もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

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本編

50話目

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 視界を埋めるように裸の女の子達が並んでいる。肌色にも個性があるんだなぁとしみじみした感想が漏れる。あまりに驚きすぎて声にならなかったけどね。

 男の俺の前に裸体をさらしているというのに、女の子達……ていうか屋敷のメイド達はみんな笑顔を浮かべている。何か良いことがあったのかって聞きたくなるくらいのハッピースマイルである。
 俺に見られて喜んでいるのか? とんだ痴女だな! とでもなじればいいのだろうか。それとも無言でルパンダイブでもするべきか。
 突然の異様な状況に気の利いたリアクションがとれない。アドリブ力がほしいです。

「ご主人様?」

 メイドの一人がそっと俺の手を取る。そこで驚きで硬直していたことに気づく。
 そのまま手を引かれて洗い場の椅子に座らされる。

「それではお背中流しますねー」

 のんびりとした口調が俺の緊張をほぐしてくれる。温かい湯がかけられてほっと表情筋が緩む。

「ご主人様はだいぶご奉仕を受けることに慣れていますね」
「そうか?」
「ええ、だってこんなにも当てているのに、平静を保っているんですもの」

 俺の背中は丁寧に洗われている。当然だが、メイドの女の子のおっぱいで擦られていた。
 ボディソープがたっぷり塗られているのだろう。とても滑りが良いです。
 しかも丹念に洗ってくれるから泡立ちも良さそうだ。平静を保っているとは言われたが、俺の血液はぐつぐつに煮えたぎっているかもしれない。俺の中で眠っている獅子を起こさないように必死なのだ。端的に言えば勃起するのを我慢している。
 何これ? これもまた「サービスです」ということなのか? 完全に不意を突かれてしまった形だ。
 屋敷のメイドを好きにすればいいって話だったけどさ。まさかそっちからくるだなんてさすがのご主人様でも想定すらしていなかったよ。
 視界は相変わらず裸の美少女メイドでいっぱいだ。個人的には彩音以上の美少女はいないけど、普通ならドギマギして声をかけられないような可愛い娘ばかりである。
 これ大丈夫? お手付きした瞬間「はい、お買い上げありがとうございまーす」って言われたりしない? むしろハニートラップの方が納得できる。

「安心してくださいご主人様」

 俺の疑念を読み取ったかのようなタイミングで、一人のメイドが微笑みながら言った。

「ご主人様へのご奉仕はこの島での決まりごとに含まれています。ここで私達に性的関係を要求しようとも、それもご奉仕の範疇ですのでご主人様に一切の責任は発生しませんよ」

 ここは夢の島ですか?
 反射的に口の中が唾液でいっぱいになる。よだれを垂らす前にごくりと飲み込んだ。
 3Pや4Pどころの話ではない。ぱっと見だけでも十人以上……。それだけ大勢の美少女達から好きなようにご奉仕されていいという。男として、ご主人様として、毅然とした態度を見せなければならないのではなかろうか?

「んふ、ご主人様のここ……、とっても元気だわ」

 この中で比較的おっぱいの大きい娘が俺の股の間へと身体を滑り込ませた。明らかに誘惑するような目で俺を見上げてくる。
 そのままおっぱいを寄せて俺のムスコを挟み込む。これまたボディソープのおかげか滑りが良い。柔らかく圧迫され、にゅるんにゅるんとしごいてくれる。

「くおお……」

 我慢していたのを嘲笑われているようだ。いつの間にか勃起していたチンポが喜んでいるみたいにビクつく。おっぱいからそれが伝わったのか、パイズリする娘は笑みに妖艶さが増した。

「ふふふ、気持ちよさそうねご主人様? もっと声を出してもいいのよ。ここにはアタシ達メイドしかいないんだから」
「リカちゃんずるーい! わたしだってもっとご主人様とくっつくんだからね」

 チンポへのパイズリ攻撃にばかり気を取られていた。そう、敵は前ばかりではないのだ。
 俺の背中をおっぱいを押しつけて洗ってくれていた娘がさらなる密着を試みたのだ。身体の部位の中でも感覚が鈍いとされる背中からでも、ぐにゅりと豊かな胸が形を変えたのだろうと伝わってきた。

「あら、ご主人様が喜んでいるわよ。よかったわねメイ」

 よ、喜んでないしっ。と、咄嗟に反論したくなるのは男の性なのか。しかしパイズリでしこしこされてしまえば声は出ない。
 さらに俺の背中を洗ってくれているメイド、メイちゃんというらしいが、彼女が俺の胴に腕を回しながら耳元でささやく。

「嬉しいー……。わたしの身体でご主人様が気持ちよくなってくださるなんて、メイド冥利に尽きます……。もっともーっとメイのおっぱいを感じてくださいね」

 ……白状します。身体が震えるほどゾクゾクしました。
 可愛い娘さんに、こんなやらしい言葉を耳元でささやかれたら誰だって興奮マックスになっちゃうって! これが男の正常な反応ってもんだろうが! 俺は悪くねえ! 悪くねえぞ!!
 二人のメイドに挟まれた俺がご奉仕に満足したと判断したのだろう。周りを囲んでいたメイド達も俺へのご奉仕に加わった。
 ある者は俺の腕をパイズリし、ある者は俺の顔に柔らかいおっぱいを押しつけて、ある者は俺の足の指を可愛らしい口でしゃぶってきた。
 女体に囲まれるどころか、密着されエロいご奉仕まで受けてしまっている。抗うことができなくなるほど、極上の気分となっていく。
 こ、これがハーレム……。メイドハーレムか……。これはもうメイドインヘヴン……、天国へと召されても後悔は残らないだろう。我が生涯に一片の悔いなし!! と、メイド達の中心で叫びたい気分だ。

 視覚、嗅覚、触覚と、あらゆる感覚器がご奉仕によって最高の刺激を与えられていた。素晴らしい……。ああ、このまま俺は……。
 意識が薄れていく……。そこでぼんやり思い浮かんだのは、彩音の顔だった。

「あ、やね……?」

 彩音のくっきりとした大きな目の色が変わる。それは、蔑みの感情を表していた。

「ストォォォォォォォッッッップゥゥゥゥゥゥゥゥーーッ!!」

 突然の俺の叫び、というか奇声に、ご奉仕をしてくれていたメイド達の動きが一斉に止まる。

「どうされましたか? 何かお気に障ることでも?」
「それとも、別のプレイ……、ご奉仕をご希望ですか?」

 俺の返答を待つメイド達。とてもよく出来たメイドだ。よくしつけられている。
 そんなメイドどもに、俺は毅然とした態度で言い放った。

「俺、お風呂は一人でゆっくり入りたい派なので、出て行ってください!」


  ※ ※ ※


「あー……もったいないことしたー……。マジでもったいねえ……こんなこともう二度とないってー……」

 入浴後、部屋のベッドで後悔にのたうち回る俺がいた。
 俺の命令に、せっかくのお風呂でのご奉仕は中断されてしまった。俺に気を遣ってか、メイドの誰一人として風呂から出るまで悲しそうな表情を見せることはなかった。くぅっ、なんていじらしいんだ!
 残された俺は一人で湯船に浸かった。興奮を鎮めるためにと泳いでみたりもした。大浴場と呼べるほど広いだけに一人だと何をやっても悲しかった。メイド娘達のスベスベモチモチのお肌を思い出して悶々としたせいでのぼせちゃいそうになった。

「本当に何言っちゃってるんだろ俺……。あんな風に言ったらもうご奉仕してくれないじゃん……」

 残ったのは後悔ばかり……。あー、ちょっと時間戻せないかなぁ。
 つーか、あれから勃起が収まらない……。これはもう発散しなきゃ眠れそうになかった。

「今からでも遅くないか……? 屋敷のメイドに声をかけまくって、再びメイドハーレムに挑戦してみちゃおうか……!」

 思い立ったら即実行。即断即決が成功のカギだって、どこぞのお偉いさんも言っていただろう。たぶん。
 飛び上がるようにしてベッドから降り立つ。そこでタイミングよくドアをノックする音が聞こえてきた。
 返事して、部屋に入ってきたのは琴音だった。

「祐二様ー。いっしょにお風呂入りませんか?」

 なんとお風呂のお誘いであったか。だが琴音よ……、もう遅い!

「俺、もう先に入ったぞ」
「えー! 誘ってくれればよかったのにー」

 ぷぅと頬を膨らませる琴音。だってお前ら遊びに行ってたんだもん。

「あれ? 祐二様から女の子のにおいがしますね……」

 くんくんと鼻を近づけてくる琴音をかわす。その行動が疑問を確信に至らしめてしまったのだろう。琴音の眉間にしわができる。

「まさか祐二様……。お屋敷のメイドさんとあんなことやこんなことを?」
「ち、違うぞ! 誘惑されたけどちゃんと断ったんだからね! ちょっとだけメイドハーレムを味わったけど、射精してないからセーフだ!!」

 なぜ俺ってばあたふたしちゃってるのか。別にあんなことやこんなことをしちゃってもいいんだけど……いいんだけどー! なんだろうこの葛藤は!?
 琴音はすすすーと滑るようにして俺に接近した。気づいた時には胸をとんと押され、背中からベッドへと倒れ込んでいた。ここまで約二秒。
 背中がベッドに優しく受け止められる。そう感じた時には、すでに琴音に馬乗りにされていた。
 なんという早業。これが新体操部エースの実力か。それともメイドのたしなみとでもいうのか? ……どっちも違う気がする。

「ご主人様」

 あら綺麗なスマイルだこと。
 琴音は段々と可愛らしさだけじゃなく、美しさにも磨きがかかってきたように感じるね。なんというか、お姉様に似てきた気がするよ。
 琴音の指がさらりと俺の顔をなぞる。別にエッチくないのにゾクゾクしました。

「ご主人様が何をしようとも、あたしは何も怒ったりなんかしませんよ。それはお姉ちゃんもお母さんも同じだと思います」
「本当に?」
「本当本当。あたしを信じてくださいってば」

 なんか軽いな。一気に説得力を失った気がするぞ。

「ただ――」

 琴音がスマイルを引っ込める。表情の変化だけで雰囲気が一変する。

「あたし……、祐二様には流されてほしくないです。あたしが、祐二様のメイドになったことが、流されてしまった結果だなんて思いたくないですから」
「琴音……」

 こいつはこいつなりに思うところがあるのだろうか。俺のメイドになって、考えることもあるのだろう。
 もし、洗脳めいたことをされていたとしても、心がすべて都合のいいものへと変わるわけではないのだろう。琴音には、彼女の心がちゃんと残っている。

「あと、流れでお姉ちゃんを甘やかすのも嫌です」
「ん?」
「惚れた弱味ってやつですか? 祐二様がそんなことだからお姉ちゃんが甘えちゃうんですよ。言葉にしなくたって自分を優遇してくれるって思ってるんです。お姉ちゃんはみんなからチヤホヤされるのに慣れちゃっているんですから。ご主人様までそんな風になったら、あたしは嫌なんですよ。もうっ、こんなこと言わせないでくださいっ!」

 ぷりぷり怒ってんなぁ……。
 いつもは笑顔満点な娘だけど、溜まっていることもあるんだろうな。ご主人様として、少しは話を聞いてやっか。

「琴音は彩音が嫌いなのか?」
「大好きに決まってるじゃないですか!!」
「は、はい……」

 こ、琴音がよくわからん……。姉への不満を吐き出したいってわけでもないのか?

「お姉ちゃんも、祐二様も、まったくもうっ、ですよ。もうっ。もうーーっ」

 なんつーか、琴音さん。素が出てませんか?
 エロいことから始まった関係だけど、琴音にも感情があるんだよな。その感情が読めないけどさ。

「お風呂のお誘いだったんですけど、もう入ったのならいらないですよね。あたしお姉ちゃんと入ってきます」

 軽やかに俺から降りると、スタスタと部屋を出て行ってしまった。

「祐二様」

 と、部屋を出る前に琴音が振り返る。

「あとでお姉ちゃんをお部屋に向かわせますので、ちゃんと相手してあげてくださいね。いい加減、あんなお姉ちゃんを見続けていたらこっちも悶々としちゃいますから」

 そう言って静かに退出した。
 悶々ってなんだよ。あれ、つーか彩音がこの部屋に来るの?

「はぁ~……」

 まさか琴音にエロ以外で圧倒されてしまうとはな。
 堂本の話を聞けば琴音もそれなりに洗脳を受けてんだろうけどさ。それでもただの操り人形ってわけじゃないんだよな。付き合いが長くなればなるほど素が出てくるってことなのだろうか。
 いや、それよりも彩音だよ彩音。彼女がここに来るのか。いや、だからなんだって話だけどさ。散々エッチぃことしてきた仲だし。

「……」

 なぜだか落ち着かない。何かあるわけでもないのにキョロキョロしてしまう。
 いやなんかあったわ。堂本から受け取った小さな瓶。中身は錠剤である。
 たぶんいかがわしいもんなんだろうなと思いながら手に取る。「リラックスしますよー」と嘘くさいフレーズが目に入る。まあどっちにしても毒とかじゃないだろう。
 部屋には水差しが常備されていた。男らしく錠剤とともにラッパ飲み。ゲップをするところまで男らしいぜ。ちょいと零れて胸元まで濡らしちゃったけどな。
 ベッドへと倒れ込む。全然リラックスできなかったが、彩音が来るまで身体を休めた。
 ノックの音が耳に入る。ふっと軽く息を吐いて起き上がる。
 できる限りゆっくりとした歩みでドアに近づく。慌てるな。そう心の中で言い聞かせながら、ドアノブを掴んだ。

「えっと……こんばんは」

 琴音の言った通り、訪問者は彩音だった。
 風呂上りだと示すような香りが鼻をくすぐる。ほんのりと朱に染まっている頬に、しっとりとした黒髪がいつも以上に光沢を出していて、やはり藤咲彩音は美少女なのだと思い知らせてくれた。
 そして何より彩音の恰好だ。
 メイド服である。それも夏用のメイド服だ。母親の前だからとあまり着なくなった露出のあるメイド服である。
 メイド服がよく似合う美少女。それが彩音だ。俺の目に狂いはなかった。改めてそう思うね。
 彼女は上目遣いで俺をうかがい、視線を下げる。きゅっと桜色の唇を引き締めたかと思えば、美しい音色を発した。

「ご主人様のお部屋に……、お邪魔させていただいてもよろしいでしょうか?」
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