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しらないかお
しおりを挟む――あ、敬語。やめてください。僕のほうが年下なので
彼はそう言ってなかった?
「どうだったかな……たぶん、聞いたんじゃないかな」
タカノリさんを押しのけて自分の鞄を引き寄せる。ポケットからスマホを取り出した。
「サクラさん?」
今日のコース、前菜に蟹があった。蟹は、蟹のアレルギーは。
急いでメッセージアプリを呼び出す。なんでもいい、送るものはなんでもいい。
震えそうになる手でスタンプを押す。
ひとつ、ふたつ、みっつ――鳴らない?なんだ、そっか、勘違い――
ヴー、ヴー、ヴー。
バイブレーションの音が、きっちり三回。
わたしのスマホのものじゃない。
スタンプを送った相手は――
「タカノリ、くん……?」
「結子、本当に勘が鋭いよな」
はぁ、とため息と吐き出して、タカノリさんが困った顔でサラサラの黒い前髪をかき上げる。
「気付かなくて良かったのに」
タカノリ、甲殻類アレルギーなのよ。そんなに酷い訳じゃないんだけどね、少し症状が出るから海老とか蟹とか駄目なのよね。だから良かったら貰ってくれる?北海道にいる従兄弟が送ってくれたの。
そう言って渡されたことがある。
こんなに美味しいものが食べられないなんて可哀想だと思ったから、覚えている。
メッセージアプリを教えられなかったこと、年齢を言っていないのに年下だと断言したこと、初対面だからと苗字を名前のように偽って名乗ったら鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたこと、甲殻類アレルギーを言えなかったこと、本名を知っていること。
繋ぎ合わせたら正解は見えてくる。
でも、けど、だけど、タカノリ君は。
「わたしの知ってるタカノリ君は、そんな、顔じゃない……」
そう言ったらタカノリさんは、ちょっとだけ悲しそうに笑った。
「整形してきた。結子に好きになって欲しかったから、結子の一番好きな顔に」
――はやく、俺のことすきになって
思い出した。
中学の卒業式のあと、恋愛なんて分からないから付き合えないと告白を断ったわたしにタカノリ君はわたしにそう言って、それを最後にわたしはタカノリ君と遊ぶのをやめたんだ。
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