悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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時を操った少女

第382話-今を生きる-

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「さて、僕は確かめたかった事は終わったから出ておくよ」

 しんみりとした空気を読まない言葉に苛立ちを覚えた。
 こう言う性格であるのは知っていたけど、それを理解していても私には抑えきることのできないことだった。

「でも、君……不貞腐れないで生きていこうよ。いつか奇跡が起こるかもしれない。精霊の機嫌なんて分からないんだ」

 無責任な言葉に続いて出てきたのは励ましの言葉だった。それもさっきまでの口調とは違う。
 優しく言い聞かせるように言っている。

「もちろん、そのつもりです」

 アリスは笑いながら返した。私の勝手な怒りはただの空回りだったんだろうか。
 アリスが受け入れている以上私たちの言葉は届かないのかもしれない。

「それじゃあね。お茶ご馳走様」

 残っていたお茶を飲み切るとテールさんはそのまま席を立って外へと出て行った。

「自由な人ですね」
「アリスさん、人ではなく精霊ですよ」
「そうでした」

 ユリィの冗談に笑ってしまった。
 そんなつもりはなかったのに。

「優子さん。大丈夫ですから。私は今を悲観していません。だから今を楽しみましょう」

 アリスの言葉には重みがある。
 時間というものを操ることのできた彼女が言う『今』は私の見ている『今』とは違う。
 かつては変えることのできた今だったけどもう無理だ。
 だからこそアリスは今のこの時の大切さを理解している。

「良ければもっとお話しをしたいです。優子さんと」

 そう優しく話しかけてくるアリス。
 それを邪険に、蔑ろにしてはいけない。

「うん。何を話そうかしら」
「そうですね……せっかくですので、その……昔フランソワ様だった時のお話をもっと優子さんから聞きたいです」
「そんな恥ずかしいことを!?」
「はい」

 そんな笑顔で言われたら断れない。
 だから私は話した、なんでこの世界でみんなと知り合えたのか、知り合った人とどんな冒険と体験をしたのか。
 もちろんアリス達とお昼を食べた時の私の感想も。
 そうして時間は過ぎていく。
 湯気を立てていたお茶から次第に湯気が立たなくなるくらいには……。
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