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26、二人の問題
「俺を勝手に使わないでくれませんか? ……俺は、貴方とアリザス殿の繋ぎ役になんかなりたくありません。それでも、どうしても、俺を利用したいのなら、せめて、貴方とアリザス殿との関係性くらい、話してくれても良いじゃないですか?」
「ただの幼馴染です。アリザスから聞いているでしょう?」
「一切、聞いていませんね。俺には到底、それだけの関係とは思えないのですが?」
刺々しい口調。
仕方なく、エアリアは言葉を重ねた。
「か、彼は……アリザスは、唯一私を公女として敬ってくれた人です。いつも優しくしてくれて……。だから、私はアリザスがこんなことになってしまって、辛いんです」
(駄目だ)
もっと、普通に話すことができると思っていたのに、しどろもどろになっている。
ちらりと背後をうかがうと、やはり、セイルはエアリアを睨んでいた。
「エアリア様。貴方とアリザス殿との間に何があったのですか? アリザス殿も何も言いませんけど、直接会って話せないような私的なことが、お二人の間にはあるのではないですか?」
「それは……」
何と伝えたらいいのだろう。
今まで、たいして人と話してこなかったツケを払っているようだった。
むきになって、話せば話すほど、いろんなことがバレてしまいそうだ。
すっかり、困り果ててしまったエアリアは……。
「すいません」
ぺこりと、頭を下げるしかなかった。
「セイル殿には、大変なご迷惑をおかけしました。全部、私たち二人の問題でしたね。アリザスには手紙を書きます。貴方に謝罪するようにも伝えますので、どうか、許してください」
「………………二人の問題」
「えっ、ええ。私とアリザスとのことなのに、がっつり巻き込んでしまって。セイル殿も、さぞ不愉快なことでしょう」
「はあああっ」
セイルは、これみよがしに頭を抱えこんでいた。
(何で?)
「俺は! ただ二人が直に会えない理由を知りたいだけなんですよ。それなのに、何なんですか!? アリザス殿とのことをよほど俺に話したくないのですね。まさか、貴方がアリザス殿に迫られていたってわけでもないだろうし……」
「…………っ!?」
突然、核心をつかれてしまったエアリアは、そのまま前のめりに倒れそうなった。
「な、な、なっ」
「……エアリア様?」
逃げようとして、立ち上がってみたけど、足に力が入らない。
彼もまた、動揺したのだろう。
遅れて、息を呑むのが分かった。
「図星……ですか」
「………」
――お互い無言で向き合うことになってしまった。
上擦った声で、沈黙を破ったのはセイルだった。
「えーっと、その……。では、エアリア様は、アリザス殿とは恋仲で……?」
「違います」
「じゃあ、アリザス殿が一方的に?」
「……いや、違います。それは、別に、わ、私が……」
「…………色ボケ野郎」
歯切れの悪い否定は、かえってセイルに確信を持たせてしまったようだ。
「ははあ、なるほど。つまり、貴方がお母上とこの地に移った後も、アリザス殿は、お二人を庇護していたのですね。貴方に対する「下心満載」で。確か、アリザス殿は、貴方よりも年下でしたよね。随分と生意気なクソガキですよね?」
「そこまで言わなくても……」
セイルの非難は、度を超えている。
エアリアも、ついむきになってしまった。
「セイル殿は、誤解しています。決して、アリザスが悪いわけではないんです。私がいけない。何から何までアリザスに縋っていたから。身内でもないのに、無条件で手を差し伸べてくれる人なんているはずがないのに。私は……」
「貴方が悪いわけないでしょう!」
(なぜ?)
セイルは、怒っているのだろうか?
エアリアのことなのに、彼は自分のことのように、感情的になっているではないか?
「話を聞く限り、アリザス殿が貴方の立場を敬っているというわけではなさそうですね。……だったら、俺はアリザス殿に、エアリア様は、貴方の愛人に成り下がるくらいなら、死んでやると仰っていると、伝えた方がいいんじゃないかな?」
「何てことを言うんですか!?」
「アリザス殿は、貴方が思っているほど善人ではありません」
「善人?」
(……どういう意味?)
セイルの知ったかぶりが、エアリアの鼻につく。
「私だって、善人じゃありません」
「エアリア様?」
「セイル殿は、私にリュファ君という弱点まで晒してしまっている。もしも、私がどうしても、貴殿に言うことをきかせたくて、その気になれば、あの子を人質にだって取れるんですよ」
「リュファ……ね。まあ、残念ながら、あの小煩い弟は、俺の弱点でも何でもないんです。貴方が望むなら、煮るなり焼くなり好きにしていただいて結構ですよ」
「何ですか、それ? やっぱり、セイル殿とリュファ君は、兄弟ではないんですね?」
「いや。……兄弟ですよ。残念なことにね。この辺りの事情、詳しく知りたいですか?」
「いいえ」
本当は、知りたい。
――が、エアリアは、そんな自分を認めたくなかった。
自分は何物にも興味を示さず、動かされない。
それが今までに、身に着けたエアリアの処世術だったはずだ。
「もう、いいです。アリザスが何を企もうが、貴殿が何者であろうが、私は別にどうだって良いんです。だから、私を巻き込まないで下さい。殺す気がないのなら、そっと出て言ってください。私はただ一人……静かに」
「死ねばいいと……?」
セイルが、こつこつと音を立てて、近づいてきた。
「ただの幼馴染です。アリザスから聞いているでしょう?」
「一切、聞いていませんね。俺には到底、それだけの関係とは思えないのですが?」
刺々しい口調。
仕方なく、エアリアは言葉を重ねた。
「か、彼は……アリザスは、唯一私を公女として敬ってくれた人です。いつも優しくしてくれて……。だから、私はアリザスがこんなことになってしまって、辛いんです」
(駄目だ)
もっと、普通に話すことができると思っていたのに、しどろもどろになっている。
ちらりと背後をうかがうと、やはり、セイルはエアリアを睨んでいた。
「エアリア様。貴方とアリザス殿との間に何があったのですか? アリザス殿も何も言いませんけど、直接会って話せないような私的なことが、お二人の間にはあるのではないですか?」
「それは……」
何と伝えたらいいのだろう。
今まで、たいして人と話してこなかったツケを払っているようだった。
むきになって、話せば話すほど、いろんなことがバレてしまいそうだ。
すっかり、困り果ててしまったエアリアは……。
「すいません」
ぺこりと、頭を下げるしかなかった。
「セイル殿には、大変なご迷惑をおかけしました。全部、私たち二人の問題でしたね。アリザスには手紙を書きます。貴方に謝罪するようにも伝えますので、どうか、許してください」
「………………二人の問題」
「えっ、ええ。私とアリザスとのことなのに、がっつり巻き込んでしまって。セイル殿も、さぞ不愉快なことでしょう」
「はあああっ」
セイルは、これみよがしに頭を抱えこんでいた。
(何で?)
「俺は! ただ二人が直に会えない理由を知りたいだけなんですよ。それなのに、何なんですか!? アリザス殿とのことをよほど俺に話したくないのですね。まさか、貴方がアリザス殿に迫られていたってわけでもないだろうし……」
「…………っ!?」
突然、核心をつかれてしまったエアリアは、そのまま前のめりに倒れそうなった。
「な、な、なっ」
「……エアリア様?」
逃げようとして、立ち上がってみたけど、足に力が入らない。
彼もまた、動揺したのだろう。
遅れて、息を呑むのが分かった。
「図星……ですか」
「………」
――お互い無言で向き合うことになってしまった。
上擦った声で、沈黙を破ったのはセイルだった。
「えーっと、その……。では、エアリア様は、アリザス殿とは恋仲で……?」
「違います」
「じゃあ、アリザス殿が一方的に?」
「……いや、違います。それは、別に、わ、私が……」
「…………色ボケ野郎」
歯切れの悪い否定は、かえってセイルに確信を持たせてしまったようだ。
「ははあ、なるほど。つまり、貴方がお母上とこの地に移った後も、アリザス殿は、お二人を庇護していたのですね。貴方に対する「下心満載」で。確か、アリザス殿は、貴方よりも年下でしたよね。随分と生意気なクソガキですよね?」
「そこまで言わなくても……」
セイルの非難は、度を超えている。
エアリアも、ついむきになってしまった。
「セイル殿は、誤解しています。決して、アリザスが悪いわけではないんです。私がいけない。何から何までアリザスに縋っていたから。身内でもないのに、無条件で手を差し伸べてくれる人なんているはずがないのに。私は……」
「貴方が悪いわけないでしょう!」
(なぜ?)
セイルは、怒っているのだろうか?
エアリアのことなのに、彼は自分のことのように、感情的になっているではないか?
「話を聞く限り、アリザス殿が貴方の立場を敬っているというわけではなさそうですね。……だったら、俺はアリザス殿に、エアリア様は、貴方の愛人に成り下がるくらいなら、死んでやると仰っていると、伝えた方がいいんじゃないかな?」
「何てことを言うんですか!?」
「アリザス殿は、貴方が思っているほど善人ではありません」
「善人?」
(……どういう意味?)
セイルの知ったかぶりが、エアリアの鼻につく。
「私だって、善人じゃありません」
「エアリア様?」
「セイル殿は、私にリュファ君という弱点まで晒してしまっている。もしも、私がどうしても、貴殿に言うことをきかせたくて、その気になれば、あの子を人質にだって取れるんですよ」
「リュファ……ね。まあ、残念ながら、あの小煩い弟は、俺の弱点でも何でもないんです。貴方が望むなら、煮るなり焼くなり好きにしていただいて結構ですよ」
「何ですか、それ? やっぱり、セイル殿とリュファ君は、兄弟ではないんですね?」
「いや。……兄弟ですよ。残念なことにね。この辺りの事情、詳しく知りたいですか?」
「いいえ」
本当は、知りたい。
――が、エアリアは、そんな自分を認めたくなかった。
自分は何物にも興味を示さず、動かされない。
それが今までに、身に着けたエアリアの処世術だったはずだ。
「もう、いいです。アリザスが何を企もうが、貴殿が何者であろうが、私は別にどうだって良いんです。だから、私を巻き込まないで下さい。殺す気がないのなら、そっと出て言ってください。私はただ一人……静かに」
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