よろしい、お食べなさい。

弘奈文月

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うそ

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 さっきまで嘘みたいに幸せだった。
 タカノリさんは理想の顔で、優しくて、可愛くて。
 舞い上がって、ときめいて、久しぶりにお洒落して。

 馬鹿みたいだ。
 騙されて、タカノリ君にまんまとしてやられて、どうしようもなく――どうしようもなく。

「あほかおまえはーーーーーー!!!!」

 腹が、立つ。


「ゆ、ゆいこ?」
「整形!?なんで!?」
「結子がこいつ好きだから……」
「あのねえ!芸能人は芸能人なわけ!恋人にするのにその顔が必須条件なわきゃ無いでしょ!そりゃ顔が良いからときめいたわよ!あっさり恋人にもなったわよ!でもよく考えてみろ!おまえはわたしに会いに来なかったでしょーが!」
「えっ、えっ」
「タカノリ君のことはそりゃめんどくさいなって思ってたわよ!だって高校生から会ってないのにいつまでもいつまでもメッセージは来るし実家の近況とか言ってくるし、意味が分からなかったし!ずっと好きなら会いに来なさいよ!整形する前にやることあるでしょ!?」
「はい……ごめんなさい……」
「泣くな!そうやってタカノリ君はすぐ泣く!泣き虫なのは変わってないままじゃない!あーもう、そんなぼろぼろ泣いて、ちょっとその顔で泣くと可愛すぎるからやめなさい!」
「ごめん……かわいくて……」
「ほんっとにもう」

 タカノリさん――タカノリ君は、そのままだった。
 昔から知っていたタカノリ君だ。
 うじうじしてめそめそして、友達が出来なくて、引っ込み思案で。

 ハンドタオルで目を擦り、赤くなってしまった目元に手のひらを当ててあげるとタカノリ君は漸く泣き止んだ。

「俺、結子のことずっと見てた」
「こわ」
「整形のために一年半は居なかったけど、行く前と帰ってきてからはずっと結子のこと見てた」
「だからこわいって」
「一年半の間に彼氏できてないってわかって嬉しくて、まだ処女なんだって思ったら絶対ほかの奴にやりたくなくて、嘘つきたくなかったけど早く結子と結婚したくて……」
「なんか聞き捨てならないキーワードが入ってるけど、まあいいわ」
「俺のこと、すきになってくれる?」
「わかんないなー」
「でも付き合うって」
「付き合うって言ったのはタカノリさんでタカノリ君じゃないからなー」
「どっちも俺!」

 また泣きそうになるタカノリ君を見て、深いため息が出る。
 どうにもこうにもこの子のことを突き放せない自分がいた。
 正直、わたしのために整形するなんて恐ろし受け入れ難い。
 それに、タカノリ君は決して見た目が悪かったわけではなくて、ごく普通の男の子だったのだ。
 泣き虫だからよく目を腫らしていたけれど、泣いてないときは二重だったし色も白かった。
 面倒くさいという気持ちはあっても嫌いな訳じゃなかったのに。
 告白されたときは本当に恋愛というものが自分にはしっくりこなくて、友達の話を聞いても羨ましいなんて思ったことが一度もなかった。
 そんな時期だった、というだけなのに。

「馬鹿ねぇ、将来生まれる子供の顔が違ってくるじゃない」
「結子に似てれば良いんだ」

 初恋が重すぎやしないか。腹を括ってこの子と死ぬまで付き合うか、それともここでバッサリ断ち切ってしまうか。その二択しかないと思った。
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