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284 プロポーズ

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#284 プロポーズ

「ジン様、そのお話があるのですが」

 うん?クレアからの話って珍しいな。なんだろう、お小遣いかな?

「実は昨日宿で食事をとっていたところ、狐人の男性から交際を申し込まれまして。
 お断りしたんですが、友達からでいいから付き合ってほしいと言われてしまいまして」

「それで?」

「はい、私はジン様の奴隷ですので勝手にお付き合いするわけにはいきませんので、ジン様の意見をお聞きしようかと」

「クレアはその人のことどう思ってるの?」

「それが、私としては昨日初めて話したので、その人のことを知らなくって。獣人の方の文化もよくわかっていませんし。顔は悪くないとは思うんですが、ちょっと軽薄な印象も受けましたし。でも告白されたのなんて初めてですし」

 つまり初めて告白されたから対応がわからないという話か。

「とりあえず一緒に食事にでも行ってみたらどうだ?自分の何が気に入ったのかとか、いつから好きだったのかとか話を聞くといい。獣人だからって付き合ったらいけないなんて事はないんだから」

「でも、奴隷は結婚は出来ません。その状態でお付き合いするのは不誠実では?」

 奴隷って結婚できなかったっけ?主人の許可があれば出来たような気がするけど。

「奴隷だって事は言ったの?」

「はい。でも身請けするからって言われて。獣人の奴隷の扱いは分かりませんが、そこまで言われたら悪い気はしなくて」

 ふむ。身請けまで考えているならそれなりに誠実なのかな?

「ちょっと皆を呼んでくれるかな?俺だけじゃ奴隷の常識がわからん」

「ちょっとお待ちください」


 クレアが他のメンバーを呼んでくると、俺は早速疑問点を確認し出した。

「メアリー、奴隷って解放できるのか?」

「ええ、出来ますわ。主人が奴隷商で解放の手続きを取ればいいだけです。あ、ただ犯罪奴隷は別です。刑期の間は絶対に解放できません。
 クレアさんは戦闘奴隷ですので解放は可能です。
 ですが、クレアさんの借金額はいくらでしたの?それによっては奴隷商に断られる可能性もあります。あまり高額な借金を無効にすると奴隷の価値が変動してしまいますので」

「クレアは、、、大金貨8枚だったかな。それくらいだとどうなる?」

「ジン様の奴隷になってから2年ほどですか?でしたら難しいのではないでしょうか。
 昔奴隷を身請けしてその対価として結婚を迫るという事例がありました。無論正妻ではなく愛人です。法的には妻を名乗れません。愛玩奴隷でしたら性的な奉仕も仕事ですので身請けの必要もないのですが、普通の借金奴隷に性的な奉仕を求めるならその方法しかありません。
 逆に奴隷の方から主人を脅すような形で解放された例もありました。その時は買われた翌年には解放されたと聞いています。
 解放の目安としては5年以上くらいが一般的ではないでしょうか?あ、無論解放する人は少ないです。なので、その少ない中での一般的という事です」

 ふむ。買ってすぐに解放できない仕組みか。

「なら奴隷になった者はどうやって抜け出すんだ?」

「5年以上働いて、主人に気に入られて、借金額以上の価値があると認められる事でしょうか?
 要は主人が借金をチャラにしても良いと思えば良いのです。
 先ほども言いましたが、5年以内だと周囲の目もありますのであまりお勧めはしません」

 大金貨8枚分働いたかどうかか。俺的には解放しても良いんだけど、あとはクレアの評判か。それも結婚するなら別に問題ないな。

「この大陸ではどうなってるか分かるか?」

「働いた年数に応じて自分で買い直すという形式を取るようです。給料を全額返済に充ててるという認識でしょうか。金額がそれほどでもなければ何十年かで買い戻すのも可能です」

 それでも何十年か。歳とってから解放されるのに何か意味があるのか?

「獣人は奴隷と平民の結婚が認められています。ただ、伴侶や子供は借金や奴隷の義務も相続しますので、奴隷本人が死んでしまうと、夫や子供が奴隷落ちします。
 そのため、頑張って主人の元で働き、自分を買い戻そうとするのです。もちろん伴侶が稼いだお金を返済に当てることも可能ですので、買い戻し期間は短くなりますが」

 奴隷と結婚するのは結構リスクが大きいな。

「クレア、相手の男はクレアの借金額が金貨80枚相当だとわかっているのかな?」

「どうでしょうか?私は今の今まで私の購入金額を忘れてましたので、知らないと思います」

「じゃあ聞き方を変えるけど、金貨80枚払えそうだったか?」

「いえ、特にお金持ちって感じもなかったのでそれほどお金は持ってないんじゃないでしょうか?」

 お金もなしに奴隷からの解放を謳うのか。ちょっと奴隷制度を甘くみてないかな?

「クレア、その男、少し話をしたい。お前が話をするときに同席しても良いか?」

「もちろんです。私もどういう話をしたら良いのか分かりませんので、ご一緒していただけるとありがたいです」

「私も同席しますわ」

「わ、私もです」

 リリアはいいんだよ?特に奴隷のシステムに詳しいわけじゃないでしょう?

「クレアは友達です!その将来の話は私も聞く権利があります!」

「あ、あの、私もよろしいでしょうか?」

 ああ、マリアも気になるのね。

「じゃあ、その男と話すときはこの宿で話そうか。食堂の暇な時間なら邪魔も入らないだろうし。クレア、それで調整してくれ」

「分かりました」

 クレアの結婚ねぇ。考えたこともなかったわ。


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