元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ

文字の大きさ
3 / 178
第一部

3.順調に幼馴染ルートへ

しおりを挟む
 前世での中学時代、宮坂葵は学校のマドンナであった。
 整った外見に大和撫子のようなおしとやかな性格をしていた。クラスの中心になる、というタイプではなかったが誰もが彼女を意識していた。
 小学校も共にしていたのだが、その頃は子供らしく遊び回ることに夢中で女というものに興味なんて持っていなかった。ようやく色気づいた頃には俺みたいなファンが多く、そんな彼女に接することができなかったのだ。
 中学を卒業してからの彼女がどうなったかは知らない。面倒だと思って同窓会にも出なかったから知りようがないのは当然だ。逆行転生するとわかっていればちゃんと情報収集したというのに。
 まああれだけ美人だったのだ。きっと良い人を見つけて幸せな家庭でも築いたのだろう。
 だが、今度は俺が宮坂葵と幸せな家庭を築いてみせる! 前世とは違う結末を迎え幸せになるのだ。
 そのために小学校に入学したらすぐにアタックしようと思っていたのだが。

「まさかこんなに早く会えるとは……」
「俊成くんどうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」

 きょとんとする葵ちゃんに首を振る。よくよく見てみれば中学時代のマドンナだった宮坂葵とどことなく似ている。やっぱり本人なのだろう。
 今日も今日とて俺は公園で葵ちゃんと遊んでいた。
 葵ちゃんは運動するよりもおままごとのような女の子らしい遊びをするのが好きのようだ。俺は役者気分でおままごとを堪能していた。

「パパ、はいあーん」
「もぐもぐ。葵の作ったご飯は美味しいなぁ」

 葵ちゃんは泥団子を作って俺の口元に持ってくる。口を動かして食べるフリをする。さすがに三歳児でも泥団子を口の中に入れないという常識はできている。
 おままごとをする時は俺がパパ役。葵ちゃんがママ役で彼女が持っているお人形さんは娘役になっていた。ちなみに配役やストーリーを考えるのは葵ちゃんの役割だ。
 前世での自分が三歳児の頃だったらおままごとなんて、と嫌がっていただろう。なんだかんだで鬼ごっこやドッヂボールのような体を動かす遊びの方が好きだったから。
 でも今の自分なら微笑ましい気持ちで遊んでいられる。子供の笑顔とはなんて心が温まるものなのだろうか。
 それに、葵ちゃんが俺が幼馴染にしたい子ナンバーワンであるあの宮坂葵というのなら気合も入るというものだ。しっかりと好感度を上げて結婚ルートに乗っかるのだ。
 そんな風に考えながら公園通いを続けていた。葵ちゃんの母親からも娘の友達の俊成くん、と認識されるようになった。将来お義母さんと呼ぶ予定の相手だ。こちらの好感度アップもかかせない。
 葵ちゃん相手には仲の良い、それでいて頼りがいのある男として振る舞う。お義母さんには聞き分けのある良い子として接するようにした。
 宮坂親子の俺に対する好感度が上がっていくのがわかる。こうしてみると子供としての生活も悪くないものだと思った。
 そんなある日、唐突に俺の度胸が試される事件が起こった。
 いつものように葵ちゃんがいる公園にやって来た。子供の声で騒がしいのはいつものこと。だからその光景を目にするまで気づかなかったのだ。

「やめて! やめてよ!」

 葵ちゃんが泣いていた。
 四人の男の子が葵ちゃんを取り囲んでいた。男の子の一人はお人形さんを持っている。それは葵ちゃんのものだった。

「ヘイ! パスパース」
「ほーらこっちだー」

 葵ちゃんが泣きながらもお人形さんを取り戻そうとする。だけど男の子はお人形さんを放ると他の男の子へと渡してしまう。お人形さんを追いかけて葵ちゃんが次の男の子へと向かう。それが何回も続いていた。
 明らかにいじめ現場だった。
 葵ちゃん一人に相手は四人。しかもちょっとだけ背が高い。おそらく年上なのだろう。
 今日に限って大人の姿はなかった。俺も葵ちゃんもそれなりに公園という場所に慣れたと判断されたためか親はついて来ていなかった。
 他の子供達もこのいじめに気づいてはいるようだが、遠巻きに見ているだけだった。そりゃそうだ。この時間帯の公園であの四人組は一番の年長者。子供の中で逆らえる者なんていやしない。
 なぜこんなことになってしまったのか。かわいい娘にちょっかいをかけたいお年頃というやつなのか。
 ちょっとした悪戯ならかわいいものだと笑ってやれるが、これは明らかにやり過ぎだ。子供は無邪気な分、やっていいことと悪いことの判断がつきにくいものなのだろう。
 大人がいれば簡単に収められる現場。でも今はいない。
 だから俺が動いた。

「ぎゃっ!?」

 ちょうどお人形さんをパスされた男の子の背後からドロップキックをお見舞いしてやった。その男の子は顔面から地面へダイブして倒れた。そして泣いた。

「何やってんだコラー!」

 我ながらなんてソプラノボイス。三歳児の怒鳴り声なんて怖くないな。

「な、なんだよお前……」

 それでもいじめていた男の子達をひるませるには充分だったようで。葵ちゃんをいじめていた動きが止まった。登場が派手だったから意図せず威嚇になったようだ。
 子供のケンカに頭を突っ込むことくらい怖くなんかない。しかし相手の人数は多く、年齢も一歳か二歳は上だろう。この時期の成長はバカにならんからな。
 相手は全員自分よりも目線が上だ。前世で一応のケンカ経験があるとはいえ、真っ向勝負をすれば勝ち目はないだろう。
 だが、ここで退くわけにはいかない。幼馴染を助けずして幼馴染として胸を張れるはずがないからだ。

「お前等……これ以上俺の葵ちゃんを傷つけようって言うならな」

 静まり返った公園で、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
 ビシッ、といじめっ子達に人差し指を突きつける。

「お前等の親に言いつけてやるからな!」

 子供にとってこれは効果抜群だ。まだまだ親とは絶対的な存在。悪いことをしたらちゃんと怒られてきた子達なら抗いようのない魔法の言葉だ。
 思った通り、いじめっ子達はたじろいだ。

「くっ……おい行くぞ」
「くそっ、憶えてろよ!」

 なんて三下なセリフ。おじさん君達の将来が不安になっちゃうよ。
 いじめっ子達は去って行った。自分でやっておいてなんだけど泣いている子が心配になった。大したケガはしてないとは思うんだけど、さすがにあんな小さい子供を蹴るだなんてちょっと罪悪感。
 それでも葵ちゃんを放っておくよりは全然いい。俺は地面に落ちてしまったお人形さんを拾うと軽くはたいて汚れを落とす。

「葵ちゃん大丈夫? はいこれ」

 涙でぐちゃぐちゃになっている葵ちゃんの目からさらに涙が出てきた。え、あれ?

「うええええん!」

 泣きながら彼女は俺にしがみついてきた。すごく怖かったのだろう。しわになるくらい服を掴まれて、葵ちゃんの怖かったという感情が伝わってくるようだった。
 そんな彼女の頭を優しく撫でる。背中もポンポンと叩いてあげる。泣き止むまでずっとそうしていた。


  ※ ※ ※


「今日は本当にありがとうね。さあ食べて食べて」
「あ、いえ、お構いなく」

 葵ちゃんが泣きやんでから、俺は彼女を家へと送り届けた。あんなことがあってそのまま公園で遊ぶわけにもいかなかったのだ。
 葵ちゃんを家に送り届けると彼女の母親に出迎えられた。そこでまたいじめられたことを思い出しでもしたのか、葵ちゃんが大泣きした。
 彼女はつっかえながらもことのあらましを話した。ちゃんと俺がいじめっ子を撃退したことも話してくれた。
 聞き終わると葵ちゃんのお母さんは俺に感謝を述べた。それだけじゃ気が済まないということでお菓子とジュースを御馳走してくれるという状況となったわけである。

「それにしても俊成くんは本当にしっかりしているわね」
「いえいえそんな」

 娘を助けたというのもあって葵ちゃんのお母さんの俺を見る目がキラキラしている。隣にいる葵ちゃんの目もキラキラしていた。涙はもう溜まっていない。

「俊成くんがいれば葵も安心できるわね」
「うんっ」

 それは俺に葵ちゃんをくれるということですかお義母さん!
 おっと、自制しろよ俺。がっつく男は嫌われる。
 尻のあたりがムズムズしながら宮坂親子の会話に耳を傾ける。お菓子もちゃんと食べておく。子供がこういうのを残すのは却って失礼にあたるだろうからね。

「それにしても公園も危ないのね。そうだわ。お人形さん遊びをするんだったらお家ですればいいのよ」

 名案だと言わんばかりに葵ちゃんのお母さんが手を叩いた。
 それってつまり……この家に来ていいってことなのか?

「あの、お家にお邪魔してもいいってことですか?」
「もちろんよ。俊成くんなら歓迎だわ」

 俺への信頼か。宮坂家へ上がらせてもらえるようになった!
 やった! やったぞ! これはもう幼馴染ルートに入ったと言っても過言じゃないんじゃないだろうか! 親公認ってことだろ。
 興奮を顔に出さないようにして、俺は「じゃあまた遊びに来ます」と紳士的に言った。
 幼馴染とは親からも認められてこそだからね。この時点でかなりリードしたと言っていいだろう。
 このまま順調にいけばいずれ葵ちゃんから「将来お嫁さんにしてね」という言葉をいただけるのも近いはず。ぐふふ、未来が明るいぞ。
 結婚という夢に向かってまっしぐら。将来が楽しみになってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

恋人、はじめました。

桜庭かなめ
恋愛
 紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。  明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。  ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。 「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」 「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」  明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。  一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!  ※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)  ※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想などお待ちしています。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...