まだ見ぬ幸せ

紅 蓮也

文字の大きさ
28 / 41

第28話 聖女の思い(前編)

しおりを挟む
 アルト男爵と聖女と判明したラン嬢が登城されて、謁見の間にて、国王陛下に聖女と認定された。

 アルト男爵は、謁見の間での認定が終わると一人で自領に帰されたらしい。
 聖女は、これから神殿で生活することになるからだ。

 私たちは、国王陛下の執務室に呼ばれた。
 集まったのは、国王陛下、王妃殿下、私の婚約者であるレオン王太子殿下、マリー王女、マリー王女の婚約者で、私の弟のラルフ、宰相の叔父様、騎士団長、神殿長、そして、聖女認定されたラン嬢だ。

「それで、皆を集めたが、聖女ランよ。話したいこと何なのだ。」

「はい。実は、父であるアルト男爵なのですが、何かを企んでいるかもしれません。」

「やはりそうか。」

「流石は、国王陛下、お気づきでしたか。」

「懸念していただけだがな。なぜ何か企んでいると思ったのだ。そして男爵は、既に何か行動に出ているのか。」

「はい。神殿に行き私が聖女とわかるまでは、私と弟のキーンは、屋敷から出ることが許されず、ほぼ毎日、ストレスを発散するために両親から暴力を振るわれてきました。
 聖女と判明して、機嫌取りなのか、二人とも暴力は、振るわれなくなりましたけど……」

「何と!! 親が子を虐待するなど、貴族は近年、子供が生まれにくくなっているというのに……だから大事に育てねばならぬというに、これは許されぬことぞ。」

「国王陛下か。お気持ちは、わかりますが、落ち着いてください。」

 私も暴力は振るわれなかったが冷遇は、されていたしな。ラン嬢の辛さは、少しわかるし、国王陛下の怒りもわかる。皆、気持ちは、国王陛下と同じみたいだけど、叔父様が国王陛下をとめた。

「すまぬ。ついな。聖女ランよ。話を続けてくれ。」

「はい。そして、使者から登城命を聞かされると、手紙をかかれたり、登城までの間に頻繁に出掛けて、人に会っていたようでしたし、私に王太子妃になれると言ってきたりもしたので、何か企んでいるのではないかと感じました。」

「なるほどのう。同派閥だった貴族たちと会っている可能性があるな。ドナルド、ハンス、調査の方頼むぞ。」

「「かしこまりました。国王陛下。」」

「国王陛下。よろしいでしょうか。」

「なんだ。ロック。申してみよ。」

「聖女ランが、神殿で生活することになったので、男爵夫婦が子息のキーンにまた虐待をし始める可能性があるかと。」

「確かにそうだな。保護が必要だな。ドナルド、影に命じて、保護させろ。処罰は、保留だがな。」

「かしこまりました。」

「ありがとうございます。国王陛下。」

「構わぬよ。当然のことだ。」

 そうですね。保護した方がいいですわね。
 しかし、アルト男爵も後継者の子息を虐待とか万が一があったらどうするつもりなのですかね。
 処罰が保留なのは、男爵だけ処罰するより関わっている貴族をまとめて処罰したいからでしょう。

「聖女ランよ。わかっていると思うが、そなたは、王太子妃にはなれぬぞ。」

「はい。わかっております。王家と男爵家では、家格が違い過ぎます。物語にもなっておりますが、過去に王子と聖女が婚姻されたことはありますが、あれは、元々、婚約者だったり、家格の釣り合う上級貴族だったからですので、私は、そのようなことは、望んでおりません。」

 ラン嬢は、しっかりしていますね。
 こういう方とは、仲良くなりたいですわね。

「国王陛下。今、話している事とは、関係ありませんが、よろしいでしょうか。」

「よいぞ。ソフィア。」

「ありがとうございます。私、ラン嬢と仲良くしたいと思っております。まだ当分先の話ですが、家格的に正妃にはなれませんが、しっかりとした考えをお持ちですので、次代の聖女の引き継ぎが済んだらレノン王太子の側妃にするのがいいと思いますわ。」

「ソフィア。いいのか。」

「当然ですわ。レノン。下級貴族では、金銭的に無理だったりもしますが、王族や貴族が側妃をもうけるのは、義務みたいなものですわ。」

 まあ、そう言ったものの、身近だと元父には、側妃はおりませんでしたし、叔父様なんか婚姻すらしておりません、国王陛下も王妃様だけですけどね。

「恐れ多いことですが、ソフィア様からそう言っていただき嬉しく思います。」

「私もラン嬢と仲良くしたいです。」

「マリー王女殿下まで。ありがとうございます。」

 ラン嬢は、恐縮してしまったかしらね。マリーも私が気に入ったのがわかって、自分もということでしょうかね。

「ラン嬢、仲良くしたいので、様はいりません。私のことはソフィアと呼んでくださいね。」

「私もマリーと呼んでください。」

「無理です。ああ……申し訳ございません。」

 ラン嬢は、驚いて、砕けた言葉使いになってしまったようで、それに気づき、謝られました。

「私が言うのも変ですが、公式な場では、ダメですが、こういう場ならそのくらい砕けた感じでもよろしいかと思いますわ。親しい感じがして、そうですよね。国王陛下。」

「そうだな。構わね。ソフィアも国王陛下ではなく、お義父様とか呼んでよいぞ。」

 国王陛下がノッてきましたわね。

「わかりましたわ。お義父様。」

「おお、呼ぶように言ったのは、私だが、いいな。ソフィア、プライベートの場では、これからはそれで頼む。」

「はい。お義父様。」

「あなた、調子に乗りすぎではないですか。ソフィアちゃん、私のことは……」

「はい。お義母様と呼ばせていただきます。」

 王妃様が、冷めた目で、国王陛下に言われましたね。
 私とラン嬢以外の皆も国王陛下に同じような目で見てますね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...