もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

文字の大きさ
44 / 141
本編

36話目

 現在車の中でリラックスしている俺。目的地はまだかなー?
 堂本から受け取ったアイマスクを装着していると眠気に襲われた。おっさんと楽しく会話する趣味もないので寝ていたんだけどさ……起きてもまだ走行中らしいんだ。俺、変なとこに拉致されてるわけじゃないよね?

「会田様ー、もうすぐ到着しますよ」

 緊張なんてしてませんよオーラを出すのが限界になってきたころ、堂本から待ち望んでいたセリフが聞けた。

「そうか。アイマスクは外してもいいのか?」
「ええ、構いませんよ」

 内心ビビらないよう必死に取り繕って厳かな態度の俺に対し、堂本はどこまでも下手だった。よかった、こんな知らない場所で豹変でもされたらびびるどころじゃ済まないところだった。
 平和な日本でメイドを売買している連中だ。やべぇってのもわかっている。
 でも……、俺にとって堂本という人間は信用できるんじゃないかと、そんな風に感じているのだ。ピンチを助けられた、というのは単純な理由かもしれんがな。
 アイマスクを外す。どれほど時間が経過したのかは寝ていたこともあってわからないが、見知らぬ景色に遠くまで来たのだろうなとは思わせた。
 車が止まる。降りるようにと促され、俺は久々に外の空気を吸った。

「自然豊かな場所だな」

 緑いっぱいの木々が広がる光景に心が和む。テレビやスマホで酷使してきたお目めに優しいぜ。
 で、そんな自然いっぱいなところに一か所だけが不自然に白かった。白く大きな建物が山奥にひっそりとたたずんでいるのである。

「どうぞ、こちらですよ」

 案の定と言うべきか、堂本が案内するのはその白い建物のようだ。なんか怪しい研究所みたいでちょっとやだなぁ。
 中に入ると、なんていうか病院みたいだった。清潔感はあるんだけど、人の少なさが不気味さを出している。ほら、夜の病院って人がいないこともあって不気味だろ? ……夜中に病院に行ったことないけどな。
 右へ左へ、ドアをくぐってくぐって……気づけば地下へと続く階段の前にいた。ゲームで例えるなら最終ダンジョン並みの威圧感があった。決して俺がびびっているというわけではないぞ。

「こちらでございます」
「わ、わかってるよ」

 声が震えていたのは気のせいだろう。すぐ前を歩く堂本の背中を見失わないように神経を尖らせた。
 階段を下りた先にまたドアがあった。堂本がドアを開けて俺も中へと入る。そこでこの怪しげな建物がどういった意図のもと存在するのかを知ることとなった。

「これは……?」

 ドアの先にはまたまた廊下が続いていた。しかし明らかに違っていた。
 左右の壁はガラス張りになっており、そこにはメイド服を着用した少女達がいた。おそらく売買されている「商品」ということなのだろう。

「向こうからはこっちが見えていないのか?」

 ガラス張りになっているから気づいているのかと思ったが、向こう側の少女達からは俺が来たことによる反応が見られない。無視をされているというより、本当に見えていないかのようだ。

「ええ、あくまでこちら側からしか見えませんのでご安心を」
「へぇ……」

 こっちが見えていないと思うとチラ見なんかしなくてもいいだろうと、少女達をじろじろと嘗め回すように見てしまう。俺ってこういう奴だよな。
 カタログで知ってはいたけど、顔が良い娘が多い。カタログで見覚えのある娘もいれば、まったく見覚えのない娘もいた。
 少女達はそれぞれ個室の小部屋にいた。テレビ画面を凝視している娘がいれば、怪しげな機械をつけられた娘もいる。中には一人きりで実技練習に精を出している娘さえいた。これにはガラス越しにでも見つめてしまう。見つめ合っていないから恥ずかしくないもん。

「気に入った娘がいましたらどうぞ。お値段は相談次第ということで」
「い、いやぁ……」

 おっといかん。そのへんの娘を購入するためだけにわざわざ見学しに来たわけではないのだ。
 それにしても、と。もう一度部屋に押し込められているメイド達に目を向ける。
 こんなところに彩音と琴音も過ごしていたのか……。眺めているだけでも頭がおかしくなりそうだ。だってこれ、人間扱いすらされてないんだもんな。
 彼女達だって好きでこんなところにいるわけじゃないはずだ。何かしらの理由があって仕方なくメイドという名の奴隷になったのだろう。それを俺がとやかく言えることでもないし、ぶっちゃけさほど興味もない。
 ただ、彩音と琴音にはもうちょっとだけ優しくしてやろうかなって、こういうのを見てたらそう思っただけだ。俺ってば良いご主人様だな。

「ん? あの連中は?」

 明らかにメイドではない、ていうか女ですらないむさくるしい男連中が部屋に押し込められていた。まるで雑魚寝でもしているみたいに無造作に床に倒れている。
 そいつらには全員頭に何かの機械が被せられていた。どう例えればいいのか、どっかバーチャル世界にでもダイブできそうな未来的な機械に見えた。

「ああ、あの方々は会田様に危害を加えた連中ですね」
「俺に危害を……」

 そこで思い出す。あの男連中は俺の家に襲撃をしてきた頭の悪い連中だ。
 そんな奴らがこんないかがわしい場所で何をされているんだ。そんな疑問を怖くて口に出せないでいると、気を利かせたのか堂本が教えてくれた。

「あの方々には少しだけ記憶をいじらせてもらっています。会田様も覚えていられてはお困りになることもあるでしょう?」

 俺は無言で首を縦に振った。
 ナチュラルに記憶を改竄している発言しやがった。メイドを売買するだけじゃなく、そんなやってはいけない領域まで俺の耳に入れないでくれよ。……人身売買も充分違法だったわ。俺ってば後戻りはできねえとこまできちゃったなぁ。
 とにかく矛先を俺に向けられてはたまらない。今度から堂本への対応をもうちょっとだけ柔らかくしようと心に決めた。

「そういえば、これに関しては謝っておきませんとな。ご友人の井出様とその恋人の記憶も会田様がメイドを所有していることをなかったことにしたかったのですが、少々やり過ぎましてな。失敗して申し訳ありませんでした」
「ま、まあ気にするな……。失敗は誰にでもあるさ」

 謝罪を感じさせない声色に恐怖を覚える。こいつにとってお客様以外はどんなことになっても気にするということはないのだろう。
 しかしこれで井出から感じていた変な違和感の正体がわかった。あいつが自分の彼女のことを忘れるわけがない。つまり、忘れさせられたということなのだろう。

「もう失敗しないためにも、こちらの方々には協力してもらっているのです。いやぁ、善意で実験のお手伝いをしてくださるなんて、最近の若者は素晴らしいですな」

 部屋に押し込められた男達を眺めながら堂本は上機嫌に笑う。俺は乾いた笑いを返すだけで精いっぱいだった。
 自分も同じ目に遭ってはならないと、堂本の背中を追いかけながら思った。

「会田様、着きましたよ」
「お、おう」

 一つのドアの前で立ち止まる。さっきまでのガラス張りではない。中に誰がいるのかはわからない。
 鍵を開ける音。俺は多少の緊張を胸に、部屋へと入った。
 小さな部屋だった。俺の部屋よりも小さいかもしれない。
 白で覆われた部屋の隅には、これまた白いベッドが置かれていた。一応奥にドアが見えるが、トイレとか浴室があるのだと堂本から説明される。
 そんな小ざっぱりというか、何もない部屋のベッドで、一人のメイドが眠っていた。

「……若くね?」

 そのメイドを見ての一言。別にロリというわけではないが、思わずそう口にしていた。
 だってさ……。聞いていた人物を考えるとそう口にせずにはいられなかったのだ。
 肌にはシミ一つなく、キメ細やかさばかりが目立っている。
 寝息に合わせて上下する胸のボリュームは彩音を超えていた。そんじょそこらではお目にかかれないほどの爆乳だ。もう一度言う。爆乳だ!
 何よりもこの女性は彩音に似ていた。いや、彩音の方が彼女に似ているのだ。

「この人……本当に彩音と琴音の母親なのか? 下手したらお姉さんって言われても信じるぞ」

 そう、無防備に眠っているメイドの名は藤咲ふじさき音々ねねという。まごうことなく彩音と琴音の母親なのである。
 でもさ、これはさすがに母親の外見じゃないって。こんな美人が近所を歩いていたら好きになっちゃって家を特定しちゃいそうなレベル。ってストーカーかよ。

「しかし外見が良くても年齢にこだわる方は多くてですな。むしろカタログに載せているよりも下の年齢を求められるのですよ」

 ロリコンはいてもその逆はあまりいないらしい。寝顔だけで美人だとわかるほどなのに、もったいない。
 だからこそ俺は彼女と出会うチャンスを得られたわけだ。これは幸運と思っておこう。予想を上回る美人さを含めてな。

「こうなってくると父親がどうなってんのか気になってくるな……」
「おや? 知りたいですかな?」

 俺の呟きに、堂本はニヤニヤとした笑みで返答した。俺は口を閉じる。
 彩音や琴音が俺のメイドとなった時点でお察しというものである。世の中には知らなくてもいいことがたくさんあるんだよ。

「さて、会田様。どうなさいますか?」
「そうだな……」

 正直、深く考えていたわけじゃない。
 堂本から彩音と琴音の母親がメイドとして購入することができると聞いた。なんとなく会わなければならない。漠然とそう思った。
 話をしたかったのか、あの姉妹に会わせてやりたかったのか。メイドとして買うかどうかはともかくとして、俺を突き動かす何かがあったのは確かだった。
 実際に目にしてみて、俺の腹は決まった。

「藤咲音々を俺のメイドにする」

 それが俺の結論。三人目のメイドを迎え入れることを決めた。

「……そうですか」

 しかし、堂本の歯切れは悪かった。今までのニヤケ顔を引っ込めて、愁いを帯びたような、そんな似合わない表情をしていた。
 でも、それは見間違いだったみたいに瞬きする間に消えていた。いつものニヤニヤした油ギッシュな顔がそこにあった。

「では早速手続き致しましょう。どうぞこちらへ」

 ほんの一瞬だけ、堂本は藤咲音々に目を向ける。眠っている彼女に何を思ったのだろうか。柄にもなく、堂本のおっさんのことを考えてしまっている自分がいた。


【後書き】
ママの設定はノーマルエンド2とはちょっと違うので新キャラです(きっぱり)
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!