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298 協会への不満

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#298 協会への不満

 ドンドンドン!

「開けてください!急用です!」

「どちら様でしょうか?」

「探索者協会の者です!」

 マリアが応対に出てくれるが、こんな早朝から何事だ?起きちゃったじゃないか。

「ジンはいますか?!」

 2階で寝てるよ。ああ、リリア、起きなくて良いぞ。探索者協会に義理はないからな。

「緊急の用件です!ジンを呼んでください!」

「ご主人様はお休み中です。昼頃に出直してください」

 そうそう。俺を呼び捨てにしてる時点で追い返して良いよ。

「スタンピードなんです!早急に対処しないと王都も無事ではすみません!」

 はあ、騎士団の仕事だろうに。まあ起きちゃったし、話くらいは聞くか。



「それで何のようだ?」

「スタンピードです!」

「だから、それが俺に何の関係があるんだ?」

「探索者協会規則第13条、強制依頼の項を適用します!探索者は全員招集に応じる義務があります!」

 ん?そんな条項あったっけ?なんせ探索者協会に登録するときは魔力なしとかでろくに説明もしてくれなかったからな。
 でもまあ、冒険者ギルドにも同じような項目あるし、まあ、あっても不思議じゃないな。

「それで?」

「ですから、招集に応じてください!」

「なんで?」

「探索者の義務です!」

 顔を真っ赤にして怒鳴り返してくるが、怖くもなんともない。俺はそれほど探索者協会に縛られてないからな。

「ゴタゴタ言うのは、スタンピードと招集の関係について説明してからにしてくれ」

「王都の近くでスタンピードが起きたんです!現在王都に向かって接近中。探索者は全員一丸となって魔物の討伐にあたります!」

 へえ。

「そうか、頑張ってくれ」

「あ、な、た、も来るんです!あなたの戦闘力が高いのは分かってます!一人でも戦力が欲しいんです!招集に応じてください!」

 うーん、それって騎士団の仕事じゃないの?

「もちろん騎士団にも対応してもらいますが、騎士団は動き出すのに時間がかかります。それまでの足止めを探索者で行う必要があります」

「スタンピードを想定してなかったんですか?」

「今まで王都近郊でスタンピードが起こった事はありませんでした。なので発見してからでも騎士団が間に合ったんです」

 それって発生した近くの村や街は無事じゃないよね。

「王都だけは落とされるわけにいかないんです。あなたも参加してください!」

 ちょっと立場をはっきりさせておく必要があるな。

「俺は探索者協会で魔力なしの判定を受けて、協会の評価は等級に現れている。9級だったかな?忘れたけど。
 当然斡旋される仕事もそれなりだ。探索者としての収入なんて微々たるものだ。それでも義務があると?」

「ええ、あなたの戦闘力は使節団の代表として模擬戦をした時に判明しています。ならばこの危急時に応援を頼むのは当然です」

「俺はその恩恵を得てないんだが?戦闘力を評価されてるのに、等級に反映されてないのはなんでだ?魔力なしに今更手伝えとはどう言う了見だ?」

「そ、それは!マンスムの受付が勝手をしただけで!」

「受付は協会の顔だろう?その受付が勝手は判断をしたのをずっと放置したのは誰だ?俺が登録してからすでに結構経ってるぞ?俺がここに住んでることを把握してるなら、俺の等級も把握してるはずだよな?それでも対処しなかったのは何故だ?納得できる理由があるなら言ってみろ!」

 やってきた男は答えられず、真っ赤な顔をして睨み付けてきた。
 全く怖くない。マンスムの受付は確かに酷かったし、全部の受付がそうだとは思わないが、邪険に扱われたのは俺も根に持ってるのだ。魔力なしは制度として仕方ない部分はあったかもしれないけど、受付の塩対応はダメだ。

「説明できないなら帰って上司に相談するんだな。
 ああ、協会追放ならそう言ってくれても良いぞ。大人しく追放されるからな」

 使者は何も言えなくなったのか、捨て台詞を残して帰って行った。

「塩でもまいとけ!」

 マリアに命じると、不思議そうな顔をされた。

「塩ですか?」

 そうだった。この世界に塩をまく習慣がなかった。別にアンデッドに塩が効くわけじゃないからね。むしろ大事な調味料を無駄にするなと怒られる話だ。

「いや良い。俺は2度寝するから、朝飯はいらん」

 気分が悪いので、寝直して気分転換をする事にした。




 ドンドンドン!

「巫女殿はおられますか!?」

 ドンドンドン!

「緊急です!お願いします!」

 はあ、どうやら2度寝もダメらしい。

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