limited short stories 限りなく短い物語

十時

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ある物語

一人

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  かつて、そこにはたくさんの人があった。

  スポーツ、ドラッグ、飲食、食料、美と健康。
  各フロアへと案内する音声。

  各階を回り巡り、なんとはなしに徘徊する。
  全てのものが輝いていて、私を見て、とばかりに自らを主張する。

  僕には全てが要らないものに見えた。

  あ。
  激しく水の弾ける音。雨の音が聞こえた。ぱちぱちぱちと弾ける音に混じり駆け抜けるような足音が聞こえた。

  走る走る。走る走る。はしるはし

  ふと、立ち止まって、息をつく。自分の呼吸音がするたびに、心地よい感覚に襲われ、ほっと笑いそうになるが、その感覚がせつなで失われる。
  その後に残ったのは、徒労感、悲壮感、虚無感、それを押し込めるべく吐いた言葉。

「さあ、帰ろう」
  どこへ?という疑い。
「居場所を探しに」
  小さく小さく強く強く、心に刻み込めるように。雨が体を心を洗い流してくれますように。と祈りながら。


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