まだ見ぬ幸せ

紅 蓮也

文字の大きさ
20 / 41

第20話 誰もいない(クライシス公爵side)

しおりを挟む
 妻と二人で、王都で、買い物をし、食事をしたりして、一週間ぶりに我が屋敷に戻ってきた。
 買い物や外食は、もっぱら王都に行く。
 クライシス領なら商人を屋敷に呼べばいいだけなのだが、我が領にある服や宝石、美術品は、ろくなのがない。
 それなのに、領民どもは、何とかしてくれと要望ばかり言ってくる。
 要望を聞いてほしければ、センスと技術を磨き、まともなものを作ってからにしろといいたい。
 領民どもへの愚痴は、この辺にしてと。
 屋敷に帰って来たが何か変だ

「カサンドラ、屋敷の様子が変じゃないか。」

「屋敷の明かりがついていないし、使用人どもの出迎えすらないですわね。」

 そうなのだ。妻カサンドラの言うとおり、明かりもついてなければ、使用人も出てこない。
 誰も屋敷にいない雰囲気なのだ。

「帰ったぞ。何故明かりをつけないんだ。」

「あなた、返事もありませんし、使用人どころか、ラルフも出てきません。」
「変ですわよ。」

 カサンドラに言われ、ラルフの部屋に二人で向かった。

「ラルフ、入るぞ。」

 ラルフの部屋に入ったが、真っ暗だったので、明かりをつけるとラルフはいなかった。
 その後、部屋中を探したが、ラルフも使用人も誰も屋敷の中にいなかったのだ。

「ラルフも使用人もどこに行ったのだ。まさか」

 いつも、文句ばかり言ってくる領民どもが、使用人と結託して、跡取りのラルフを拐ったのか。

「ラルフは、拐われたのか」

「あなた、領民どもを問いただしますか。」

「そうだな。だが、今日は疲れているから明日にしよう。」

「そうですわね。」

 そして、明日、領民どもを問いただすことして、私たちは、体を休めることにした。

「あなた、起きてください。領民どもを問いただしに行くのでしょう。」

 私は、昼過ぎにカサンドラに起こされた。
 カサンドラも起きたばかりのようだ。

「では、早速行くか。」

 私たちは、屋敷を出て、領民どものもとへ向かった。
 すると領民どもが集まっていた。

「おい、お前ら、我らが帰って来たら、ラルフがいなかった。お前らが拐ったのだろう。ラルフは、どこにいる。」

「何を言っているのですか。領主様。 何故、私共がラルフ様を拐うのですか。」

「そんなの、自分達が何もできないだけのくせに、ラルフを拐って、我ら公爵家を脅し、金品をせしめるためだろう。」

「そんなことは、してません。」

「そうですよ。ラルフ様なら一週間前に使用人の方々と馬車で、何処かへ出掛けていかれましたよ!」

「何だと!!」

 ラルフが、使用人どもと出掛けただと、そんなことがありえるのか。

「ラルフと使用人は、何処に行ったのだ。隠しだてするとただでは済まさんぞ。はやく言え」

「私共がラルフ様たちが何処に行かれたかなど、存じているわけないではありませんか。」
「出掛け行くのをお見掛けしただけなのですから」

「わかった。我らは行く。ちゃんと働けよ。」

 これ以上、話を聞いても、何もわからないだろうし、領民どもが何か言ってきても面倒なので、屋敷に戻ることにした。

「ラルフは、公表はまだだが、マリー王女殿下との婚約が決まっているのだぞ。」
「ラルフがいなくなったのが、国王陛下の耳に入れば、問題になる。」

「あなた、ソフィア付きだった使用人もまだ雇ってましたから、ソフィアが何か企んで、ラルフを拐ったのではないでしょうか」

「あり得るな。あいつは、レノン王太子殿下と婚約したから、王妃教育のために王城にいるはずだ。」

「問いただしに行きましょう。」

「そうだな。」

 我らは、ソフィアを問いただすために、また王都に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...