284 / 435
Time can only move forward
第255話-微熱混じりの吐息-
しおりを挟む
お昼の時間はいつも通り平和に過ぎていく。持ち寄ったそれぞれのお弁当を食べての昼食。ここで私は交流会についての提案を前の時間と同じ様にした。
「今度の交流会だけどそれぞれ各自で参加しましょう」
みんな反応は変わらない。みんなフランソワと行動するつもりだったし、理由を伝えても渋々と言った様子ではあるけど納得してくれた。
「皆は誰か注目してる人とかいるの?」
「初めての参加ですので残念ながら」
「私もです。特には」
アンとユリィは顔を見合わせて「ねぇ……」と言った様子で首を横に振った。
「私も特には……」
アリスが言った。
「へーそうなんだ」
「フランソワ様は如何ですか?」
「実は私もよ」
アリスの問いには嘘をついた。
「フランソワ様にふさわしい方がいるのでしょうか」
「そうねぇ。いるかも知れないし、いないかも知れないわね。でも、それを探しにいくのよ」
「そしたらやはり皆さまで回りませんか?」
「だめよアリス。さっき言ったでしょ」
「残念です」
アリスには予定がない。これをチャンスと見るか、はたまた別の感情で捉えるか。悩ましく思う。
そして段々と私の胸の内に不安な気持ちが積み重なってくる。
「そう言わないで。将来のための事なんだから」
「それもそうですわね。流石はフランソワ様ですわ」
アンはちゃんと納得してくれたのかいつもの調子でフランソワ万歳状態になっていた。
ユリィはそれを見て苦笑いしながら賛同してくれている。
「だから今度の交流会の時だけは別行動。いいわね」
「フランソワ様がそう言われるのでしたらこれ以上は我儘を言えません」
「そうですわ。アリスさんあまりフランソワ様を困らせてはいけませんわ!」
「はい。肝に銘じておきます」
「本当に二人は仲が良くなったわね」
アンとアリスの二人はこの時間でも仲良くなっていた。変わることもあれば変わらない事もあるんだとしみじみ思ってしまう。
昼食が終わり休み時間の終わりも近づいて来た。教室へと戻るまでの間にアンとユリィの目を盗んでアリスにこっそりと耳打ちをする。
「そうだ。代わりと言ってはなんだけだアリス今日の放課後少し時間を貰えないかしら」
「はい、喜んで。どうされたのですか?」
「少し教えて欲しいことがあるの」
アリスは何事かと思っているのか不思議そうな顔をしている。困り顔も可愛いものだ。羨ましい。
「私で力になれるのであれば」
アリスの耳打ちはすごくこそばゆい。さっき同じようなものを食べたはずなのに吐息の香りは私と同じには思えない。それに吐息は微かな熱を持っていて私の肌を伝染していく。
耳打ちをしたことでお互いだけの秘密を共有して少し悪いことをしているかのような錯覚に落ちる。
「それじゃあまた放課後にさっきの場所で……」
アリスはご機嫌の表情で教室へと戻っていった。
「今度の交流会だけどそれぞれ各自で参加しましょう」
みんな反応は変わらない。みんなフランソワと行動するつもりだったし、理由を伝えても渋々と言った様子ではあるけど納得してくれた。
「皆は誰か注目してる人とかいるの?」
「初めての参加ですので残念ながら」
「私もです。特には」
アンとユリィは顔を見合わせて「ねぇ……」と言った様子で首を横に振った。
「私も特には……」
アリスが言った。
「へーそうなんだ」
「フランソワ様は如何ですか?」
「実は私もよ」
アリスの問いには嘘をついた。
「フランソワ様にふさわしい方がいるのでしょうか」
「そうねぇ。いるかも知れないし、いないかも知れないわね。でも、それを探しにいくのよ」
「そしたらやはり皆さまで回りませんか?」
「だめよアリス。さっき言ったでしょ」
「残念です」
アリスには予定がない。これをチャンスと見るか、はたまた別の感情で捉えるか。悩ましく思う。
そして段々と私の胸の内に不安な気持ちが積み重なってくる。
「そう言わないで。将来のための事なんだから」
「それもそうですわね。流石はフランソワ様ですわ」
アンはちゃんと納得してくれたのかいつもの調子でフランソワ万歳状態になっていた。
ユリィはそれを見て苦笑いしながら賛同してくれている。
「だから今度の交流会の時だけは別行動。いいわね」
「フランソワ様がそう言われるのでしたらこれ以上は我儘を言えません」
「そうですわ。アリスさんあまりフランソワ様を困らせてはいけませんわ!」
「はい。肝に銘じておきます」
「本当に二人は仲が良くなったわね」
アンとアリスの二人はこの時間でも仲良くなっていた。変わることもあれば変わらない事もあるんだとしみじみ思ってしまう。
昼食が終わり休み時間の終わりも近づいて来た。教室へと戻るまでの間にアンとユリィの目を盗んでアリスにこっそりと耳打ちをする。
「そうだ。代わりと言ってはなんだけだアリス今日の放課後少し時間を貰えないかしら」
「はい、喜んで。どうされたのですか?」
「少し教えて欲しいことがあるの」
アリスは何事かと思っているのか不思議そうな顔をしている。困り顔も可愛いものだ。羨ましい。
「私で力になれるのであれば」
アリスの耳打ちはすごくこそばゆい。さっき同じようなものを食べたはずなのに吐息の香りは私と同じには思えない。それに吐息は微かな熱を持っていて私の肌を伝染していく。
耳打ちをしたことでお互いだけの秘密を共有して少し悪いことをしているかのような錯覚に落ちる。
「それじゃあまた放課後にさっきの場所で……」
アリスはご機嫌の表情で教室へと戻っていった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる