ELEKTEL

ハイジ

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Awake

Welcome to today that never comes

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ピピピピピピピピピピピピピピ…グゥゥゥゥン…バスッ

「おはようございます 1月1日 日曜日 元旦 今日の予定はありません。」


暗い部屋、真っ黒のカーテンの隙間から白い光が注ぐ、目覚まし時計を叩く黒髪パーマの青年。


時計は朝の4時を指している。右の壁が四角に光り、ニュースキャスターが映る。「ここ浅草寺前では今も初詣への参拝客で賑わっており…」プツッ

手元の床のボタンを押す、ジャージ姿の青年はカーテンを開ける。東京が一望できる景色が広がる。空中投影型スクリーンには大きく「2186」と書かれた3Dの雲が描かれていた。空にはドローンが飛び交い、道という血管に人間が血液のように流れ始める。まるで地球に打たれた杭のように無数の高層ビルが立ち並び、コンクリートジャングル摩天楼を形成している。人口爆発は泊まることを知らず200億人を突破している。人は住処を求めてこの狭い陸地にやってくる。200年前より住める地域が減っているというのもある。


2186年1月4日、人は高濃度な生活を求められる。何もかもを効率と利便性を求めすぎたが故に、切り替えが早く時間の価値をより重んじるようになった。


「3日から登校とかダル~」と嘆く男子生徒と友人、それを追い越す大きな青いヘッドホンをした黒髪パーマの男は、駅の階段を滑るように降りていく、歩く度に横の掲示板が追いかけてくる。こうこくだろうか、予備校の案内をしてくる。

駅構内はみな歩いていない、電磁靴により、勝手に案内してくれるのだ。各々バックの中身を確認したり、友達と話したり、ケータイを見続けるモノもいる。


ホームにつくと、電車が来て人々が交差しあい、席をとる。学校までの乗り換えは自動入力で済まされている。この車両に乗る人は、この青年と同じ制服の人が多いのはそのせいだ。数秒後モーターが起動して、全開になると凄まじい加速度で進む 、近代の電車の仕組みはこうだ。

路線ではなく目的地までの電車を探せば良く、電車そのものはAIによる自動運転はもちろんのこと、途中で車両が分解され、別の駅で目的地を目指す人と合体し、目的地近くの駅につく、つまり地下は蜘蛛の巣のように分かれ道が存在し、無数の車両が1両だけで移動し続けており、線路で走るのは極レアなケースになる。八王子から日暮里駅まで10分でつく時代だ。


名門兼青春を捨てた高校「奥大高校」都内でも有数のトップ校、ビルの1階と2階を占めている。

寒い季節だがビルに入っていく生徒は皆ラフな格好をしている。これは変温動物のように温度変化をするスーツ「Lスーツ」のおかげ、今では世界の約80%の人は当たり前のようにつけている。つけているのを前提でクーラーや暖房がないのだから。Lスーツは下着のようにつけ、肌の温度を調整する特殊な素材で出来ている。まぁ実際は電気だけど。


「えー三学期もまた皆さんの顔が見れて良かったです。ですが2年生の三学期は3年ゼロ学期、もう受験勉強は去年から始めていないと手遅れですよ―」

担任のクソ長い話が終われば数学。机の上にカードを刺し、データを送る机の上に家でのノートが出される。先生は受けたい授業を聞けば良いから、わかりにくい先生はすぐに消える。資源が底をつき、大量消費できる紙なんてない。人口で作った紙もあるが「ELEKTEL」に支配された今の時代、データ処理の方が効率がいい訳でして


二年になってからの文理選択だって簡単だ。成績が本当に良い人のみ文系への選択肢が与えられる。より良い人材の形成と世界でも戦っていける国にするには理系の生徒が必須。数十年前までは講義の嵐だったらしいが、常識やイデオロギーは時代が変えていくのだ。


この青年は授業は数学以外寝ているし、昼休みも旧棟三階の廊下の一番奥のソファで寝て音楽を聞いているだけ、人ともあまり喋らず、友達という友達は本人曰くいない…

「源代!!やっぱ古平と小間付き合ってるってよー」

「へー(棒)」

「んだよー!せっかく人が教えてんのによー」

この男、高嶺冬麻は小学校からの腐れ縁だと思っている。席が前なことにやや不満ようす。

「恋愛って人間の種の保存の為の予行練習だ。本能的行動だろ…」

「本能を自分じゃないと考えるかー派の人間だったね…また面白いこと聞かせてもらったわ!」

先生がきたせいか、席に戻っていく。冬麻とは家も近く、ほぼ唯一の話す仲と言ってもいい。1年の時から席が近いと言うのもあったかもしれない。友人関係なんて本人も気づかないうちに形成されるモノだ。


今日の授業が全て終わり、中庭では水上アート部が準備を始めたり、ポッドを連れて帰る生徒達、それぞれが今日の学校生活の苦しみを浄化するように、部活や娯楽に励もうとする。

冬麻が寄ってくる

「源代!今日はバスケ部に出るのか?」

「いや、今日はオフだ。自主練というか…」だろう。部は強制ではないがロータムは普通科で強制されており、決めないとならない。


旧校舎へ向かう2人

「バスケ辞めるわ…」

「へ?冬季大会結果良かったんじゃないのか?」

「…飽きた」

「おいおい(笑)6番つけてるやつが春の前に抜けるのはちょっとマズイんじゃないの?」

「いや、いいだろ…俺は根本的なチームワークが取れていないし、バスケ部の連中とも必要最低限は喋らない。逆に考えてみろ…俺が抜ければ一人報われるヤツが増えるんだ」

「まぁ源代が決めたならいいんじゃないの?顧問の馬田先生は泣きそうだけど…」


旧校舎三階の廊下一番奥の赤いソファの横にある。くらーい教室。元コンピュータ室らしく、コードが散らかった部屋。

現在は体育館が近く体育の際の男子の更衣室として使われている。

「先輩遅いですよ。遅刻してるじゃないすかー」

蒼髪の毛色の少女が机の上に座ったまま挨拶。謎のイントネーション。それもそのはず彼女は一つ下のイギリス人の子。

「あけおめー…クロエ頼まれたもんはやってくれたか?」

「オフコー…そっちっす」(クロエ)

指さす方には昔懐かしいパソコンが置いてある。落先生の協力がなければこんな多くのPCをゲットできなかっただろうに

「仮装電子装置で見たのか…?」(源代)

「オフコー…結構いい出来ですよ。」(クロエ)

源代は電子装置を眺める…これは凄い明未奈もここまでになったとは…

「あれ?なんか奥にいないか?」(冬麻)

冬麻はなにか探しに薄暗い夕日とPCモニターの白い光の中を歩く、


「バックドアはもう見つけてる」

源代とクロエが覗くモニターの後に、茶髪の後輩、花坂

「…ん―のようだな…これは先輩も関わったので?」

「いいや、クロエちゃんが全部やった。でもまだ、思ったどおりには作れないよう…あとはリーダー次第。それよりクロエ、ヘカラはとった方がいいわ生徒会さんが来るよ」

「…オ、オフコー…」

青い紙が金髪に戻る。髪の毛の色を擬似的に変えられる。これはI”sによる効果。


「の、のわーーーーーーっ」

冬麻がコケる、コードが引っ張られ、PCモニターが倒れる。同時に見ていたモニターの主電源ケーブルも抜けた。

「わああああああああああああああ」

クロエ、取り乱す。

「今、ワームを写していたとこだったのに!転送中だったのに!ものの見事に消えちゃったじゃないですか!!」

「い、いや…なんか足っぽいのがあるんだっての...ん?倉繁先輩?」

現代は接続をし直し、再起動椅子に座るクロエは手を合わせる。起動「前回のセッションは正常に終了しませんでし

た。一部データが破損しています。」

「え~(白目)」

ガックリと倒れるクロエ、デスクトップにはttttttttttttttttttとクロエの頭でキーボードが押されていく。


源代はクロエのイスをスライドして、隣の椅子を持ってくる。

すぐさまTRを繋いでメモリーに残った消えたデータを修復作業に入る。30秒後、目まぐるしく動く源代の指が止まり、ドキュメントに先程のデータが戻された。

「サルベージにしては速すぎる…流石です先輩」

花坂納得。


「南無八幡大菩薩!今年も春がやってきた

。受験が怖くてたまらない。冬麻君!!あけおめ!!」

「あ…あけましておめでとうございます。先輩何故ここに?」

「いや、それが話せば長い…簡単に言えば化学の課題の解説を聞きに教務室に行ったら…ここで寝ていたのだ。」

辛辣なドヤ顔の先輩…倉繁先輩はこのワークを作った先輩。何故ここにいるかは謎だが、源代の次に技量は高い。まぁ源代がイレギュラーなのはあるけど…

「冬麻 岳 探してくる」

メッセージが入り冬麻が教室を見た時はもう源代はいなかった。

オレンジ色の廊下は色んな人が歩いている。教室の一角で何かを被っている人達数名。その1人に寄って行き、源代はコードを外す。

「ウワアアア!!んだよ…折角人がいい夢見てんのによ~。つーかいきなり切るなよ!接続ミスで死ぬだろうが!!」

「長時間のシラはやめておけ、依存症だ」

「ワッタもう依存症だっつーの。幸せだったぞ、女の子いっぱいで」

そうSIRAとは仮想体験装置、脳波とIチップを上手く使って、仮想睡眠と見たい夢を見せることが出来、自由に動ける。最近は事故も少なく、仮想体験から抜け出せない依存症が増えている。この教室にいる人形のような動かない生徒もその一部。

「仕事だ」

「俺じゃなくてもいいだろ?情報提供者なら他にも…」

「何の為に振るいかけて1年まで落としたか分かってんのか?このメンバーがベストだからだ。」

岳と源代と冬麻はよく行動を共にする。源代の仕事の重要人物だ。


冬麻は倉繁先輩の話をし始めたがそんなことはどうでもいい。仕事の時間だ。我がワークの重要任務。花坂はOS制作に夢中なので放っておく。


源代は奥の席に座り、周りにクロエ、岳、冬麻が座る。TRを開き

「クライアントは1年ヒュー パークス、数学教師ホッパーが視界から消えて欲しいだと…あと限定カード返せ」

「パークス君ねー。内気な子で勉強もまずまず、確か…水戦部。」(冬麻)

「ホッパーは1年担当だったかな…アイツが顧問の陸上部からも嫌われている。女尊男卑のクソ教師だ。」(岳)

「んで?どうするんです?今回も簡単そうですけど」(クロエ)

源代はガラス越しに体育館前廊下を見る。

「岳、陸上部って今日は体育館だよな?」

「あぁ恐らく今日、地下はサッカー部が使ってるからな」

「何時に終わる?」

「恐らく、6時半…」

「ずっといる訳じゃないよな?」

「あぁ、三十分おきに監視に来るだけだ」

「そ……」

「あの人は結構すぐ怒るんだ。感情的っていうか…」(冬麻)

《報酬は5000eだ 》クライアントに送信


「冬麻はクライアントに接触して、このメモ通り動いて、岳は体育館前のトイレで男子トイレを指さしてくれればいい。クロエは1年廊下や教室に女子が残っているか確認。」

皆おもむろにたちあがり、それぞれの目的の場所に消えていった。

「今回はやりすぎじゃないですか?」

花坂、ひと段落ついたのか画面を見ながら話しかける。

「目には目を…」

イスを回し立ち上がり、源代も放送室へ向かう


水戦は最新鋭の科学技術が結集したスポーツとで生まれた今やオリンピック種目にもなった。ブリッツとも呼ばれている。

「パークス君?君だね?ちょっと来てくれるか?」

lスーツはスポーツのスポーツタイプを着た人混みから、ベンチの座り休憩しているパークスを起こす。

「請負人の方ですか?」歩きながら話す、部のマネージャーがこちらを見ている。

「今日だけ部活開けてもらえる?」

「え…それは…」戸惑う彼、いきなり休むのは世間体としてまずいからだろう。

「分かった。」

マネージャーに歩み寄り声帯変更ダイヤルを捻る。

「すいません。生徒会の者です。パークス君と少しお時間取らせてもらうように顧問の先生にお伝えいておいてください。場合によっては伸びるかもしれないので、終わる時間は言えませんけど。」ニコッ

「あ、わかりました…」


パークス君を廊下に持ってくる。源代からのチャットが飛んできている。

《 パークスの度胸を試す。演技が重要―》


午後17:37分、よし全員にチャット…

「先生~生徒会のpvを撮るので撮影いいですか?」

「ん?あぁいいですよ。」

できるだけ人気のない廊下へ案内、ありもしない撮影をし、先生の許可がないと入れない放送室にビデオカメラ返して置いてください。と断りを入れて手渡す。

向こうからパークスが走ってくる。先生にぶつかり、限定版カードを左ポケットから抜き去った。そして走っていく。

「カードもーらい!!」

パークス君は柄にもない、嬉しそうな顔で無邪気に走り奥の廊下を左に曲がる。怒ったホッパー先生。追いかけていく。

「パークスゥゥ!!」


旧校舎の三階でで源代が夕日に染まる隣のビルの窓を眺める。


廊下を曲がって階段を2回下り、パークスはトイレへ逃げ込む。岳がそれを目の前で待っていた。すぐさまTRでハック。

後ろから息を荒くしたホッパー。ここの廊下の突き当たりはトイレがあるだけ。すぐさま真っ暗の男子トイレに突入。

クロエが掃除用具の裏から出てきて、すぐさま両手でファインダーを描き、岳が明るくした室内にいる先生の写真をバレないように撮る。

ホッパー先生も困惑している。納得いかなそうにトイレから出て確認。確かに女子トイレのマークだ。男子トイレにも入ったがもぬけの殻。既に脱出済。


「夕日が強い日は目が急に暗いところに行っても見えにくい。そして単細胞の性格が裏目に出やすい…」

源代はキコキコと勉強椅子を揺らし、達成メールをクライアントに送信。


クロエが1年女子のいる教室に写真を置いておく。


翌日…

女子の噂というか情報伝達スピードは身を見張るもので、学校全体にビデオカメラ片手に女子トイレで汗ダクダクのホッパーが写った写真が出回る。

PTAやあらぬ噂をつきつけられ、先生たちもこれ以上コトを大きくしないようにすぐさまホッパーを転勤させた。近年の学校教育者の信頼が薄いのも背景にあるだろう。


「いやーしかし、あの写真別に校長先生とかでも良かったのでは?」(クロエ)

「誰があんな写真渡すんだ?自然な形で尚且社会的に消した方が楽だろ?」

(リーダー黒い…)(クロエ)

「今回楽だったが、ちょっとやりすぎやしないか?派手に動くと不味くないか?」

「たまには派手に動いても問題ない。元々あの日は先生は半分は職員会議…好都合だろ。」


我々、情報科学班は表ではただの陰キャの集いにしか見えないが、こういう遊びをしている。これを仕事だなんて言わない。お金が絡む遊びだ。

自分に酔っているのか?スリルを味わいたいのか?いや、俺は生計をたてるためだ。

いざと言う時には俺が彼らの安全を保証することにしている。

「んじゃ、俺は帰るわ。報酬はもらったしな。三学期早々一人の先生消すたァ絶好調だなお前。」

岳はそういい、源代に鍵を返す。カッポカッポと上手く履ききれていない靴で出ていった。

暫くして窓側の下を見下ろすと玄関から「古野~こんなとこにいたのかよー帰ろうぜー」といって5人組くらいで帰っていった。

岳は友達が多く、兄貴分だ。理由隔たりなく人と接するのは彼の凄い所だ。嫌いな人はいないそうだ。

「んじゃ帰ろうか僕達も」
数日たった放課後、源代は退部届けを半ば嫌がるバスケ部顧問に渡し帰るところだった。急に後ろの手を掴まれた。後ろを見ると黒いサラサラの長髪の女子生徒がいる。最も彼にとって一般の他人などどうでもいいので、学年はもちろん名前など知る由もない。

「何ですか…」

「2年7組 氷上 乃良です。あなた―」

視線を左奥の廊下へそらす、夕日が当たった廊下のガラスに誰かの人影がこちらへ向かってきている。

「誰か来るみたいなので、こっちへ。」

誰もいない消灯した物理教室へ少女は入っていった。青年はヘッドホンをつけたまま帰ろうかとも思ったが、嫌いな教師がこっちに来るので、絡まれると面倒なので物理教室に入る。

「さっきはすいません。音楽を聞いているようだったので、声をかけても聞いてもらえず、やむを得ず手を握ってしまいました。怒っているようでしたらすいません。」

ヘッドホンを外した青年は

「んで?何か?」

「あなた、平賀源代さんですか?」

「ああ」

すると少女は目の色が変わって、ちょっと近づいて言う

「やっと会えた。あなたを探していました。私外国語科にいるので、普通科と関わりがないので…お話には聞いてますよこの学年全体で数学は常にトップ、全国でも3位の数学力はまさに奇才と歌われた平賀原来さん。」

少女が近い、なんだ…コイツは…天然か狙っているのか…まぁこういう馬鹿そうなやつは放っておくに限る。こういうラブコメディのような責め方は現実ではブリっ子とでしか見られない…

「んで?要件は何なの?それだけか?」

くるっと後ろを向き、物理教室を後にする。

「平賀さん、他の生徒からお金取ってますよね?」

ヘッドホンをつけかけた時に聞いてしまった。咄嗟に平賀は

「さぁ?何のことです?キチガイな理数科かなにかが出したデマでしょう。俺は有名なんでね。」

「…いや嘘ですよね?正確にいましょうか?生徒達のIDを何らかの形でクラッキングして、報酬としてお金を貰っている…違う?」

近くに来て引っ張り戻そうと右手を掴まれる。

物理教室前の廊下に誰もいないことを確認し、戸を閉める。ズンズンと少女に迫り

「お前…何故そこまで俺を疑う」

「私はあなたがお金を貰った生徒から聞いたからです。」

「…まぁそうなることは分かっていた。その生徒の名前は?」

「言ったらどうするつもりです?」

「ただ…気になるだけだ、約束を破った奴は気になるだろ?」

「いや…教えないでおきます。お金をとる行為は卑劣ですよ。平賀源代さん。貴方から確証が得られたので生徒会室に行かッ…」

少女は動きが止まる、地面に座らせられた。源代は小型多機能時計「Timeroid」を触っている。その時の彼の目は、学校生活での曇った目ではなく、夕日の混ざったオレンジ色に光った目をしていた。

「運が良かった氷上さん、今度から依頼人には何らかの保険をかけることにするよ。暫く寝ててくれ…」

氷上乃良はその場で横たわった。源代は左の手袋を取り、掌のコードを伸ばして、氷上のTimeroidと繋いだ。

「念の為コイツにはスパイウェアを送り込んで…」

「ん…?告げ口は宇田か」

10分間カタカタTimeroidを弄り、ようやく記憶の一部を削除することに成功、氷上から「平賀源代に関するすべての記憶」を消すことに成功した。

コードを抜くと、氷上さんをこのまま物理教室に置いておくのは、まずいので人にバレないように、廊下のベンチに座らせておいた。

玄関をまたげば靴底は自動洗浄されるし、ロッカーなんて場所をとるものはない。街の通りには塾生や帰りの買い物をする主婦、仕事帰りの中高年が犇めいていた。

いつもこんなに人がいる。道が道ではなくなったのはいつからだろうか、大通りは嫌いだ。


駅を降りてからの暗い夜道も、ヘッドホンをしたまま歩く、狭い狭い路地は閉鎖感を生むが、慣れればなんということではない。後ろから気配を感じる。

「誰ですか?」

誰もいないかもしれないが、どーせ誰も見ていないので止まって一言吐いてみる。

「平賀源代…あなた偽名ね。どうして祖父を尊敬しているのかしら」

大人の女性の声がする。でも振り向きたくなかった。

「警察ですか?」

源代は歩き始めると後ろで足音が近づいてくるのがわかる。

「あなたは鍵を持っている…諦めなさい」

timeroidが動作を停止した。焦る源代、このTimeroidは特殊で改造済み、ファイヤーウォールまで作っている。そう簡単に破られる訳…

「まだまだやっていることがお子ちゃまよ。源代君。私達はプロだから」

警察か…最悪だ…足早にマンションに行こうとする。

「警察じゃないわ」

足を止め、襟髪の隙間から少し後ろを垣間見る。

「Lilaって知ってるでしょアナタなら――」

左目のフィルターがオートでかかる。体温が検知されたので彼女はアンドロイドではないことがわかる。

そしてその瞬間…0.01秒の隙もなく靴の内部のローラーが回る。自作したモノ、もちろん既に実験しているので動けることはわかっている。

そして人気のない閑静な住宅街を轟音で駆け抜ける。足が熱い…燃えるようだ。

後ろみる余裕もなく、左右右左ととにかく撒こうとした。こんな状況は初めてだが、えらく落ち着いていられた。こんな日々を送って一日たりとも安心した日はない、今日という日を待ちわびていたかのように、楽しんでいる自分がいるのを感じた…


数分後、あの場所からどのくらい離れただろうか、何人かに見られたが、記録に残ることはないだろう。歩道橋の上で電源を切り、何事もなかったかのように階段を下りる……

遠くから音がする…という次の瞬間

ズーーーズッズズッズ…電気が大きく耳に響き渡った。女が追いかけてきた。手すりに捕まるその手を睨む。

すぐさま手袋を取り、左手から電気を流す。この歩道橋は全て金属、俺の靴底はローラーがなければゴムよって電気は通らない。


「ッ!?」


声もなく女が倒れた。死ぬほどの量を流していないので、気絶くらいだろう。

女に手を伸ばそうとすると、俺は激しい痛みを首に感じ倒れた。



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感想 2

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みんなの感想(2件)

垂直二等分線

冷戦じゃ無いけど戦争は起きてるね。未来予知かな?

解除
垂直二等分線

2022年になった。中国崩壊まだかなー(笑)。

解除

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