始め、そして…可愛い女の子の友達が欲しい、と思った…。























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