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第三話:奥様はひそかに怒りを溜めている。
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パーティー前に少し騒ぎはあったけれど、私が愚か者4人を退場させた後は皆さま、何も起こらなかったように振舞ってらして。
おかげで無事に、可愛いルーク卿とその可愛い婚約者の笑顔が見られたわ。
もう二十五にもなってるのだから、ルーク卿は『凛々しい』『男らしい』と表現したほうが良いのでしょうけれど、よちよち歩きの頃から知っていると、ね?やっぱり『可愛い』のですよねえ。立派になったわねえ、とは思いますけれどね。
「お母様、それ、ルーク卿におっしゃってないでしょうね?」
馬鹿テリーから解放されることが決まった娘は、自分の事よりもルーク卿を心配している。
「ご立派になって、とは言ったわよ?」
「それ、親戚のおばちゃん目線!」
「うまい表現ね?」
「ルーク卿が気の毒すぎる」
「あらあ、親戚のおばさま方に勝てる男がいるわけ無いでしょう?」
というと、娘は大きいため息をついて見せた。
「ルークかわいそー」
あらあら、『面倒を見てくれたお兄ちゃん』相手の呼び方に戻ったわね。
「あなたはあなたの心配をなさい」
「え、テリーの面倒見なくて良くなったのは、心配する事じゃなくてお祝い事でしょ?」
テリーには情も何も持ってないのよねえ、うちの娘。
この縁談を勝手に決めたのは、今は爵位を夫に譲った舅。勝手に私の娘を売る契約を取り付けてきた挙句、家長には何も言わずに従うのが女というものだ、と怒鳴ったので、一生黙っていてくださいなと『お願い』したのよね。それ以来、舅は言葉を発しなくなって、我が家は平和になったわ。
なにしろあんなひどい契約を結ぶような舅だったから。表舞台に立たせていたら、どれだけ被害が増えたことかしらね?黙ってくれて良かったわ。
舅が勝手に署名した契約は、娘が十八歳になったら嫁げ、それまでに婚家から渡されるべき支度金は準備しない、実家からは持参金をたくさん持たせろ、嫁に来たら里帰りはさせない、家のことは姑が全部握るから絶対に文句は言わずに従え、家族と晩餐の席を同じくするのは実家が晩餐代を全額持った場合だけ、ドレスは年に一着は作ってやるが値段に文句言うな、それ以上のものを着せてやりたければ我が家がドレス代の倍額の金を払え……などと、お嫁に出すにしたってひどい条件だった。
どう見てもあの契約は、うちの娘を端女として使用人扱いして、お金だけはうちから分捕ろうとしているだけの、うちを何だと思っているのかという内容なのよねえ。ありとあらゆる機会にうちから金を出させて、娘にはうちが出すお金の半分も使いませんと豪語してる契約よ?
すっかり舐められてるじゃないの。うちのお金は馬鹿テリーやその両親のために用意するわけじゃないのよ、娘に使うべきなのよ。
夫もこの婚姻契約には憤慨していたから、徐々に色々と削り取って契約を変更させ続けてはいたのだけれど、破棄までにはもうしばらくかかる予定だったのよね。今回の事で、一気に破棄までこぎつけたわ。
それにしても、あんな条件に合意した舅は狂っているんじゃないかしら?
我が家は侯爵で、先方は伯爵よ?
たかがカードに負けたくらいで、あんな面目丸つぶれの契約に署名するなんて、正気の沙汰ではないわね。
「それは同意するけれど、まだテリーを潰し終わったわけではないのですよ」
まだ油断して良い状態ではありませんからね。
「あのう、お母様。テリーはそのうち潰すおつもりだった?」
「あたりまえでしょう?」
舅と契約を結んだのは先代伯爵とはいえ、先代に引き続いて舐めた真似をしてくれたテリーの両親も含めて、目障りですからね。
今回は馬鹿テリーが皆様の前で、バカを極めた振る舞いをしてくれたから、計画を早める予定よ。夫がそう決めたのに反対する理由は、私にはないわね。
「うわぁ、思考回路がどう見ても魔女」
決めたのは夫なのだけれど、それよりも。
「前世の言葉が出てますよ」
「え?」
「回路、という言葉の意味は?」
「あ。そっか、ここに回路って物はないわ」
魔女の娘に生まれた女児にはたまに、異世界の記憶を持っている者がいて、私の娘もその一人。おかげで時々、他の誰にも分らない言葉を口走ってしまう。
「外では気を付けなさいな、話が通じない人と思われてしまうわよ」
「はぁい」
家の中でなら、いくら口走ったところで構わないのですけれど、ね。
おかげで無事に、可愛いルーク卿とその可愛い婚約者の笑顔が見られたわ。
もう二十五にもなってるのだから、ルーク卿は『凛々しい』『男らしい』と表現したほうが良いのでしょうけれど、よちよち歩きの頃から知っていると、ね?やっぱり『可愛い』のですよねえ。立派になったわねえ、とは思いますけれどね。
「お母様、それ、ルーク卿におっしゃってないでしょうね?」
馬鹿テリーから解放されることが決まった娘は、自分の事よりもルーク卿を心配している。
「ご立派になって、とは言ったわよ?」
「それ、親戚のおばちゃん目線!」
「うまい表現ね?」
「ルーク卿が気の毒すぎる」
「あらあ、親戚のおばさま方に勝てる男がいるわけ無いでしょう?」
というと、娘は大きいため息をついて見せた。
「ルークかわいそー」
あらあら、『面倒を見てくれたお兄ちゃん』相手の呼び方に戻ったわね。
「あなたはあなたの心配をなさい」
「え、テリーの面倒見なくて良くなったのは、心配する事じゃなくてお祝い事でしょ?」
テリーには情も何も持ってないのよねえ、うちの娘。
この縁談を勝手に決めたのは、今は爵位を夫に譲った舅。勝手に私の娘を売る契約を取り付けてきた挙句、家長には何も言わずに従うのが女というものだ、と怒鳴ったので、一生黙っていてくださいなと『お願い』したのよね。それ以来、舅は言葉を発しなくなって、我が家は平和になったわ。
なにしろあんなひどい契約を結ぶような舅だったから。表舞台に立たせていたら、どれだけ被害が増えたことかしらね?黙ってくれて良かったわ。
舅が勝手に署名した契約は、娘が十八歳になったら嫁げ、それまでに婚家から渡されるべき支度金は準備しない、実家からは持参金をたくさん持たせろ、嫁に来たら里帰りはさせない、家のことは姑が全部握るから絶対に文句は言わずに従え、家族と晩餐の席を同じくするのは実家が晩餐代を全額持った場合だけ、ドレスは年に一着は作ってやるが値段に文句言うな、それ以上のものを着せてやりたければ我が家がドレス代の倍額の金を払え……などと、お嫁に出すにしたってひどい条件だった。
どう見てもあの契約は、うちの娘を端女として使用人扱いして、お金だけはうちから分捕ろうとしているだけの、うちを何だと思っているのかという内容なのよねえ。ありとあらゆる機会にうちから金を出させて、娘にはうちが出すお金の半分も使いませんと豪語してる契約よ?
すっかり舐められてるじゃないの。うちのお金は馬鹿テリーやその両親のために用意するわけじゃないのよ、娘に使うべきなのよ。
夫もこの婚姻契約には憤慨していたから、徐々に色々と削り取って契約を変更させ続けてはいたのだけれど、破棄までにはもうしばらくかかる予定だったのよね。今回の事で、一気に破棄までこぎつけたわ。
それにしても、あんな条件に合意した舅は狂っているんじゃないかしら?
我が家は侯爵で、先方は伯爵よ?
たかがカードに負けたくらいで、あんな面目丸つぶれの契約に署名するなんて、正気の沙汰ではないわね。
「それは同意するけれど、まだテリーを潰し終わったわけではないのですよ」
まだ油断して良い状態ではありませんからね。
「あのう、お母様。テリーはそのうち潰すおつもりだった?」
「あたりまえでしょう?」
舅と契約を結んだのは先代伯爵とはいえ、先代に引き続いて舐めた真似をしてくれたテリーの両親も含めて、目障りですからね。
今回は馬鹿テリーが皆様の前で、バカを極めた振る舞いをしてくれたから、計画を早める予定よ。夫がそう決めたのに反対する理由は、私にはないわね。
「うわぁ、思考回路がどう見ても魔女」
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「前世の言葉が出てますよ」
「え?」
「回路、という言葉の意味は?」
「あ。そっか、ここに回路って物はないわ」
魔女の娘に生まれた女児にはたまに、異世界の記憶を持っている者がいて、私の娘もその一人。おかげで時々、他の誰にも分らない言葉を口走ってしまう。
「外では気を付けなさいな、話が通じない人と思われてしまうわよ」
「はぁい」
家の中でなら、いくら口走ったところで構わないのですけれど、ね。
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