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騎士と派閥と学園生活と
第125話-私の近衛騎士達-
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「なんだお前、離せ! お前には関係ないだろ!」
「俺はこれでもここに居る人の近衛騎士なんだぜ。関係ない事はないだろ」
「お前もか、こんな奴に仕えるなんて」
「なんだと?」
手は離さずそのまま鋭い眼光で男を睨みつける。
男の眉間に皺が寄っていくのを見る感じヤンが手に力を込めているようだ。男は声を出さずに我慢していた。
「そこまでだ。ヤン、もういいだろ」
「お前はそれでいいのか?」
「あぁ。でも私の仕えている主をそれ以上蔑むのはやめて頂きたい。私としても我慢の限界がありますので」
ヤンはアルの言葉で手を離す。
アルは言い終わってからでも男から目線を逸らさない。
「勝手にしろ」
状況的に不利と見たからか男はその場に捨て台詞を吐いて私達から離れていった。
周りもその様子を見て自然とばらけていく。残されたのは私の知っている顔ぶれだけしかいない。
「あ、ありがとうアル、ヤン。私は大丈夫だから」
アルに抱えられていたままの事を思い出してアルから離れた。冷静に見ると気恥ずかしい姿だったからだ。
「しかしまぁよくトラブルに巻き込まれるお嬢様な事で」
「たまたまよ」
ヤンの言葉でみんなが笑った。その場にあった少し硬い空気が和らいだような気がする。
「改めて紹介するわね。私の近衛騎士の2人、ヤンとアルよ」
「初めまして。生徒としても近衛騎士としても私の先輩となりますね。よろしくお願い致します」
「ってことはあんたもお嬢に捕まった感じか。よろしくな。しかしまぁこの短期間でよくも」
「なんかヤン酷くない? 私の努力の結果よ」
「冗談だよ」
「分かってるわよ」
この軽口な所がヤンの特徴なのは知っている。だから私も本気の言葉じゃない。
「こちらこそ宜しく。噂は聞いてるよユリさん」
「有名な御二方とお会いできて至極恐悦です。未熟者ではありますがよろしくお願い致します」
「そこまで堅くない方が僕はありがたいかな。ヤンもそうだろ」
「そうだな。堅物はアルだけで手一杯だ」
「本当に仲がいいですね。分かりました努力致します」
3人がこんなに話しているのを見ると私のこの休みの間の行動が無駄じゃなかったんだと実感できる。大変だったけどこのシーンが見れたならお釣りが来るような気もする。
「本当に3人も近衛騎士がいるなんて素敵ですね」
「そうですね、私達もいい近衛騎士を見つけないとですわねユリィ」
「えぇ、そうですわね」
この日で私の繋いできた物が繋がった気がする。でもまだ完成じゃない。まだ1人がそこにはいない。さらに欲を言えばアリスの方に傾いている人も私はここに加えたい。
だけどまずは1人ここに加えるために彼を迎えにいきたい。まだ顔を見れていない近衛騎士候補を。
「フランソワ様。ここにおられましたか」
そう声を掛けてきたのは見た覚えのある1人の少年。フランソワ達と同い年だったとは思うが少し童顔寄りなのでつい年下に見えてしまう。
「あー。確かマルズ君!」
「お名前を覚えていてもらえたのですか!?」
「当たり前じゃない。中々いないわよ貴方みたいな親切な人」
「そう言って頂けると光栄です」
照れながら頭をかく動作がまた愛くるしい。
「ところでどうしたの、私を探してた?」
「そうでした。先程校舎裏にてオーランを見つけましたのでご報告に。前回の交流回で探していたと記憶にありましたので」
「えっ! ありがとう。やるわね~。貴方も諜報部的な役割で私の近衛騎士になる?」
「お戯れを。ありがたいお言葉ですが、身に余る物と存じます!」
「貴方アルと気が合いそうよね。でもありがとう今日こそ探そうと思ってたのよ。もし、この後用がなければここであそこにいる3人にアピールしておきなさい。将来のためにね」
「あ、ありがとうございます。ご迷惑にならない程度でご挨拶しておきます!」
素直でいい子だと思う。年上キラーって言う感じがひしひしとするわ。
「ねぇ、私今から1人会いたい人がいるから行ってくるわね。みんなはここで親交を深めてて頂戴!」
「フランソワ様! 待ってください。道に迷わない様に私もお供します」
私は言い残すことだけ言い残してその場を離れた。その後ろを慌ててついてくるユリ。
後ろを見ると早速ヤンとアンにいじられているマルズ君がいた。
「俺はこれでもここに居る人の近衛騎士なんだぜ。関係ない事はないだろ」
「お前もか、こんな奴に仕えるなんて」
「なんだと?」
手は離さずそのまま鋭い眼光で男を睨みつける。
男の眉間に皺が寄っていくのを見る感じヤンが手に力を込めているようだ。男は声を出さずに我慢していた。
「そこまでだ。ヤン、もういいだろ」
「お前はそれでいいのか?」
「あぁ。でも私の仕えている主をそれ以上蔑むのはやめて頂きたい。私としても我慢の限界がありますので」
ヤンはアルの言葉で手を離す。
アルは言い終わってからでも男から目線を逸らさない。
「勝手にしろ」
状況的に不利と見たからか男はその場に捨て台詞を吐いて私達から離れていった。
周りもその様子を見て自然とばらけていく。残されたのは私の知っている顔ぶれだけしかいない。
「あ、ありがとうアル、ヤン。私は大丈夫だから」
アルに抱えられていたままの事を思い出してアルから離れた。冷静に見ると気恥ずかしい姿だったからだ。
「しかしまぁよくトラブルに巻き込まれるお嬢様な事で」
「たまたまよ」
ヤンの言葉でみんなが笑った。その場にあった少し硬い空気が和らいだような気がする。
「改めて紹介するわね。私の近衛騎士の2人、ヤンとアルよ」
「初めまして。生徒としても近衛騎士としても私の先輩となりますね。よろしくお願い致します」
「ってことはあんたもお嬢に捕まった感じか。よろしくな。しかしまぁこの短期間でよくも」
「なんかヤン酷くない? 私の努力の結果よ」
「冗談だよ」
「分かってるわよ」
この軽口な所がヤンの特徴なのは知っている。だから私も本気の言葉じゃない。
「こちらこそ宜しく。噂は聞いてるよユリさん」
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「そこまで堅くない方が僕はありがたいかな。ヤンもそうだろ」
「そうだな。堅物はアルだけで手一杯だ」
「本当に仲がいいですね。分かりました努力致します」
3人がこんなに話しているのを見ると私のこの休みの間の行動が無駄じゃなかったんだと実感できる。大変だったけどこのシーンが見れたならお釣りが来るような気もする。
「本当に3人も近衛騎士がいるなんて素敵ですね」
「そうですね、私達もいい近衛騎士を見つけないとですわねユリィ」
「えぇ、そうですわね」
この日で私の繋いできた物が繋がった気がする。でもまだ完成じゃない。まだ1人がそこにはいない。さらに欲を言えばアリスの方に傾いている人も私はここに加えたい。
だけどまずは1人ここに加えるために彼を迎えにいきたい。まだ顔を見れていない近衛騎士候補を。
「フランソワ様。ここにおられましたか」
そう声を掛けてきたのは見た覚えのある1人の少年。フランソワ達と同い年だったとは思うが少し童顔寄りなのでつい年下に見えてしまう。
「あー。確かマルズ君!」
「お名前を覚えていてもらえたのですか!?」
「当たり前じゃない。中々いないわよ貴方みたいな親切な人」
「そう言って頂けると光栄です」
照れながら頭をかく動作がまた愛くるしい。
「ところでどうしたの、私を探してた?」
「そうでした。先程校舎裏にてオーランを見つけましたのでご報告に。前回の交流回で探していたと記憶にありましたので」
「えっ! ありがとう。やるわね~。貴方も諜報部的な役割で私の近衛騎士になる?」
「お戯れを。ありがたいお言葉ですが、身に余る物と存じます!」
「貴方アルと気が合いそうよね。でもありがとう今日こそ探そうと思ってたのよ。もし、この後用がなければここであそこにいる3人にアピールしておきなさい。将来のためにね」
「あ、ありがとうございます。ご迷惑にならない程度でご挨拶しておきます!」
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「ねぇ、私今から1人会いたい人がいるから行ってくるわね。みんなはここで親交を深めてて頂戴!」
「フランソワ様! 待ってください。道に迷わない様に私もお供します」
私は言い残すことだけ言い残してその場を離れた。その後ろを慌ててついてくるユリ。
後ろを見ると早速ヤンとアンにいじられているマルズ君がいた。
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