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235 ダンジョン
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村を出てからの休憩時にフェリス様に質問する。
「フェリス様、絶望のダンジョンという場所をご存知ですか?」
「よくご存じですね。大陸の東にある巨大なダンジョンの事です。浅い階層なら問題ないのですが、少しでも深く探索しようとするとダンジョンが牙を剥きます。
熟練の探索者でも深くはもぐれず、攻略は膠着しているとか。
魔物は当然のこと、罠や迷路など様々な形で探索者を拒みます。
ですが、ダンジョンには希少な薬草や魔物が存在し、それらはマンスムの街に巨大な利益をもたらしています。ああ、マンスムというのはダンジョンのそばにある街の事です」
「探索者というのはなんでしょうか?」
「探索者は傭兵と違って、ダンジョンの探索を主にして生活している者たちのことです。自分たちで組合を作り、素材の売却などを組合に任せることで探索者はダンジョンの探索に集中できるようにやりくりしているようです」
冒険者が傭兵と探索者の専門分野に分かれたようなものか。
「ダンジョンの素材はそれほど貴重なのですか?」
「はい。下級ポーションは薬草から作られますが、中級くらいから必要とされる薬草にはダンジョンにしか生えてないものもあるそうです。
これは裏の組織に関する話ですが、そこで使われる毒はダンジョンの魔物から採取した毒だと言われています。なので、貴族は自衛のためにもその解毒薬を常備するのが常識です。
解毒薬も一定時間で使えなくなりますので、定期的に購入する必要があります。なのでダンジョン産の解毒薬の需要はなくなりません。
他にも美容に良いとされるコケモモや、鉄を鍛えるときに混ぜるとより強固になる金属なども取れるそうです。コケモモを煮立てて作った美容液は肌にいいそうです。効果のほどは分かりませんが、私の使っている化粧品にも使われていると聞いたことがあります」
なるほど。美容液は初めて聞いたが、人間大陸のダンジョンとそれほど変わらないみたいだな。
とすると、誰を連れて行くかだが、リリアとメアリーはお留守番だな。さすがにダンジョンには連れて行けない。王都で待っていてもらうのが良いか。攻略に何日かかるかも分からないのに、わざわざ田舎で待つこともないからな。
ならマリアとクレアの二人を連れて行くか。
うん?誰か忘れてるな。ああ、セルジュ様だ。聖女の仕事ってどこまでなんだろうか?回復魔法が使えるからダンジョンについてくるというなら別に構わないんだけど、聖女としての仕事もあるだろうしな。
セルジュ様って戦えるのか?一度確認しておこう。
王都に戻ってきた。王宮で数日過ごす間に使節団の人と話す機会があった。
「いやぁ、発情期とはすごいものですね。もう若くない私にまで迫ってきましたよ。
若い子にあそこまで言われるとつい応えてしまいそうになりますが、使節団の一員としてそんな事する訳にもいきませんので我慢しましたが。
ジン殿は大丈夫でしたかな?」
「ええ、まあ。フェリス様が気を使ってくださいましたので、なんとか。
それよりも交渉の方はうまく行っているのですか?」
「今のところ平行線ですね。交流に関してはどちらも積極的なんですが、奴隷問題が尾を引いていまして。交流するにせよ、奴隷売買を取締るのが条件だと言っていまして。
もちろん我々は獣人の奴隷狩りを許容するつもりはありませんが、だからと言って全ての獣人を奴隷にしないという法律を作る訳にはいきません。
獣人も借金もすれば犯罪も犯すのですから」
なるほど。人間と同じ待遇なのに、奴隷狩りが実際にあったことから態度を硬化しているという事か。まあ頑張ってくれとしか言いようがないね。
「それではどういった方向でまとめるつもりで?」
「はい、獣人族の大使館をおいて、そこを経由した者だけが奴隷にできるという制度にしようかと考えています。現在本国と調整中です」
「なるほど。ですが、それだと獣人族側が認めなければ誰一人奴隷に出来ないのではないですか?」
「その通りです。ですからその場合は借金なら金銭を、犯罪ならそれ相応の対価を用意することにしようかと。犯罪の対価をどうするかという問題もありますが、基本的には獣人族の法で裁くという事になるかと」
「なるほど。一応道筋はつけてるんですね。大したものだ。このまま頑張ってください」
「ありがとうございます。ジン殿はこれからどうされるつもりですかな?」
「東にあるダンジョンに行ってみようかと思います。そこには地上では取れないような薬草などの素材が取れるとの事ですので。交易する際にも有用な情報となるでしょう」
「それは素晴らしいですな。何かわかったら教えてくだされ」
「もちろんです」
はい、ただ俺が行ってみたかっただけです。何か?
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