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騎士と派閥と学園生活と
第166話-信頼できる?-
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学校から学院の方へと戻っていつもの馬車乗り場へと向かう。
アレンが今日も待ってくれているはず。私の来る時間が分からなくてもしっかりと待ってくれているアレンには感謝の心しかない。
それが仕事とは言え、私としてはどうしても気を遣ってしまう。
馬車乗り場へと向かう道にどこかで見覚えのある後ろ姿が目に入ってくる。
後ろ姿に見覚えがあるわけではない、ただ、雰囲気がよく似ていた。
背後の人の気配に気づいたのか振り返ると、その人はまさしく私の想像していた人だった。
「あら、お疲れ様フランソワさん」
会釈で返事をして、彼女へと駆け寄る。
「エルンさんも今帰りですか?」
「そうよ。交流会も数を重ねると飽きてきて、つい早く帰ってしまうのよね」
そう言ってエルンさんは笑う。
「でも、今日は楽しいものを遠目に見れたから良かったかも」
「楽しいもの?」
「貴方達のことよ。総長への啖呵面白かったわ」
私は気づかなかったけど、私達の事を見られていたらしい。
「ただの勢いですよ」
「それでもいいのよ。結果的に面白かったんだから」
「エルンさんはさっきの事を見てどう思いました?」
あの騒ぎを見ていて彼女はどう思ったのか気になってしまい、私は聞いていた。
すぐに返事はこなかった。
じっとこっちを見て言葉を頭の中で選んでいる様にも見えた。
「どうって?」
返答は質問だった。
「次の立候補者としての見方です」
「そうね、どうかと言われたら私達には追い風じゃないかしら。少しでも総長の向かい風が吹いたのなら良いことよね」
当たり前の返答。普通に考えたらそうだろう。
「でも聞きたいのはそんな答えじゃない。そんな所かしらね」
心の中を読まれた気がした。それか私の気づかない内に表情に出ていたのかもしれない。
「気になる事があるのなら言ってみると楽になるわよ」
「私はエルンさんとジェフさんが二人で組んで今の総長候補を落として総長になるために動いていると思っていたんです」
「そうなのね」
「はい。ただ気になる事があって」
「なにかしら?」
私がアンの話を、エルンさん達の話を聞いて思っていた事があった。
「二人で合わせ票で勝っても誰が総長の座になるのかが分からなかったんです」
「まずそもそも私とジェフは言ってた通り敵同士よ。そもそもその考えが違うのよ」
ため息混じりに答える。
それは本心からであると言われている様な気分になる。
それも間違いないだろう。でも、私はアンの言葉が、考えが全て間違っているとは思わなかった。
だって、そうじゃないとエルンさんとジェフさんがあの場に一緒にいる必要はないからだ。
「なんだかんだで結託しているものだと私は思ってたんです」
「今は?」
「違います」
あくまで、総長側の票を超えるための結託なのだと私は考えていた。
だけど、どこか違和感があった。それは総長側の勢力を上回った時に起こる事。
総長勢力を上回っても、エルンさん、ジェフさんの合同チームが割れたら結局意味がなくなる。
それは即ち、総長側の勝利になる。
「結託はしていると思います。ただ、その先の取り決めが分からなかったんです。それが気になってる事です」
「私の答えは信頼に値するかしらね」
「判断材料には値すると思います」
「そう。それじゃあ教えてあげない」
悪戯をした後の様な小悪魔的な笑みでの返答は私が男ならダメだと分かっていても、彼女に惹かれていたかも知れない。
「でも一つだけ教えてあげる。ジェフは本気で二人で勝つつもりよ」
「そうですか。ありがとうございました」
「そろそろ行くわね。またねフランソワさん」
手を振りながら去っていく彼女に私も負けじと手を振り返す。だけど、彼女程優雅には振れていない気がする。
最後の言葉は彼女から見たジェフさんの事だから嘘ではないと思った。
だからその言葉を信じるなら、彼女は勝つつもりだ、しかも、一人勝ち。そんな方法は一つしかない。ジェフ派の票も入れて、浮動票も獲得する。
となれば、多分彼女は水面下で動いて選挙の日までジェフさんの票を少しずつ自分側に勧誘して入れていくだろう。
合同チームに見せかけた裏切りの一人チーム。それが多分彼女の描いている勝ち方。
本心を聞かないと分からないけど、彼女の言葉から聞くにそんなとこだろう。
あの年相応に見えない、魔性の顔の下はえげつない事を考えているのだと思うと、同じ女性ながら思わず言ってしまう。
「女って怖いなぁ……」
アレンが今日も待ってくれているはず。私の来る時間が分からなくてもしっかりと待ってくれているアレンには感謝の心しかない。
それが仕事とは言え、私としてはどうしても気を遣ってしまう。
馬車乗り場へと向かう道にどこかで見覚えのある後ろ姿が目に入ってくる。
後ろ姿に見覚えがあるわけではない、ただ、雰囲気がよく似ていた。
背後の人の気配に気づいたのか振り返ると、その人はまさしく私の想像していた人だった。
「あら、お疲れ様フランソワさん」
会釈で返事をして、彼女へと駆け寄る。
「エルンさんも今帰りですか?」
「そうよ。交流会も数を重ねると飽きてきて、つい早く帰ってしまうのよね」
そう言ってエルンさんは笑う。
「でも、今日は楽しいものを遠目に見れたから良かったかも」
「楽しいもの?」
「貴方達のことよ。総長への啖呵面白かったわ」
私は気づかなかったけど、私達の事を見られていたらしい。
「ただの勢いですよ」
「それでもいいのよ。結果的に面白かったんだから」
「エルンさんはさっきの事を見てどう思いました?」
あの騒ぎを見ていて彼女はどう思ったのか気になってしまい、私は聞いていた。
すぐに返事はこなかった。
じっとこっちを見て言葉を頭の中で選んでいる様にも見えた。
「どうって?」
返答は質問だった。
「次の立候補者としての見方です」
「そうね、どうかと言われたら私達には追い風じゃないかしら。少しでも総長の向かい風が吹いたのなら良いことよね」
当たり前の返答。普通に考えたらそうだろう。
「でも聞きたいのはそんな答えじゃない。そんな所かしらね」
心の中を読まれた気がした。それか私の気づかない内に表情に出ていたのかもしれない。
「気になる事があるのなら言ってみると楽になるわよ」
「私はエルンさんとジェフさんが二人で組んで今の総長候補を落として総長になるために動いていると思っていたんです」
「そうなのね」
「はい。ただ気になる事があって」
「なにかしら?」
私がアンの話を、エルンさん達の話を聞いて思っていた事があった。
「二人で合わせ票で勝っても誰が総長の座になるのかが分からなかったんです」
「まずそもそも私とジェフは言ってた通り敵同士よ。そもそもその考えが違うのよ」
ため息混じりに答える。
それは本心からであると言われている様な気分になる。
それも間違いないだろう。でも、私はアンの言葉が、考えが全て間違っているとは思わなかった。
だって、そうじゃないとエルンさんとジェフさんがあの場に一緒にいる必要はないからだ。
「なんだかんだで結託しているものだと私は思ってたんです」
「今は?」
「違います」
あくまで、総長側の票を超えるための結託なのだと私は考えていた。
だけど、どこか違和感があった。それは総長側の勢力を上回った時に起こる事。
総長勢力を上回っても、エルンさん、ジェフさんの合同チームが割れたら結局意味がなくなる。
それは即ち、総長側の勝利になる。
「結託はしていると思います。ただ、その先の取り決めが分からなかったんです。それが気になってる事です」
「私の答えは信頼に値するかしらね」
「判断材料には値すると思います」
「そう。それじゃあ教えてあげない」
悪戯をした後の様な小悪魔的な笑みでの返答は私が男ならダメだと分かっていても、彼女に惹かれていたかも知れない。
「でも一つだけ教えてあげる。ジェフは本気で二人で勝つつもりよ」
「そうですか。ありがとうございました」
「そろそろ行くわね。またねフランソワさん」
手を振りながら去っていく彼女に私も負けじと手を振り返す。だけど、彼女程優雅には振れていない気がする。
最後の言葉は彼女から見たジェフさんの事だから嘘ではないと思った。
だからその言葉を信じるなら、彼女は勝つつもりだ、しかも、一人勝ち。そんな方法は一つしかない。ジェフ派の票も入れて、浮動票も獲得する。
となれば、多分彼女は水面下で動いて選挙の日までジェフさんの票を少しずつ自分側に勧誘して入れていくだろう。
合同チームに見せかけた裏切りの一人チーム。それが多分彼女の描いている勝ち方。
本心を聞かないと分からないけど、彼女の言葉から聞くにそんなとこだろう。
あの年相応に見えない、魔性の顔の下はえげつない事を考えているのだと思うと、同じ女性ながら思わず言ってしまう。
「女って怖いなぁ……」
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