悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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黒い獣

第329話-ガルド城での思い出-

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 私たちは怪訝そうな顔をするバレルさんに事のあらすじを話した。何故私がバレルさんを知っているのか、そして今の私たちの状況と目的を。

「話は分かった。本当にあんたがあのフランソワ嬢だったのか……。話を聞いた上でもなかなか信じられないもんだな……。後、診察の結果だが少し生命力が落ちてるように見えるから治療するぞ。腕出せ」

 まぁ確かに実際こんな話をいきなりされてすぐに納得するのは難しいだろう。

「腕?」
「治癒魔法の応用だな」
「応用?」

 魔法に対する知識はあっても、魔法の種類などは私にはまだ分からない。簡単に説明されても私には分からない。

「あぁそうだ。治癒魔法ってのは生命力を刺激して傷を早く治したりする。簡単に言えば俺の生命力をあんたに渡す、そしたら少しは楽になるだろ」
「い、いまいち理解出来てないです」
「まぁとりあえずやってみるぞ」

 バレルさんに捕まれた腕から生命力という名の魔法が私に伝わってくるのが分かる。プラシーボ効果かもしれないけどなんとなく元気と体力が戻った気がする。気怠かった身体が少し楽になってきた。

「しかし、こんなになるなんて魔法の使いすぎだな。さっき聞いた魔法の使い過ぎには気をつけろ」

 バレルさんには全てを話した。この人は信用できる人だから。私とユリィが精霊憑きである事も理解してくれている。

「使わないつもりです。あれに関してはどんな魔法なのかも分かっていないので」
「ならいい。後遺症の残る魔法なんて使わないに越した事ない。ほら診察は終わりだ。外の二人も呼んできな。飯でも食いながら少し話をしようぜ」

 そう言って私に向ける視線はまだ疑っているように思える。

「ガルド城の地下で灯りを消す作戦をしたのは私です。終わった後に日記も読みましたよ」

 視線を返すようにしてあのガルド城での事を言ってみた。
 この事はあの場にいた人しか知らない事だ。

「分かった、分かってるって。ただまぁなかなか理解が及ばねぇ、特に精霊憑きは初めてでな。俺の知ってる魔法の範疇を越えちまってるよ」

 頭をかきながらぼやくバレルさん。

「そんなに珍しいんですか?」
「あぁ、俺は少なくとも初めて聞いたな。まぁみんな言わないだけなんじゃないか。最近物騒だしな」

 少し前の夜の出来事を思い出す。

「あー。そしたら外の二人とこの中で待っててくれ。昼飯とってくるからよ」

 私が返事をする前にテントの仕切りが開けられた。開けた人はヤンでもユリィでもなかった。

「あなた。お昼を取りに来ないから心配するじゃないですか」

 手におぼんを乗せた小柄な女性だ。

「あー悪い。今行こうとしてとこだ」

 自然とおぼんを受けとるバレルさんが来た女性に追加で四人分のお昼を用意する様に伝えている。
 いや、それよりも気になっていた言葉が聞こえた。

「あなた……?」
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