異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

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連載

王族婚儀は大変だぁ!

「ハルト~♪」
「どうした、ご機嫌だな。」
 千春はエンハルトの部屋の扉を開けると声を掛けた。

「あのね?」
「ん?」
「ヨリがね?」
「・・・」
「その~・・・」
「婚姻の件か。」
「・・・そう。」
「何かしてやるのか?」
「あー、うん、するけど、そう言う事ではなくてね?」
 言い難そうに千春が呟く、エンハルトはクスッと笑うと千春をソファーに促す。

「座って話そうか。」
 エンハルトに言われ、千春がソファーに座る、一緒に来たサフィーナは千春の横に立つが、エンハルトに促されサフィーナも座った。

「それで?」
 エンハルトは話を促す。

「えーっと、その、私もね?」
 恥ずかしそうに言う千春、エンハルトは千春の思いを察したのか、問いかけた。

「チハルも式を挙げたいのか?」
 エンハルトが言うと千春はコクリと頷く。

「ニホンの方は良いのか?」
「うん、日本で籍入れるのは卒業してからでも大丈夫だから、ハルトの戸籍も準備出来てるし。」
「神々には礼をしないといけないな。」
「ウカ様にはお礼してるよ?」
 異世界の事に関して、色々と手を尽くしてくれている宇迦之御魂、もちろん異世界との繋がりを重んじての行動だ、だがエンハルトは思案気味に問いかける。

「それでもだ、王国としても何かしらする必要があるだろう?」
「あるのかな。」
「あるさ。」
 エンハルトの言葉で千春も考える、だがこれと言って思いつかない。

「・・・ま、後でそれは考えよ、そのうち仕事頼まれるかもだし♪」
 笑いながら答える千春にエンハルトが苦笑いだ、サフィーナは千春をみて優しく微笑む。

「わかった、それで、ヨリの式はいつか聞いたか?」
「んにゃ、まだ確定してないらしいけど、数か月くらい先じゃないのかな。」
「・・・数か月か、チハルと一緒には無理か。」
「え?そうなの?」
 千春が首を傾げる。

「チハルとの式は確定しているから、進めている所もある、だが少なくとも1年以上先になるな。」
「え!?そんなに!?」
「それはそうだろ、各国に連絡する必要がある、領都の者にも連絡が必要だ。」
「えー、貴族にも?」
「・・・それはそうだろう、聖女と王子だぞ?それに次期国王、王妃だ、来るに決まっている。」
「もうすぐ王都ってお茶会的なのあるじゃん?」
「社交シーズンではあるが、来ない者も居る、だが婚姻の儀となれば皆が集まる、王都も賑わうからな、各ギルドにも準備が必要になる、それこそ1年前から言わなければ王国が文句を言われるぞ。」
「え~・・・めんどくたい・・・やめよっかな。」
「やめとくか?」
「・・・冗談です、式したいです。」
 笑いながら言うエンハルトに千春は素直に答える。

「父上と母上には伝えたのか?」
「まだだよ。」
「そうか、それじゃ行くか。」
「今から?!」
「ん?何か用事でもあるのか?」
「ない!」
「それじゃ行こう。」
 エンハルトが立ち上がる、そして千春とサフィーナはエイダン国王の部屋へ向かった。


-------------------------


「と、言う事です。」
 エンハルトがエイダンに伝えると、エイダンは満面の笑みで頷いた。

「そうか、それじゃ戴冠式はその後じゃな。」
「父上、それはまだ先でよろしいのでは?」
「もう良いじゃろ、そろそろ儂も引退させてくれ。」
「まだ元気でしょう。」
「・・・元気なうちに色々やりたいじゃろ。」
「父上の言いたい事はわかりますが、まだ現役でお願いします、俺もやりたい事がありますから。」
 エンハルトはエイダンの目を見て言うと、エイダンは渋々頷く。

「それで、式はいつ頃の予定じゃ?」
「チハルは早い方が良いようですが、急いでも1年程先になるかと。」
「そうじゃな、友好国も増えた、連絡も・・・いや、もっと早く出来るじゃろ。」
「・・・そうでした、魔導鉄道や飛行艇、飛空島を使い、伝書は竜騎士団で動かせますね。」
「ギルドの方も商業ギルドを中心に指示をすれば問題無いじゃろ。」
「そうですね。」
 2人の話を聞いていた千春は2人と目を合わせる。

「思ったより早く式出来るんです?」
 千春が問いかけると、エイダンは頷く。

「今までの王族の婚姻の儀を前提に考えておったわ、今は昔と違うじゃろ?」
「昔を知らないので・・・」
「ジブラロール王国の一番遠い領地じゃと、馬車で2か月はかかる、それを2~3日で動けるんじゃ。」
「おー!凄い。」
「チハル、凄いと言うが、チハルの所業じゃぞ?」
「でも私がアレ運営してる訳じゃ無いんで。」
「・・・そうじゃったな、まぁわかった、各地の貴族には伝達しておこう、詳しい日程はエンハルトが決めるんじゃろ。」
「はい、後日報告致します。」
 そう答えると、エンハルトが立ち上がる、千春はつられて立つと礼をする。

「それでは母上に伝えてまいります。」
「うむ、チハル、色々大変じゃろうが、頑張るんじゃぞ。」
「はい♪・・・え?大変?」
 エイダンはそれ以上言わず、微笑み返す、そして2人はマルグリットの部屋に向かった。


-------------------------


「母上、失礼致します。」
「おじゃましまーす!」
 エンハルト、千春、サフィーナはマルグリットの部屋に入る、ソファーにはマルグリットとアルデア、そして何故かアイトネまでが居た。

「・・・なんで揃ってるんです?」
 思わず突っ込む千春にマルグリットが答える。

「チハルの式の話をしていたのよ。」
「今から伝える予定なんですけどぉ!?」
「ええ、そこに座りなさいな。」
 マルグリットは嬉しそうにソファーへ促す、千春が座り、エンハルトが座り、その横にサフィーナが座る。

「それで?」
 マルグリットが問いかけると、千春が逆に聞き返す。

「えっと、何処まで知ってます?」
「そうねぇ、チハルが部屋でサフィーナと話しをしている所からかしら?」
「ハルトの部屋の話は・・・」
「聞いてたわよ。」
「お父様の所の話は・・・」
「もちろん聞いてたわ♪」
「説明いらないですよね。」
「そうね、今、裁縫師を呼んでるわ、ドレスの準備をしましょうね。」
「いやいやいやいやいや!それは早すぎませんか!?」
「遅いくらいよ、挙式用のメインウエディングドレス、サブドレスも必要でしょう、貴族の披露宴入場用ドレスに挨拶の時のドレス、ダンス用ドレス、夜会用ドレス、お色直しも一回はするでしょう?、それにチハルはニホンのドレスも必要でしょう?着物だったかしら、話ではシロムクって言ってたよね、あとは王国伝統のロイヤルドレス、チハルの事だから昼食はガーデンパーティーでも開くでしょうから、軽やかなドレスも必要ね、貴族が集まればその度に幾つかのお茶会用も3~4着は欲しいわね、あとは・・・」
「お母様!?ちょっとまってください!」
 指を折りながら次々と言うマルグリットに千春は驚き言葉を止める。

「あら、まだあと5~6着あるわよ?」
「そ・・・そんなに?」
「ええ、20着じゃ足りないと思うわよ。」
「えぇ、そんなに着替えるんですか。」
「当然でしょ?あなたは王国史上最も注目される花嫁なんだから。」
「・・・あのぉ。」
 おずおずと千春が問いかける。

「なにかしら♪」
「サフィーも、です?」
「当たり前でしょう、サフィーナも同じ数のドレスを作るわよ♪」
 千春は気が遠くなりそうな目でサフィーナを見る。

「サフィー・・・」
「なにかしら?」
「これが普通なの?」
「王族の式ですからね。」
「マジかぁ・・・」
 千春はサフィーナの言葉を聞き項垂れながらマルグリットを見る、そして目が合うと、物凄く嬉しそうにマルグリットは微笑んだ。


-------------------------


「アリンさん、千春も式あげるんだって。」
 頼子はアリンハンドの部屋でくつろぎながら言うと、アリンハンドは返事を返す。

「王族の式は大変ですからね、チハルさんもビックリするでしょう。」
「そうなの?」
「ええ、ヨリさんも貴族に嫁ぐので大変ですよね。」
「あー、でもベアトリクス様が『任せて!』って気合入れてたからなぁ。」
「父上も母上も喜んでいましたからね。」
「祝福されるって嬉しいね~♪」
「ええ。」
「まぁそれは良いとして、何をそんなに必死になって見てるの?」
 頼子と話をしているアリンハンド、だが視線は古びた本から離れない。

「この前の遺跡から出た本ですよ。」
「それはわかってるけど・・・面白いの?」
「はい!」
 楽し気に答えるアリンハンド、大半の物は魔導師団の研究所で解読中だ。

「魔道具の方はどうしたの?」
「概ね封印しました、フロドリックさんが魔道具の方にも詳しかったので調べてもらいました、ドラゴンでなければ死んでたかもしれない魔道具も有りましたから助かりましたよ。」
「・・・無駄にヤバいのあったもんね。」
「ええ、バレアタスの魔法を研究した副産物なのでしょうが・・・ほぼ使えば何かしら問題があるものばかりでしたね。」
「アレ作った人達何人くらい死んだんだろうね。」
「・・・考えたく無いですね。」
 2人はおのずと過去の苦労人達を想像しながら呟いた。





 
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