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女装と復讐 -発起編-
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詩織は、僕にニコリと微笑んだ。
『緊張だなんて…なに言っちゃってんの。そんな、めちゃくちゃ可愛い顔して』
詩織の左手がそっと、僕の右頬を優しく…ゆっくりと撫でた。
『…ほんとに緊張してるの?』
『うん…今にも、気絶しそう…』
僕は、声にならないくらい小さな声でそう言った。
詩織は心配そうな表情で、後部座席の上の自分のお尻を引きずり、ぐっと僕の方へ密着するくらい近寄ってきて、そっと僕を抱擁してくれた。
『…こんなところで緊張なんてしてたら、ここより凄いあの瀬ヶ池で《生意気な女の子たちに復讐》なんて、一生できないってば。信吾』
『…うん。だけど…』
詩織はより強く僕を抱き締める。僕は息を払って目を閉じた…。
そんな僕らの様子をアンナさんは、運転席から車内のミラー越しに、黙って見てた。
『お願い。私はあなたのパートナーでしょ?私のことを信じて。あなたに何があっても、私はあなたを護ってあげる。だから落ち着いて。行こう…信吾』
僕の耳元で囁く、詩織の優しい声…。
《お願い》《信じて》…なんて僕、生まれて初めて女の子に言われた…。
詩織はしばらく僕を抱擁したまま、僕の背中を優しくトントンと叩いてくれてた…。
『どう?…少しは落ち着いた?』
『…うん…行こう』
…本当は、まだドキドキ…完全には緊張が治まりきってはなかった。
けど、詩織の気持ちや優しさを考えたら《行こう》と即答するしかなかった。
『じゃあ、アンナさん。私たち行ってきます』
詩織は再度、ゆっくりとドアを開け、右手で繋いだ僕の左手を引っ張って、広い広い歩道へと出た。
『ほら…大丈夫でしょ?』
僕はまだ、あまり動けないまま、怯えるように首を左に右に動かして周りを見た。
間違いなく、行き交う人々の視線は僕らに注がれている。
『みんな…僕らを見てる…』
天郷大通りは今も、スーツ姿の男性や医療関係従事者、銀行員、各市営施設の関係者、その他多種多様な男女が、この広い歩道を往来している。
『見てるって…だって私たち、黙って立ってるだけでも目立っちゃう、可愛い女の子ペアなんだもん。みんな見るのも仕方ないよ。えへへっ』
詩織が愛嬌ある笑顔を見せた。
なんとなく、僕も釣られて少し笑った。
アンナさんの車が発進し、3つ目の交差点…藤浦銀行の角…を左折するのを僕らは、じっと立って見てた。
しばらくして詩織は、僕の深く被った耳当てニット帽から出た、胸元へ垂れたウィッグの長い後ろ髪を両手で優しく直してくれながら…。
『私にとっては短い距離だったけど、あなたにとっては長い長い距離だったんだよね…ごめんね』
『緊張だなんて…なに言っちゃってんの。そんな、めちゃくちゃ可愛い顔して』
詩織の左手がそっと、僕の右頬を優しく…ゆっくりと撫でた。
『…ほんとに緊張してるの?』
『うん…今にも、気絶しそう…』
僕は、声にならないくらい小さな声でそう言った。
詩織は心配そうな表情で、後部座席の上の自分のお尻を引きずり、ぐっと僕の方へ密着するくらい近寄ってきて、そっと僕を抱擁してくれた。
『…こんなところで緊張なんてしてたら、ここより凄いあの瀬ヶ池で《生意気な女の子たちに復讐》なんて、一生できないってば。信吾』
『…うん。だけど…』
詩織はより強く僕を抱き締める。僕は息を払って目を閉じた…。
そんな僕らの様子をアンナさんは、運転席から車内のミラー越しに、黙って見てた。
『お願い。私はあなたのパートナーでしょ?私のことを信じて。あなたに何があっても、私はあなたを護ってあげる。だから落ち着いて。行こう…信吾』
僕の耳元で囁く、詩織の優しい声…。
《お願い》《信じて》…なんて僕、生まれて初めて女の子に言われた…。
詩織はしばらく僕を抱擁したまま、僕の背中を優しくトントンと叩いてくれてた…。
『どう?…少しは落ち着いた?』
『…うん…行こう』
…本当は、まだドキドキ…完全には緊張が治まりきってはなかった。
けど、詩織の気持ちや優しさを考えたら《行こう》と即答するしかなかった。
『じゃあ、アンナさん。私たち行ってきます』
詩織は再度、ゆっくりとドアを開け、右手で繋いだ僕の左手を引っ張って、広い広い歩道へと出た。
『ほら…大丈夫でしょ?』
僕はまだ、あまり動けないまま、怯えるように首を左に右に動かして周りを見た。
間違いなく、行き交う人々の視線は僕らに注がれている。
『みんな…僕らを見てる…』
天郷大通りは今も、スーツ姿の男性や医療関係従事者、銀行員、各市営施設の関係者、その他多種多様な男女が、この広い歩道を往来している。
『見てるって…だって私たち、黙って立ってるだけでも目立っちゃう、可愛い女の子ペアなんだもん。みんな見るのも仕方ないよ。えへへっ』
詩織が愛嬌ある笑顔を見せた。
なんとなく、僕も釣られて少し笑った。
アンナさんの車が発進し、3つ目の交差点…藤浦銀行の角…を左折するのを僕らは、じっと立って見てた。
しばらくして詩織は、僕の深く被った耳当てニット帽から出た、胸元へ垂れたウィッグの長い後ろ髪を両手で優しく直してくれながら…。
『私にとっては短い距離だったけど、あなたにとっては長い長い距離だったんだよね…ごめんね』
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