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女装と復讐 -完結編-
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歩美さんは自信に満ちた表情で、観衆である女の子を見回していた…。
舞台の袖から、その様子をそっと見ていた僕。
そんな舞台袖に隠れる僕を、横を向いて見ていた詩織。
「信吾…出番よ。おいで…」
詩織が本当に、そう言ったわけじゃない。けど、詩織の微笑みと小さな頷きは、僕にそう語りかけてきていた…ように思えた。
僕は応えるように頷く。
『…私は金魚のお姉ちゃん…そう言われてました。けど本当は…私は金魚と血の繋がった本物のお姉ちゃんじゃありません…』
舞台では、歩美さんが語り続けていた。
僕はそれを聴きながら、静かに詩織の隣へと進んでゆく。
『岩塚くん、頑張ってきて』
舞台の上を進む僕に、そう言って僕の背中を押してくれた浅見さんを、ふと振り向いて頷いて感謝した。
《歩美さんが金魚の、本物の姉ではなかった!?》という予期しなかった発言と相まって《女子服を着た"瀬ヶ池のメダカ"》の突然の登場に、ホール内は驚きと笑い声の混ざった響めいて湧き立った。
『皆さんは、彼のことは知っていますか?彼は岩塚信吾くんと言います。去年まで信吾くんは"早瀬ヶ池のメダカ"とか言われ、笑われていたらしいですね。でも私はそんな事実を知りませんでした…』
「信吾…緊張してる?」
「んー。少しだけ」
今までで一番ってくらい顔を接近させ、囁くように話す詩織と僕。
その裏で秋良さんと啓介さんは、長机と2脚の椅子を舞台に運んで準備し、更に卓上鏡と、あの《赤い金魚専用メイクボックス》も運んで用意してくれた。
「準備できたみたいよ、信吾。メイクを始めて」
「うん。わかった」
僕は、秋良さんたちが準備してくれた椅子へと移動し座る。
そこで待っていてくれた秋良さんと啓介さん。
『頑張れよ信吾。《瀬ヶ池の金魚》の最後の晴れ舞台だ!』
『俺たちも最後まで見守ってるから。な!信吾』
『はい!』
秋良さんと啓介さんは、それだけ言うとまた舞台袖へと戻っていった。
僕はメイクボックスを左足の傍に置き、そこから必要な化粧道具…まずはベースとファンデから…を取り出して、長テーブルの上に並べる。そして手際よく前髪をヘアクリップで留めて、度のない偽メガネを外して机上に置き…はーぁ。深呼吸した。
『…女の子たち…今の彼を見て、去年のように信吾くんのことを笑えますか?笑えるんですか?…私は絶対笑いません。だって、彼は私を救ってくれたから。信吾くんは私の夢を叶えるきっかけをくれた子だから!…今も信吾くんに心から感謝してます…だから、もう信吾くんのことを笑わないで!』
…歩美さんは、心の内を全て吐き出すことができたのか、満足そうに…観衆の女の子たちに一礼することもなく…晴れた笑顔でマイクを詩織に手渡した。
『ありがとう。鮎美ちゃん』
『…はぁ。あとは宜しくね。詩織ちゃん』
『うん。任せて』
今も動揺の混ざった女の子たちの声が、地鳴りのように低くホールに響いてる。それは僕がメイクの準備を始めたときから、更に強くなった気がする。
観衆の女の子たちが《瀬ヶ池のメダカがメイク?…できるの!?って何してるの!?あのメダカ…》そう言っているようにも感じた。
まずはベースメイクから始めた僕の右に置かれた、もう一脚の椅子…そこに鈴ちゃんが静かに来て座る。
『頑張って。信吾くん』
僕は卓上鏡と睨めっこしたまま、鈴ちゃんを見ないで小さく頷いた。
『鮎美ちゃんが言ってたとおり、今ここにいる女の子たち…信吾のことを笑えますか?笑えるの?ねぇ…みんな。女の子の格好をして、急にお化粧なんか始めて…何してんの?って。男でしょアイツ…キモチワルって。そう言って、やっぱりあいつはキモいメダカだって笑いたいんだったら…笑えば?でも笑っただけ、後で後悔することになるけど…いいの?それが嫌なら黙って見てて』
舞台の袖から、その様子をそっと見ていた僕。
そんな舞台袖に隠れる僕を、横を向いて見ていた詩織。
「信吾…出番よ。おいで…」
詩織が本当に、そう言ったわけじゃない。けど、詩織の微笑みと小さな頷きは、僕にそう語りかけてきていた…ように思えた。
僕は応えるように頷く。
『…私は金魚のお姉ちゃん…そう言われてました。けど本当は…私は金魚と血の繋がった本物のお姉ちゃんじゃありません…』
舞台では、歩美さんが語り続けていた。
僕はそれを聴きながら、静かに詩織の隣へと進んでゆく。
『岩塚くん、頑張ってきて』
舞台の上を進む僕に、そう言って僕の背中を押してくれた浅見さんを、ふと振り向いて頷いて感謝した。
《歩美さんが金魚の、本物の姉ではなかった!?》という予期しなかった発言と相まって《女子服を着た"瀬ヶ池のメダカ"》の突然の登場に、ホール内は驚きと笑い声の混ざった響めいて湧き立った。
『皆さんは、彼のことは知っていますか?彼は岩塚信吾くんと言います。去年まで信吾くんは"早瀬ヶ池のメダカ"とか言われ、笑われていたらしいですね。でも私はそんな事実を知りませんでした…』
「信吾…緊張してる?」
「んー。少しだけ」
今までで一番ってくらい顔を接近させ、囁くように話す詩織と僕。
その裏で秋良さんと啓介さんは、長机と2脚の椅子を舞台に運んで準備し、更に卓上鏡と、あの《赤い金魚専用メイクボックス》も運んで用意してくれた。
「準備できたみたいよ、信吾。メイクを始めて」
「うん。わかった」
僕は、秋良さんたちが準備してくれた椅子へと移動し座る。
そこで待っていてくれた秋良さんと啓介さん。
『頑張れよ信吾。《瀬ヶ池の金魚》の最後の晴れ舞台だ!』
『俺たちも最後まで見守ってるから。な!信吾』
『はい!』
秋良さんと啓介さんは、それだけ言うとまた舞台袖へと戻っていった。
僕はメイクボックスを左足の傍に置き、そこから必要な化粧道具…まずはベースとファンデから…を取り出して、長テーブルの上に並べる。そして手際よく前髪をヘアクリップで留めて、度のない偽メガネを外して机上に置き…はーぁ。深呼吸した。
『…女の子たち…今の彼を見て、去年のように信吾くんのことを笑えますか?笑えるんですか?…私は絶対笑いません。だって、彼は私を救ってくれたから。信吾くんは私の夢を叶えるきっかけをくれた子だから!…今も信吾くんに心から感謝してます…だから、もう信吾くんのことを笑わないで!』
…歩美さんは、心の内を全て吐き出すことができたのか、満足そうに…観衆の女の子たちに一礼することもなく…晴れた笑顔でマイクを詩織に手渡した。
『ありがとう。鮎美ちゃん』
『…はぁ。あとは宜しくね。詩織ちゃん』
『うん。任せて』
今も動揺の混ざった女の子たちの声が、地鳴りのように低くホールに響いてる。それは僕がメイクの準備を始めたときから、更に強くなった気がする。
観衆の女の子たちが《瀬ヶ池のメダカがメイク?…できるの!?って何してるの!?あのメダカ…》そう言っているようにも感じた。
まずはベースメイクから始めた僕の右に置かれた、もう一脚の椅子…そこに鈴ちゃんが静かに来て座る。
『頑張って。信吾くん』
僕は卓上鏡と睨めっこしたまま、鈴ちゃんを見ないで小さく頷いた。
『鮎美ちゃんが言ってたとおり、今ここにいる女の子たち…信吾のことを笑えますか?笑えるの?ねぇ…みんな。女の子の格好をして、急にお化粧なんか始めて…何してんの?って。男でしょアイツ…キモチワルって。そう言って、やっぱりあいつはキモいメダカだって笑いたいんだったら…笑えば?でも笑っただけ、後で後悔することになるけど…いいの?それが嫌なら黙って見てて』
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