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第二話 お仕事とご褒美。
閑話「目線が違う」
しおりを挟む「ヒトの身とは……爪も牙も頼りないですし、体のバネも用をなさないのですね」
タキ家をぐるりと囲む塀を見上げて、キョウコは不満そうな顔をした。
猫の頃にはひょいと、ひとっ飛びだったそうな。
他にも嗅覚が衰えたこと、耳が遠くなったことなどをキョウコは数え上げる。目は鮮やかな世界を捉えるようになった代わりに、動くものをさほど追えなくなったとか。
「こうして述べると、歳を取った気分でございます」
「そんな姿で何を仰るのやら……」
ショウスケは、腰ほどまでしか届かない童女の頭をひと撫でする。
「それからこれは猫の時から奇妙に思っていたのですが……。なぜ人間には乳房が二つしかないのでしょう」
思わず手を引っ込めると、あどけない顔が真剣な眼差しで下から覗いている。
真っ平らな胸に手をやって、童女の姿をした猫は興味深げに主人に問う。
「物足りなくはございませんか? 猫のように六つも八つもあった方が、ようございませんか?」
「いや……そんなにあっても手が足りないんじゃ……」
しどろもどろに答えたショウスケだが、キョウコのきょとんとした顔を見て、しまったと口を噤んだ。的外れな回答をしたと思い至ったのだ。
案の定、キョウコは首を傾げている。これはさらなる問い詰めを受けることになると覚悟した。
「手が足りないとは? 子に乳を飲ませるために、どのようにお使いになるのですか?」
「ええと、それは……」
後に判明することだが、この猫娘はそれなりに人々の暮らしを見聞きしてたいていのことは知っている。ショウスケがそのことに気付くのはまだまだ先だ。
慌てふためく様子を楽しげに観察されているなど、微塵も思っていなかった。
◇ ◇ ◇
第三話もよろしくお願いいたします
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