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081 結婚運びデート (2)

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#081 結婚運びデート (2)

色々と周りがやかましい。

当のリリア様は真っ赤になって、何も言えないでいる。
目がキョロキョロして居るが、降りようとはしない。

そのまま、貴族街を抜け、商人街に入る。
そこでも周りがうるさかったが、抱えたまま、カフェに入る。

「いらっしゃいま、、、」

店員さんが固まっている。
そりゃそうだろう。お姫様抱っこで来店するカップルなんていないだろうから。

「い、いらっしゃいませ、2名様ですね。ご案内いたします」

店員さんもプロだな。すぐに復活した。

席に案内されると、リリア様は降りようとしたが、俺が離さず、『リリア様を抱えたままで』椅子に座った。

「あ、あの、わたし、向かいの席で、、、」

「ダメですよ、今日はこのまま運ぶと言ったじゃないですか。
カフェでもこのままです」

リリア様は流石にここまでとは思っていなかったようで、顔が真っ赤に固まっている。

「さぁ、リリア様、ケーキです。あーん」

「あ、あーん」

俺はカップルお約束のアーン、をする。
リリア様も食べてくれたが、流石にやりすぎたようで、俺の膝から降りると、
「じ、自分で食べれますわ!」
と向かいの席に座った。

「そうですか、残念ですね。リリア様の顔が近くて嬉しかったのですが」

リリア様はもう何も言えなくなっている。
機械的にケーキとお茶を口に運んでおり、会話が弾まない。


カフェを出た後も、俺はリリア様をお姫様抱っこで運び、商人街を練り歩いた。
わざと、抱えたまま商会に入ってみたり、果実水を飲ませてあげたりした。

夕方になって、ルナオススメのカップル用のレストランに向かった。
リリア様はずっと真っ赤だったが、降りようとはしなかった。

レストランでは、流石に膝に乗せて食事というわけにはいかないので、向かいの席に座ったが、店のことを知っていたのか、挙動不審だ。

「リリア様、飲み物はどうされますか?
ワインもジュースも用意してもらってますが?」

「わ、ワインをお願いしますわ!」

「珍しいですね、お酒を飲まれるなんて」

「わ、わたしにも飲みたい時くらいありますわ!」

リリア様はいっぱいいっぱいのようだ。

「それでは、リリア様との出会いに乾杯」

「そ、その、乾杯ですわ」

そのあとは、普通に食事だったのだが、リリア様が結構飲んでいる。大丈夫か心配だが、俺が運ぶので、歩くわけじゃないので大丈夫だろう。

夕食が終わった後も、ワインを飲みながら、雑談をしていたが、時間も遅くなったので会計をして、帰ることにした。
もちろん、帰りもお姫様抱っこだ。

店の外には野次馬がおり、今か今かと待っていたらしい。
貴族街、商人街では噂になっているようで、一目見ようと集まってきたらしい。

その中を、抱っこしたまま、ゆっくりと見せつけるように歩いていく。
商人街を抜けて貴族街に入っても、野次馬はおり、貴族の方々も見にきているようだ。
予定通りだ。
これで、リリア様に婚約者がいることは全ての貴族に周知させられるし、リリア様も満足するはずだ。

屋敷に戻り、リリア様を下ろすと、リリア様は走って、自分の部屋に戻ってしまった。

「ジン様、随分と大胆なことをされましたね。
貴族街のみならず、商人街でも噂になってますよ?」

「それが狙いだからな。婚約者だとはっきり分からせてやればいい」

「それだけで済めばいいんですが。。。」

「何か問題でもあるのか?」

「いえ、ただの使用人である私が口を挟める問題ではありませんので」

何か言いたいことがあるようだが、立場上、言えないらしい。
今日は貴族や商人たちに、俺たちが婚約者だと、はっきりと示したはずだ。
今後、先日のような、勘違いした貴族のアピールなどは無くなるだろう。

俺は満足して、部屋に戻った。


夜になって、ノックされた。
誰だろう?

「お、お邪魔しますわ」

リリア様だった。
驚いたことに、寝間着で来られている。
婚約者とはいえ、問題があるだろう。

「リリア様、その格好は一体?」

「そ、その、なかなか覚悟ができずにお待たせしてしまって、申し訳ありません。
でも、ようやく覚悟ができましたので。。。」

何を言っているのだろうか?
何か覚悟が必要なことでもあっただろうか?
今日のデートに関してのこれからの貴族の反応だろうか?

リリア様は真っ赤な顔をして、「や、優しくしてください」と言ってきた。

これはあれだろうか?
リリア様もテンパっているようで、落ち着きがない。

「リリア様、こんな夜中に、寝間着で男性の部屋に来るもんじゃありませんよ」

「あ、あの?その、今日は結婚運びで街中を歩きまわりましたし、結婚したと言っても良いのではないかと思ったのですが、、、その、今日は契りを結ぶのだと。。。」

なるほど、今日一日の行為を結婚式と捉えればそういうことになるだろう。
なるほど、ルナが言いたかったのは、これか。

さて、どうしようか。
俺は、前から言っているように、学院を卒業するまで待つつもりでいるし、今日契りを結ぶつもりもなかった。
だが、リリア様は完全に勘違いしている。
ここで指摘すれば恥をかかせることになるし、指摘しなければ、契りを結ぶしか無くなる。

俺は悩んだ。こんな状況になるとは思ってなかった。




「リリア様、契りを結ぶのは、結婚してからです。
学院を卒業されてからとの約束ですよ。
私は急かしたりしません。
どうか、部屋におかえりください」

リリア様は、自分の勘違いに気づいたのか、真っ赤になって、走り去っていった。

リリア様には恥をかかせてしまったが、俺にも心の準備が必要なのだ。童貞には最初の一歩が重いんだよ。

翌日から、リリア様が口を聞いてくれなくなった。。。

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