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アルテミス

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101 ただのメアリー

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#101 ただのメアリー

翌日、朝から訓練場にやって来ていた。
殿下の魔法の腕を確認するためだ。

殿下は杖を持って来ていた。
杖?魔法に必要だっけ?

「殿下、その杖は?」

「これは魔力伝達の効率の良い魔法具ですの。
威力が上がりますのよ」

「では、それ無しで実力を見せてください。
杖がないから出来ない、というのでは困りますから」

「わかりましたわ」

殿下は杖を騎士に預けると、右手を前に出して、呪文を唱える。
<火魔法>かな?
手の先から、火の玉が出現して、目標の藁人形に向かった。
結構なスピードだ。
当たった藁人形は火だるまになって、燃え尽きた。
威力も十分だ。

そりゃそうか。殿下の<火魔法>はlv4だ。
他に<水魔法>lv2も持っている。
火と水って相性悪いような気もするけど、魔法だしな。同時に使うんでなければ問題ないのか?
<無魔法>がlv1というのが気にはなるが。<魔力操作>はlv3だ。身体lvは32だ。
魔法よりも<魔力操作>のレベルが低いのは、制御に難があるんだろうか。

「殿下、魔力の収束が悪いように感じましたが」

確認のために話題を振ってみる。

「ええ、威力は出るんですが、集中しないと暴発することがあって。。。
ちゃ、ちゃんと集中すれば大丈夫ですのよ?」

やはり、魔力操作のレベルが足りないと、そういう事もあるようだ。

「それに、杖を使って補っているので問題ないですわ。
魔力伝導率が良いということは、魔力が収束しやすいという事ですし」

なるほど、自分なりに対処は考えていると。

ふむ、王家の紐付きでさえなければ、優良物件だな。




「と言うわけで、殿下をパーティに入れるかどうかを話し合いたいと思います」

パチパチパチ

「ご主人様が決めれば良いのではないか?
私たちは奴隷だし。」

クレアは意見無し。

「そうですね。ご主人様の意見に従います」

マリアも意見無し。

「私は賛成ですわ。メアリー殿下とは長い付き合いですし、一緒だと安心できますもの」

リリア様は賛成と。

俺もどちらかと言うと賛成だ。
<転移>に関しても殿下は口を割らなかったみたいだし。





「陛下、殿下からお聞きになられているとは思いますが、殿下のパーティ参加の件に関してです」

「うむ、聞いておる。実力を確認したそうだな。悪くない反応だったと聞いておるが」

「そうですね、実力的には『杖有りなら』問題ありませんね。
現在、パーティに入れる方向で検討しています。

それに関して、陛下に確認しておきたいことがあります。

まずは殿下の扱いです。一般庶民のただのメアリーとして冒険者登録をしてもらいます。
もちろん、普段の生活も同様です。

もう一つは、監察官の役職は不要です。
殿下には王女を名乗っていただくつもりは一切ありません。
王家に何かあっても、助けに行くつもりもありません。
殿下が助けに行く、と言う場合は、切り捨てます。

以上の条件であれば、パーティに迎えたいと思います」

「うむ、問題ないな。
では、メアリーを頼んだぞ」

え?問題ないの?
王族としての責務を果たせなくなるんじゃ?
どっかに嫁に出して貴族との関係を深くするとか、いろいろあるでしょう?
それに俺は、王家に何かあっても助けないって、明言しましたよね?いいんですか?助けが欲しかったんでしょう?

陛下のことだから、何か折衷案を持ってくると思ってたんだけど。

「ふむ、不思議そうな顔をしておるな。
昨日も言ったが、王族の意義とは血を残すことだ。
そこにお主の血が混じればなお良し。
そうでなくても、メアリーは第3王女だ。誰ともない貴族に嫁に出すよりはお主に任せた方が良いと考えた。責任さえ取ってくれるなら、手を出しても構わんぞ?」

ふむ。最大限の要求をして、有利なところで落ち着ける。高圧外交とも言うが、そういえば、ヤパンニ王国にもそんな感じだったな。どこかの移民で出来た大国のようだ。
つまり、俺の回答はある程度、予定調和ということか。

なんか、負けた気分だな。俺には交渉ごとは向いてないらしい。




「という訳で、殿下がパーティメンバーに加わることになった。
メアリー、挨拶を」

「よ、呼び捨てですの?」

「当たり前だろう。リリア様は貴族の子女として扱うが、お前は一般平民としてパーティに参加するんだ。扱いは平民。俺がパーティリーダーである以上、俺が呼び捨てにするのは当然だ。無論敬語も使わない。嫌ならでてけ」

「も、問題ありませんわ。
紹介に預かった、メアリー・フォン・ザパンニ、いえ、もうただのメアリーですわ。
よろしくお願いしますわ」

「ジン様の奴隷で、大剣使いのクレアだ」

「同じくジン様の奴隷で、メイドのマリアです。よろしくお願いします」

「リリアーナですわ。メアリー殿下、いえ、メアリー、ご一緒できて嬉しいです。よろしくお願いします」

「よし、挨拶は済んだな。次のリリア様の休みの日に簡単な依頼を受けてみようと思う。そのつもりでいてくれ」


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