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第三話
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「ええええええ!!!」
「騒がしい奴じゃのぅ」
「だって……だって僕アンデットになったんですよ!そりゃ騒ぎますよ、訳の分からない土地で急にお主はアンデットになったんじゃ、なんて言われたら。ていうかなんで僕がアンデットになってるんですか!!」
鬼姫は窄めた肩を戻し耳の穴から指を抜く。
「お主がアンデットになったのはいわば世界の歪みという奴じゃな」
「世界の歪みですか?」
白蛇は尋ねる。
「うむ、この世界は元いた世界と違って魔力であふれとるじゃろ?その魔力が原因で世界が捻れるんじゃよ、こちらの世界から元いた世界に行く時には特に変わりないが、元いた世界からこちらの世界に来ると種族が変わることがあるんじゃよ。お主はそれが影響じゃな」
「なんだかSF小説みたいな話ですね」
「お主……想像以上に落ち着とるな」
「ところで、なんで今から走るんですか?」
白蛇は尋ねる。
「う~ん、そうじゃのぅ理由は色々あるが情報を集めるためかのぅ」
「情報ですか?」
「うむ、今からフィーレメント帝国に向かうんじゃがな、そこには知り合いが多くての、ほとんどの奴はろくな人間じゃないが1人だけ本当の天才が居るんじゃよ」
「なるほど……天才ですか」
鬼姫は手を伸ばす。
すると小さく雷を帯びた黒いモヤの様なものが現れる。
そこに手を入れ、引き出すと手には丸い方位磁針と白蛇が何度か目にしたことのある、真っ黒な鞘に金で桜の絵が描いてある芸術品の様な日本刀を取り出す。
「なんですか、それ?」
「これかの?ゲートと言って特定の範囲内にある物ならたとえ別の世界に居たとしても、なんでも取り出したり、送ったりできる魔法じゃ。ちなみに妾の神社には全て連携させてあるぞ」
「某便利ロボットの4次元ポケットとお取り寄せバックの中間みたいな魔法ですね」
「そうじゃな」
鬼姫は方位磁針を見ながら答え、あっちじゃなと独り言をいう。
「ほれ、雑談もこの位にしてそろそろ行くとするかの?」
「そうですね」
こうして白蛇と鬼姫の5000キロを走る旅が決まった。
◇
異世界旅行記1日目
天気は晴れ、気温は高く乾燥している、おそらくサバンナの様な地域だからだろうか。
今日は8時間ほど全力で走った。
だが一切疲れなかった、どうやらアンデットになったのは本当らしい。
他にはネコ科の様な魔物5匹に襲われた。
襲われたと、言っても近づいて飛びかかろうとした瞬間に鬼姫の日本刀で首を切り飛ばされていた。
異世界旅行記2日目
天気は昨日に続いて晴れ、気温はやっぱり高く湿度も乾燥してる。
昨日は全く寝れなかった、鬼姫に聞いたところアンデットは寝なくても良いらしい。
今日も昨日と同じ大きなネコっぽい動物に襲われた。
その際に気付いたものだが、近づいて来る魔物の気配が分かる様になっていた。
全く見えない所からでも近づいて来ているのが分かるのだ。
異世界旅行記3日目
天気はやっぱり晴れ、気温も変わらず高くいつも通り乾燥している、なんだか喉が乾かないのが不思議な感覚だ。
昨日寝なくても良いことが発覚したので朝まで木刀を使って素振りをしてみた。
朝まで振り続けてると少し腕力が上がった様な感じがした。
再生力が高いおかげで筋肉が付きやすいのだろうか。
今日も朝から晩まで走った。
少しずつ草木が減ってきてるのが分かる。
走りながら近づいて来る魔物を気配を使って鬼姫に伝えていると少しづつ精度が上がってるのが分かる。
どうやらこの気配は魔力を感じ取っているらしい。
本来魔力というものは、生きているだけでも発生しているがあまりにも微量で普通の生物には察知できないそうだ。
だがアンデットは魔力を敏感に察知出来るんだとか。
今日は書きすぎた、もう寝よう……寝れないけど。
異世界旅行記4日目
今日も今日とて天気は晴れ、気温は昨日より高くなってるが、鬼姫と違って汗を掻けない。
それどころか暑さや夜の寒さによる不快感を感じなくなっている、これもアンデットになったからだろう。
自分が人じゃなくなったのを実感する。
もう草木を見ることが無くなった、砂漠だ。
人生はじめての砂漠に来たことで色々なものをみた。
元の世界にあったものだと蜃気楼や地平線、サソリこれは夜になって気付いた事だが星がとても綺麗なことに気付いた。
元の世界に無かったものだと、砂の中を進む大きなくじらの様な魔物、大きさが軽自動車程のサソリ、空を飛んでいる体の細いドラゴンの様な群れ。
全て襲いかかって来たが、ことごとく鬼姫に返り討ちに合っている。
まだ鬼姫が角を出して戦っているのを見ていない。
鬼姫の戦闘力と身体強化魔法は凄まじい物だと実感した。
異世界旅行記5日目
ずっとずーと晴れ、照りつける様な太陽の光と乾燥しきった湿度はいくら鬼姫でも堪えるらしく、定期的に和傘を刺して竹で作った水筒を飲んで休憩していた。
今日は鬼姫に魔法を見せてもらった。
戦う時に俺が今日は魔法を使ってくれと頼んでみたら、快くOKしてくれた。
鬼姫は札を使った魔法を使う。
札には変わった模様と1文字の漢字が書かれている。
書かれてある漢字によって効果が違うらしく『斬』『風』『爆』『守』の札を使っていた。
『斬』の札は文字通り触れたものを切り裂くものだった。
鬼姫はそれを投げて使っていた。
『風』の札は強風を起こすらしく魔物などに向け対象を吹き飛ばしたり、地面に投げつけて浮いた札を踏んで足場にしたりしていた。
『爆』は任意のタイミングで爆発させれるものらしい。
鬼姫はそれを投げ、攻撃に使ったり、変わった使い方だと空中で体勢を立て直したり加速する時に使ったりしていた。
『守』は盾の様に使っていた。
ただ、盾としては札一枚だと小さいので、複数枚重ねて範囲を大きくして使っていた。
今日は変わったものが見れてよかった。
異世界旅行記6日目
砂漠は本当に雨が降らない、そのせいで湿度がほとんどない。
鬼姫は竹の水筒が無くなると魔法で作り出してそれを水筒に詰めていた。
鬼姫にどうして札を使った魔法を使ってるんですか? と尋ねるとどうやら鬼姫は戦いながら魔法の術式を組み立てるのが苦手らしい、なので先に術式を書いてある札を好むそうだ。
流石に毎日走って鬼姫が近づいて来る魔物を駆除するだけを6日も続けていると書くこともなくなって来る、今日はここまでにしよう。
異世界旅行記7日目
天気はいつもと一緒、気温は40度くらい。
鬼姫に毎回フィーレメント帝国に行くときはこうやって走っているのか、と尋ねてみた。
毎回、この距離を走っているらしい、だが普段走る時は今よりもずっと速く走るらしく約30分ほどでフィーレメント帝国に到着するらしい。
凄まじい速さだ。
どうやら鬼姫は僕に走るペースに合わせてくれてる。
感謝。
◇
朝を迎えてから数時間が経過したところだ。
鬼姫と白蛇は炎天下の中砂漠の真ん中を走り続けていた。
「鬼姫! 4時の方向地中から来ます! 数は1体大きさからして鯨です」
「承知」
直後唸り声を上げ体長15メートルほどの砂色の鯨が砂の中から飛び出す。
鯨は鬼姫に目掛けて大きな口を開け向かって来る。
鬼姫はそれを空中に跳び、回避する。
そのまま鬼姫は両手に『爆』の札を数枚ずつ持ちそれを一斉に投げつける。
十を超える札が鯨に触れると爆発し、爆炎が鯨を包む。
鬼姫は余裕で着地し手をひらひらさせながら戻って来る。
「まぁ、こんなもんじゃよ」
「待ってください!」
白蛇は叫ぶ。
「まだその鯨死んでません!」
「グロモォォォォォォオオオオオオ!!!」
鯨の叫び声が爆煙をかき消し空気をビリビリと震わせる。
「ほう、しぶといのぅ」
鯨は唸り声を上げながら鬼姫に向かってくる。
鬼姫は向かってくる鯨をギリギリまで引きつけ、刀を抜く。
直後鬼姫の姿は消え、鯨の横腹に深い切り傷が走り、紫の煙が噴き出す。
鬼姫はそれを見向きもせず、振り返り鯨の頭部に飛び乗る。
そして刀を突き立てたところで鯨は絶命する。
「今度はちゃんと死んでますよ」
白蛇は、鬼姫の足元からいう。
鬼姫はトッと鯨の死体から飛び降りる。
「今回のはしぶとかったのぅ」
「ですね、でもやっぱり鬼姫は強いですね」
「お主もこれぐらいは出来るようになって貰わんとのぅ」
「まぁ、なんとか頑張りますよ」
「そうじゃな、お主にこれを渡しておくとするかのぅ」
そう言って取り出したのは2種類の札を五枚づつ。
『武』と『衛』の札。
「札? ですか?」
「うむ、ちょいと変わった札でのぅ、二つとも武器を強化する札での、軽く説明すると『武』の方が攻撃力を上げる『衛』の方が壊れにくくなるというものじゃ」
「どうやって使うんですか?」
白蛇は疑問を投げかける。
「あー、普通に巻き付けたり、貼り付けたりするだけじゃよ」
「なるほど」
「まぁ機会があれば使ってみるとよい」
「わかりました」
「そろそろマラソンにでも戻るとするかの」
めんどくさそうに鬼姫は言う。
「そうですね」
2人は走り始めた。
————時間はあれから8時間が経った。
砂漠の真ん中で鬼姫は和傘をビーチパラソルのように地面に突き立て蓙を敷いてスースーと寝息をたてて寝ている。
白蛇は日課になりつつある『異世界旅行記』を書き綴っている。
「鬼姫って、寝てる時は子供みたいに見えますね」
そんなことを白蛇はこぼす。
「今日で8日目ですか……いろいろありすぎてもっとずっと長く居たように感じますね」
白蛇は『異世界旅行記』を書き終えた。
「特にやる事もありませんね……今日は朝まで何して過ごしましょうか」
現代社会では見ることのできなかった満点の星空を眺めようと横になる。
「たまにはこういう夜も良いですね」
そんなことを考えていると1つの魔力が白蛇達に近づいてくるのを察知する。
(……マズい、速さと大きさからして狗……いや? 1匹で近づいてくるあたりサソリだろう。しかしどうする? 鬼姫を起こしましょうか……いや、鬼姫の言ってた話が本当なら超再生で死なないはず……なら、単独で戦ってみる方が人生経験にもなるでしょう)
「そうと決まると話は早いですね」
白蛇はいつも使っている木刀を2本、短刀と普通の木刀だ。
短刀には『衛』長刀には『武』の札を巻き付け構える。
数分後、時速20キロほどの速さで軽自動車ほどの大きなサソリが近づいてくるのを魔力で察知する。
「見えた」
言葉を発すると同時に白蛇は走り出した。
(最初の1撃を交わして、カウンターで沈める)
サソリと対峙するや否や、毒針の付いた尾節による突き。
白蛇はそれを紙一重で交わし、サソリの懐に潜り込む。
(このまま、一撃で決める)
足を踏ん張り体をバネの様にしならせた突き。
その突きはサソリの眉間に綺麗に命中する。
「効かない!?」
木の乾いた音が響く。
「まずい!」
白蛇はサソリのハサミで弾き飛ばされ、冷え切った砂の上を転がる。
(肋骨が折れたのがなんとなく分かりますね)
「うっ……」
唸り声を上げながらなんとか起き上がる。
時間が経過するにつれて、傷が修復していくのがわかる。
「凄いですね、この体数秒で完治してますよ……人間辞めちゃったんですね……」
ぐっと手に力を込め木刀を構え直す。
(流石に相手も無敵、というわけではない様ですね。少しですが傷が付いてます、ここを集中攻撃すれば……)
尾節についた毒針を先程の様に交わし、同じ様に突きをお見舞いしすぐさま数歩下がる。
そのまま追撃のハサミを交わしながらさらに距離をとる。
(スタミナは無限、時間さえあれば回復も出来ます。本来二刀流と言うのは防御重視の構え……僕が得意の泥仕合で倒しましょう)
攻め方が先ほどと変わらない、尾節を避けサソリの懐に入り込み眉間を突くこれを数回繰り返したところで流れが変わった。
だが、相手もどうやら馬鹿では無いらしい、懐に入った白蛇の右腕をハサミが掴んで離さない。
「グァァァァアアッッ!!!!」
挟む力は遊ぶ様にゆっくりと確実に強くなっていき、肉は裂け血は流れ骨の軋む音が聞こえる。
「はな……して……」
痛みで埋め尽くされた思考の中でなんとかしようとハサミに向かい何度も木刀を打ち付ける。
だが、力の篭ってない攻撃では傷をつけることすら出来ない。
こうしている間にも、白蛇の腕は悲鳴を上げながら砕けていく。
痛みや、恐怖が怒りに変わっていく。
その怒りの感情は木刀に流れ込み、サソリのハサミを切断し右腕を解放する。
解放された右腕は見るも無残なほどにボロボロになっていた。
腕を再生させながら白蛇はサソリの眉間を木刀で貫く。
サソリは少し暴れ回ったのち動きを止める。
「なんとか……なんとか倒せましたね」
感じないはずの疲れがどっと流れ込んでくる。
「ほう、投げ出すと思っとったらお主も意外と頑張るんじゃな」
白蛇の後ろから聞き馴染んだ声がする。
「起きてたんですね」
「まぁの、しかしお主教えてもせんのに武器強化魔法が使えるとは、お主には魔法の才能があるのかもしれんの」
「あれが武器強化だったんですか!」
白蛇は驚いた。
「そうじゃ、その魔法も魔術の基礎となる、感覚を忘れるんじゃないぞ。じゃあ妾はそろそろ寝るとする」
「騒がしい奴じゃのぅ」
「だって……だって僕アンデットになったんですよ!そりゃ騒ぎますよ、訳の分からない土地で急にお主はアンデットになったんじゃ、なんて言われたら。ていうかなんで僕がアンデットになってるんですか!!」
鬼姫は窄めた肩を戻し耳の穴から指を抜く。
「お主がアンデットになったのはいわば世界の歪みという奴じゃな」
「世界の歪みですか?」
白蛇は尋ねる。
「うむ、この世界は元いた世界と違って魔力であふれとるじゃろ?その魔力が原因で世界が捻れるんじゃよ、こちらの世界から元いた世界に行く時には特に変わりないが、元いた世界からこちらの世界に来ると種族が変わることがあるんじゃよ。お主はそれが影響じゃな」
「なんだかSF小説みたいな話ですね」
「お主……想像以上に落ち着とるな」
「ところで、なんで今から走るんですか?」
白蛇は尋ねる。
「う~ん、そうじゃのぅ理由は色々あるが情報を集めるためかのぅ」
「情報ですか?」
「うむ、今からフィーレメント帝国に向かうんじゃがな、そこには知り合いが多くての、ほとんどの奴はろくな人間じゃないが1人だけ本当の天才が居るんじゃよ」
「なるほど……天才ですか」
鬼姫は手を伸ばす。
すると小さく雷を帯びた黒いモヤの様なものが現れる。
そこに手を入れ、引き出すと手には丸い方位磁針と白蛇が何度か目にしたことのある、真っ黒な鞘に金で桜の絵が描いてある芸術品の様な日本刀を取り出す。
「なんですか、それ?」
「これかの?ゲートと言って特定の範囲内にある物ならたとえ別の世界に居たとしても、なんでも取り出したり、送ったりできる魔法じゃ。ちなみに妾の神社には全て連携させてあるぞ」
「某便利ロボットの4次元ポケットとお取り寄せバックの中間みたいな魔法ですね」
「そうじゃな」
鬼姫は方位磁針を見ながら答え、あっちじゃなと独り言をいう。
「ほれ、雑談もこの位にしてそろそろ行くとするかの?」
「そうですね」
こうして白蛇と鬼姫の5000キロを走る旅が決まった。
◇
異世界旅行記1日目
天気は晴れ、気温は高く乾燥している、おそらくサバンナの様な地域だからだろうか。
今日は8時間ほど全力で走った。
だが一切疲れなかった、どうやらアンデットになったのは本当らしい。
他にはネコ科の様な魔物5匹に襲われた。
襲われたと、言っても近づいて飛びかかろうとした瞬間に鬼姫の日本刀で首を切り飛ばされていた。
異世界旅行記2日目
天気は昨日に続いて晴れ、気温はやっぱり高く湿度も乾燥してる。
昨日は全く寝れなかった、鬼姫に聞いたところアンデットは寝なくても良いらしい。
今日も昨日と同じ大きなネコっぽい動物に襲われた。
その際に気付いたものだが、近づいて来る魔物の気配が分かる様になっていた。
全く見えない所からでも近づいて来ているのが分かるのだ。
異世界旅行記3日目
天気はやっぱり晴れ、気温も変わらず高くいつも通り乾燥している、なんだか喉が乾かないのが不思議な感覚だ。
昨日寝なくても良いことが発覚したので朝まで木刀を使って素振りをしてみた。
朝まで振り続けてると少し腕力が上がった様な感じがした。
再生力が高いおかげで筋肉が付きやすいのだろうか。
今日も朝から晩まで走った。
少しずつ草木が減ってきてるのが分かる。
走りながら近づいて来る魔物を気配を使って鬼姫に伝えていると少しづつ精度が上がってるのが分かる。
どうやらこの気配は魔力を感じ取っているらしい。
本来魔力というものは、生きているだけでも発生しているがあまりにも微量で普通の生物には察知できないそうだ。
だがアンデットは魔力を敏感に察知出来るんだとか。
今日は書きすぎた、もう寝よう……寝れないけど。
異世界旅行記4日目
今日も今日とて天気は晴れ、気温は昨日より高くなってるが、鬼姫と違って汗を掻けない。
それどころか暑さや夜の寒さによる不快感を感じなくなっている、これもアンデットになったからだろう。
自分が人じゃなくなったのを実感する。
もう草木を見ることが無くなった、砂漠だ。
人生はじめての砂漠に来たことで色々なものをみた。
元の世界にあったものだと蜃気楼や地平線、サソリこれは夜になって気付いた事だが星がとても綺麗なことに気付いた。
元の世界に無かったものだと、砂の中を進む大きなくじらの様な魔物、大きさが軽自動車程のサソリ、空を飛んでいる体の細いドラゴンの様な群れ。
全て襲いかかって来たが、ことごとく鬼姫に返り討ちに合っている。
まだ鬼姫が角を出して戦っているのを見ていない。
鬼姫の戦闘力と身体強化魔法は凄まじい物だと実感した。
異世界旅行記5日目
ずっとずーと晴れ、照りつける様な太陽の光と乾燥しきった湿度はいくら鬼姫でも堪えるらしく、定期的に和傘を刺して竹で作った水筒を飲んで休憩していた。
今日は鬼姫に魔法を見せてもらった。
戦う時に俺が今日は魔法を使ってくれと頼んでみたら、快くOKしてくれた。
鬼姫は札を使った魔法を使う。
札には変わった模様と1文字の漢字が書かれている。
書かれてある漢字によって効果が違うらしく『斬』『風』『爆』『守』の札を使っていた。
『斬』の札は文字通り触れたものを切り裂くものだった。
鬼姫はそれを投げて使っていた。
『風』の札は強風を起こすらしく魔物などに向け対象を吹き飛ばしたり、地面に投げつけて浮いた札を踏んで足場にしたりしていた。
『爆』は任意のタイミングで爆発させれるものらしい。
鬼姫はそれを投げ、攻撃に使ったり、変わった使い方だと空中で体勢を立て直したり加速する時に使ったりしていた。
『守』は盾の様に使っていた。
ただ、盾としては札一枚だと小さいので、複数枚重ねて範囲を大きくして使っていた。
今日は変わったものが見れてよかった。
異世界旅行記6日目
砂漠は本当に雨が降らない、そのせいで湿度がほとんどない。
鬼姫は竹の水筒が無くなると魔法で作り出してそれを水筒に詰めていた。
鬼姫にどうして札を使った魔法を使ってるんですか? と尋ねるとどうやら鬼姫は戦いながら魔法の術式を組み立てるのが苦手らしい、なので先に術式を書いてある札を好むそうだ。
流石に毎日走って鬼姫が近づいて来る魔物を駆除するだけを6日も続けていると書くこともなくなって来る、今日はここまでにしよう。
異世界旅行記7日目
天気はいつもと一緒、気温は40度くらい。
鬼姫に毎回フィーレメント帝国に行くときはこうやって走っているのか、と尋ねてみた。
毎回、この距離を走っているらしい、だが普段走る時は今よりもずっと速く走るらしく約30分ほどでフィーレメント帝国に到着するらしい。
凄まじい速さだ。
どうやら鬼姫は僕に走るペースに合わせてくれてる。
感謝。
◇
朝を迎えてから数時間が経過したところだ。
鬼姫と白蛇は炎天下の中砂漠の真ん中を走り続けていた。
「鬼姫! 4時の方向地中から来ます! 数は1体大きさからして鯨です」
「承知」
直後唸り声を上げ体長15メートルほどの砂色の鯨が砂の中から飛び出す。
鯨は鬼姫に目掛けて大きな口を開け向かって来る。
鬼姫はそれを空中に跳び、回避する。
そのまま鬼姫は両手に『爆』の札を数枚ずつ持ちそれを一斉に投げつける。
十を超える札が鯨に触れると爆発し、爆炎が鯨を包む。
鬼姫は余裕で着地し手をひらひらさせながら戻って来る。
「まぁ、こんなもんじゃよ」
「待ってください!」
白蛇は叫ぶ。
「まだその鯨死んでません!」
「グロモォォォォォォオオオオオオ!!!」
鯨の叫び声が爆煙をかき消し空気をビリビリと震わせる。
「ほう、しぶといのぅ」
鯨は唸り声を上げながら鬼姫に向かってくる。
鬼姫は向かってくる鯨をギリギリまで引きつけ、刀を抜く。
直後鬼姫の姿は消え、鯨の横腹に深い切り傷が走り、紫の煙が噴き出す。
鬼姫はそれを見向きもせず、振り返り鯨の頭部に飛び乗る。
そして刀を突き立てたところで鯨は絶命する。
「今度はちゃんと死んでますよ」
白蛇は、鬼姫の足元からいう。
鬼姫はトッと鯨の死体から飛び降りる。
「今回のはしぶとかったのぅ」
「ですね、でもやっぱり鬼姫は強いですね」
「お主もこれぐらいは出来るようになって貰わんとのぅ」
「まぁ、なんとか頑張りますよ」
「そうじゃな、お主にこれを渡しておくとするかのぅ」
そう言って取り出したのは2種類の札を五枚づつ。
『武』と『衛』の札。
「札? ですか?」
「うむ、ちょいと変わった札でのぅ、二つとも武器を強化する札での、軽く説明すると『武』の方が攻撃力を上げる『衛』の方が壊れにくくなるというものじゃ」
「どうやって使うんですか?」
白蛇は疑問を投げかける。
「あー、普通に巻き付けたり、貼り付けたりするだけじゃよ」
「なるほど」
「まぁ機会があれば使ってみるとよい」
「わかりました」
「そろそろマラソンにでも戻るとするかの」
めんどくさそうに鬼姫は言う。
「そうですね」
2人は走り始めた。
————時間はあれから8時間が経った。
砂漠の真ん中で鬼姫は和傘をビーチパラソルのように地面に突き立て蓙を敷いてスースーと寝息をたてて寝ている。
白蛇は日課になりつつある『異世界旅行記』を書き綴っている。
「鬼姫って、寝てる時は子供みたいに見えますね」
そんなことを白蛇はこぼす。
「今日で8日目ですか……いろいろありすぎてもっとずっと長く居たように感じますね」
白蛇は『異世界旅行記』を書き終えた。
「特にやる事もありませんね……今日は朝まで何して過ごしましょうか」
現代社会では見ることのできなかった満点の星空を眺めようと横になる。
「たまにはこういう夜も良いですね」
そんなことを考えていると1つの魔力が白蛇達に近づいてくるのを察知する。
(……マズい、速さと大きさからして狗……いや? 1匹で近づいてくるあたりサソリだろう。しかしどうする? 鬼姫を起こしましょうか……いや、鬼姫の言ってた話が本当なら超再生で死なないはず……なら、単独で戦ってみる方が人生経験にもなるでしょう)
「そうと決まると話は早いですね」
白蛇はいつも使っている木刀を2本、短刀と普通の木刀だ。
短刀には『衛』長刀には『武』の札を巻き付け構える。
数分後、時速20キロほどの速さで軽自動車ほどの大きなサソリが近づいてくるのを魔力で察知する。
「見えた」
言葉を発すると同時に白蛇は走り出した。
(最初の1撃を交わして、カウンターで沈める)
サソリと対峙するや否や、毒針の付いた尾節による突き。
白蛇はそれを紙一重で交わし、サソリの懐に潜り込む。
(このまま、一撃で決める)
足を踏ん張り体をバネの様にしならせた突き。
その突きはサソリの眉間に綺麗に命中する。
「効かない!?」
木の乾いた音が響く。
「まずい!」
白蛇はサソリのハサミで弾き飛ばされ、冷え切った砂の上を転がる。
(肋骨が折れたのがなんとなく分かりますね)
「うっ……」
唸り声を上げながらなんとか起き上がる。
時間が経過するにつれて、傷が修復していくのがわかる。
「凄いですね、この体数秒で完治してますよ……人間辞めちゃったんですね……」
ぐっと手に力を込め木刀を構え直す。
(流石に相手も無敵、というわけではない様ですね。少しですが傷が付いてます、ここを集中攻撃すれば……)
尾節についた毒針を先程の様に交わし、同じ様に突きをお見舞いしすぐさま数歩下がる。
そのまま追撃のハサミを交わしながらさらに距離をとる。
(スタミナは無限、時間さえあれば回復も出来ます。本来二刀流と言うのは防御重視の構え……僕が得意の泥仕合で倒しましょう)
攻め方が先ほどと変わらない、尾節を避けサソリの懐に入り込み眉間を突くこれを数回繰り返したところで流れが変わった。
だが、相手もどうやら馬鹿では無いらしい、懐に入った白蛇の右腕をハサミが掴んで離さない。
「グァァァァアアッッ!!!!」
挟む力は遊ぶ様にゆっくりと確実に強くなっていき、肉は裂け血は流れ骨の軋む音が聞こえる。
「はな……して……」
痛みで埋め尽くされた思考の中でなんとかしようとハサミに向かい何度も木刀を打ち付ける。
だが、力の篭ってない攻撃では傷をつけることすら出来ない。
こうしている間にも、白蛇の腕は悲鳴を上げながら砕けていく。
痛みや、恐怖が怒りに変わっていく。
その怒りの感情は木刀に流れ込み、サソリのハサミを切断し右腕を解放する。
解放された右腕は見るも無残なほどにボロボロになっていた。
腕を再生させながら白蛇はサソリの眉間を木刀で貫く。
サソリは少し暴れ回ったのち動きを止める。
「なんとか……なんとか倒せましたね」
感じないはずの疲れがどっと流れ込んでくる。
「ほう、投げ出すと思っとったらお主も意外と頑張るんじゃな」
白蛇の後ろから聞き馴染んだ声がする。
「起きてたんですね」
「まぁの、しかしお主教えてもせんのに武器強化魔法が使えるとは、お主には魔法の才能があるのかもしれんの」
「あれが武器強化だったんですか!」
白蛇は驚いた。
「そうじゃ、その魔法も魔術の基礎となる、感覚を忘れるんじゃないぞ。じゃあ妾はそろそろ寝るとする」
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冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
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ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
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この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
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異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
盾の間違った使い方
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その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
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ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
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