悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

文字の大きさ
99 / 435
ガルド城の秘密

第71話-月と狼男-

しおりを挟む
 資料室のドアを開いた先にあるさっきまで私とユリが探し物をしていた机のところに変わらずにユリはいた。
 扉が開く音に反応してこっちに視線を向けたユリと目があった。
 お互いに首を振り合った。
 どうやら向こうも収穫と言える物はなかったらしい。

「ただいま。ごめん効果的な成果はなかった。ガルド公ならなんか知ってるかなと思ったんだけどなぁ」
「私もです。三代目の事や歴代の城主の記録を見ましたが特に目ぼしいものはありませんでした」
「ほとんど最初と状況は変わってないってことね」

 目の前に置かれている謎の文書が視線に入る。
 こんなものが残っているなら何かしら残されたものがあるはずなのに、それに繋がる手掛かりがないと言うのがもどかしい。

「ところでフランソワ様、この文書で何か思う所はありませんか?」

 ユリはこの謎の文書に思う所があるらしい。
 実を言うと私もある。ただそれがなんで気になるか。それが具体的に言いづらかったから放置していた。

「実は私もなの」
「フランソワ様と気になる所が一緒だと先へと進む鍵になるかもしれませんね」
「先に私から言うわね。『月の奇跡』って所。理由を聞かれると困るけど、なんだか気になるの。唐突と言うか、書き方に違和感があるって言うかなんと言うか」
「私もです。そこの部分は余計な一言だと思うんです。なのにそこにあると言うのは違和感でした」

 確かにその一言はなくても文は成り立つ。と言うことは確かに無意味な一言になってしまう。違和感の正体はそこか。

「だとしたらこの一言を中心に考えてみましょ。どう見るべきかしら。ユリの視点で教えて」
「まずは『月の奇跡』とはなにかですね」
「言葉の通りなら月が奇跡を起こすってことよね」
「または月が作用して奇跡を起こすですね」
「なるほど、月を見ると狼男になるって言うのは月が作用してるわね」
「例えの話が分からなくてすみません。勉強不足です。ただ意味としては合ってるかと」
「いいわユリ。今の私の発言は忘れてなんだか恥ずかしいから」

 どうやらこの世界には狼男の話は存在しないらしい。

「私は後者だと思うんだけど、どう?」
「私もフランソワ様と同じで月が作用する事だと思います。むしろそれしか想像できませんので」
「確かに。月が奇跡を起こすのを頼りにしてたらいつになるかも分からないしね」

 さっきの案を仮説にする。
 そしたら問題は『何』が月に作用して奇跡を起こすか。
 
「月が作用何かが起こると仮定します。するとさっきのフランソワ様の例え話のようなものがいて残されたものを見つけられるとかはどうでしょう」

 自分の例えがまた出されてしまって恥ずかしさを覚える。できれば早く忘れて欲しい。

「そんな事もあるかもしれないけど……どうかしら。あとできればその例え話は早く忘れて頂戴ね」
「この状況ではいい例え話だとは思いますが、正直あまり現実的ではないですね」

 ユリは小さく笑う。
 絶対私の反応を見て楽しんでるわ。

「それでも、もしも、あるとしたら仮定するわ。そしたらそれがあるのはどこだと思う」
「外ですね」
「私もそう思う」

 外と言われると昨日の一件がある。ユリの見たと言う影。「まさかあの影が……狼男のような存在……。なわけないやろ!」と心の中で1人ツッコミを入れる。

「もしかしてフランソワ様の言っていた存在が私が昨日見た影の正体……と言うことはないでしょうか?」
「それはない。私が結論付けたわ、心の中でね」
「そうですね。冗談です」

 話としては冗談なのは当たり前だ。でも昨日見たと言う影、それはこの話とは切っても切れない関係じゃないかと私は内心思い出していた。

 ユリと半日程の考察を出し合っても答えにたどり着きそうな物は出なかった。
 ただ私達は「隠されているものに繋がる場所、あるいは物、何かしらが有るのは外ではないか」と言う考えは一致した。
 結局ただ考える事だけに費やして具体的なものにたどり着けなかった。
 外の探索をするにしても広い敷地内のどこに有るかは見当もつかないし、ユリの見た怪しい影の事もあって二の足を踏んでいた。
 夕食の時間になると2人で明日またこの資料室で会って考える約束をしてそれぞれの家族の元へと戻っていった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

処理中です...